イナウ
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イナウ(inaw)はアイヌの祭具のひとつで人間と、カムイや先祖を取り持つものとされた。強いて言えば日本における御幣に相当するものであるが厳密に言うとそれとは違いイナウはあくまでアイヌ独自の信仰の文化から生まれたものである。
イナウは形としてはまったく御幣によく似ていてそれがすべて一本の木の棒から出来ているというのが御幣と違うところである。イナウの用途は捧げものであり、アイヌの人々はカムイにものを祈るときこのイナウを捧げるのである。それはそうするとアイヌの思うところがカムイに伝わるしカムイの力も増すのであると考えられていたからであり、他には新しくカムイを作るときにその衣や刀や槍などの材料とするなどの用途もあった。
イナウは木を材料として作られる。その木をイナウネニとよび、ヤナギは木肌が白いので神の国では白金になりミズキは木肌が黄色く神の国では金になるという想像があったためイナウネニには特にヤナギ(スス)やミズキ(ウトゥカンニ)が多く使われた。イナウ作りはアイヌの男の大切な仕事のひとつとされ、重要な祭礼などを控えた日にはアイヌの男たちはその祭礼の行われる場所に泊りがけでイナウをつくったという。とくにイヨマンテ(クマ送り)とかチセノミ(新築祝い)などの祭礼が行われるときはイナウがたくさん必要になるためそれが顕著で、かなり長い間イナウを作る作業をすることになったという。イナウをつくるにはまず枝わかれや節がなく美しくさらに直径が3cmほどであるヤナギ(スス)やミズキ(ウトゥカンニ)の枝を採ってきて大体70cmほどの長さに切り小刀で皮をはいで木肌をあらわにし乾燥させる。乾燥させるのはこのあと木肌を薄く削るのだがそれをやりやすくするためで、乾燥したらそのように木肌の表面を小刀で木の端の方向に薄く削ることを繰り返しあたかも枝の先から木肌の削ったものがたくさんぶら下がっているような形にするのである(完成)。イナウの種類によって造り方も異なるが大体そのような形でイナウは作れられる。
イナウの種類としては神の衣や刀にするイナウキケや20個ほどのイナウの束でイヨマンテ(クマ送り)やチセノミ(新築祝い)に使用するシロマイナウや非常に簡単に作れる略式のチェホロカケプイナウなどがある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- アイヌ文化振興・研究推進機構 - イナウの作り方
- (イヨマンテのためのイナウの作り方を解説している。写真入で詳細である)