けがき針
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けがき針(けがきばり)は鉄やアルミなど金属の平坦な表面に印をつけるために使う道具である。この道具を使って線を引くことを「けがく」という。
[編集] 概要
けがき針は、金属表面を引っかいて傷を残し、その跡を目印に加工するための道具である。主に鋼で作られており、先端は針と名が付く通り尖っているが、何かを貫き通すことを前提としていないため、先端が鈍角な円錐となっている場合もある。その先端は高度な焼入れが施され、比較的硬くなっている。
後端がヘラ状になっているものもあり、中ほどは滑り止めにざらざらしている製品も多い。
[編集] 使用法
これを使用して金属表面に線を引く場合は定規を使うが、垂直から定規側に少し傾けて宛がい、先端部が定規の角を削らないようにして使うか、厚みのある定規のへこんでいる側を下にして使う。不慣れな者は、少しでもまっすぐな線を引こうと先端部を定規の接地面の角に突き刺す角度(倒す方向が逆)にして使おうとするが、そのような使い方では定規がずれたり先端部が定規の下に滑り込んでしまって、余計に扱い辛くまっすぐ線が引けなくなる。
また、けがく時に何回も往復してけがくと、線がずれ易い。余り力を掛けずに、一回でさっと引くほうが正確に線を引き易い。なおけがく時の進行方向の角度によって深さを調節できる。深く鋭い線が欲しいときは針先の進行方向から見て垂直に、材料が柔らかく浅く太い線が欲しいときは寝かせて引く。ただし鋭い線は針先が材料に食い込んで削るため、多少慣れていないとぶれ易い。
表面を削って跡を残すため、単一の種類からなる金属表面に印をつけることには向くが、鍍金(めっき)や塗装済みの素材表面では傷になって、せっかくの鍍金や塗装の皮膜が持つ防錆・装飾を損なう。このため塗装や鍍金加工前の作業でしか使えないが、多少手で擦ったくらいでは跡が消えないため、鉛筆よりしっかりと、油性ペンより細く作業のための目印を残すことができる。
なお、無塗装の金属表面へのけがき線は確認しにくいため、あらかじめマジック(黒、青が良い)などで色をつけ、その上をけがく事によってけがき線が確認しやすくなる。
作業後は表面を塗装や鍍金でけがいた跡ごと塗りつぶすか、表面を研磨材などで磨いたり紙やすりなどで削ったり(あるいは叩いて伸ばしたり)して跡を消す。亜鉛めっき鉄板やブリキ・トタンの場合はけがき跡の鍍金が薄くなり錆び易くなるため、大抵はその上から塗料を塗って防錆とする。