VAX
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DEC VAX | |
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製造者: | ディジタル・イクイップメント・コーポレーション |
バイト幅: | 8ビット |
アドレスバス幅: | 32ビット |
ペリフェラルバス: | Unibus, Q-bus |
アーキテクチャ: | CISC、仮想記憶 |
オペレーティングシステム: | VAX/VMS, Ultrix, BSD/UNIX |
VAX (バックス) は、1976年に PDP-11 の後継機として VMS と言われるオペレーティングシステムと共にディジタル・イクイップメント・コーポレーション (DEC) によって開発された 32ビットコンピュータ。
直交性の高い命令セット(機械語)とページング方式の仮想記憶が特徴である。VAXには、キュー挿入/削除命令や多項式計算命令などといった複雑な処理をする命令があり、豊富なアドレッシングモードとの組み合わせにより、典型的なCISCアーキテクチャと言われている。
後に登場した、DEC Alphaと呼ばれる64ビットRISCアーキテクチャのCPUに道を譲った。 OSのVMSはOpenVMSとして生き残っている。
目次 |
[編集] 名称
"VAX"は本来 Virtual Address eXtension の頭字語である。その名が示すとおり、VAXは16ビットのPDP-11の32ビットへの拡張であり、その巨大なアドレス空間の管理に仮想記憶を使用した初期の商用コンピュータでもあった。初期のVAXプロセッサには「互換モード」が実装されていて、PDP-11の命令のほとんどをエミュレートできた。VAX-11 という呼称は PDP-11ファミリの継承者であることを強調したものである。後のバージョンでは互換モードが縮小され、PDP-11の命令は徐々にエミュレーションソフトウェアで実行されるようになっていった。
VAXという名称は、1970年代に Mick Atkinson が発明した掃除機のブランド名でもある。DECとの間で商標使用に関する法的なやりとりがあった。解決策として非競争協定が結ばれた。つまり、DECは将来に渡って家電製品に進出せず、VAXコーポレーションはコンピュータに進出しないという約束である。
英語圏のユーザーの間では、「VAXコンピュータシステム」の複数形として VAXen という言葉が使用された。
[編集] オペレーティングシステム
VAXの本来のオペレーティングシステムは、DECのVAX/VMS(後に OpenVMS へ改名)である。VAXアーキテクチャとVMSオペレーティングシステムは互いを最大限に生かすため、同時並行的に開発された。これはVAXcluster機能の最初の実装の際も同様である。他のVAX用オペレーティングシステムとしては、BSD(4.3まで)、Ultrix-32、RTOSのVAXELNなどがある。最近では、NetBSDとOpenBSDが様々なVAX機種をサポートし、LinuxのVAXアーキテクチャへの移植も行われている。
[編集] 歴史
最初のVAXは VAX-11/780 であり、1978年にリリースされた。この機種のアーキテクトは Bill Strecker である。その後様々な価格および性能、容量の派生機種が開発された。VAXは1980年代初期には非常に一般的になった。
VAX-11/780の性能はほぼ1MIPSであったため、CPUに関するベンチマークの比較基準としてしばしば使われた。しかし、実のところ実際に1秒間に実行された命令数は約500,000であった。1 VAX MIPS は VAX-11/780 の性能を意味し、あるコンピュータが 27 VAX MIPS の性能という場合、VAX-11/780 の約27倍の性能であることを意味する。DEC周辺では VUP (VAX Unit of Performance) という用語が使われた。というのも MIPS は厳密には異なるアーキテクチャでは比較できないからである。関連用語として cluster VUP が VAXcluster の全体性能を示すのに使われた。VAX-11/780 を性能比較の基準として今も使っている例として、BRL-CADベンチマークがある。これはBRL-CADというソリッドモデリングソフトウェアに含まれる性能解析スイートである。
その後VAXは様々な実装がなされた。最初のVAXはTTLで実装されており、1台以上のラックが1個のCPUの実装に使われた。ECLゲートアレイ/マクロセルアレイチップを複数個使用した実装のCPUは、VAX 8600, VAX 8800, VAX 9000 シリーズで使用された。複数個のMOSFETカスタムチップで実装されたCPUは VAX 8100, VAX 8200 シリーズで使用された。
MicroVAX-I はVAXファミリの転換期のマシンである。その設計時、VAXアーキテクチャ全体を1個のVLSIチップで実装することはまだ不可能だった(後に VAX 8200/8300で実施されたような複数個のVLSIチップによる実装も無理だった)。その代わりに MicroVAX-I ではVAXの命令セットの複雑な部分のほとんどをエミュレーションソフトウェアに移行させ、基本的な命令だけをハードウェアで実装したのである。これによって大量に必要とされたマイクロコードを削減することが可能となった。これを "MicroVAX"アーキテクチャと称した。MicroVAX-Iでは、ALUとレジスタが1個のゲートアレイチップで実装され、それ以外の制御部は従来の論理回路を使用した。
その後の MicroVAX-II の 78032 チップが MicroVAXアーキテクチャを完全VLSI(マイクロプロセッサ)で実装したものである。その後、CVAX、SOC("System On Chip"、ワンチップ版CVAX)、Rigel、Mariah、NVAX とチップは進化していった。VAXマイクロプロセッサは当初低価格なワークステーション向けに進化し、その後ハイエンドの機種にも使用されていった。メインフレームからワークステーションまでをカバーする1つのアーキテクチャは当時の業界ではVAXだけであった。
VAXアーキテクチャはRISC技術に取って代わられた。1989年、DECはMIPSアーキテクチャのプロセッサを使用しUltrixの動作するDECstationをリリースした。1992年、DECは自身のRISCプロセッサ Alpha(当初の名称は Alpha AXP)を導入した。この高性能64ビットRISCアーキテクチャ上では OpenVMS が動作した。
2000年8月、コンパックは2000年末までにVAXシリーズの生産を完全に終了すると発表した[1]。2005年現在、VAXの生産は既に行われていないが、古いシステムは今でも世界中で使われている。
[編集] VAX機種一覧
ほぼ時系列に列挙している。DEC内部で開発中に使用したコードネームをイタリック体で示す。VAXシステムはVLSIプロセッサを使っているか使っていないかで大まかに分けられる。MicroVAX-I はその過渡期の設計である。
[編集] VLSI未使用のVAX
- VAX 11/780 (Star, TTL CPU, 1977年10月[1])
- VAX 11/750 (Comet, 小型版, 性能も低い TTL ゲートアレイベースの実装, 1980年10月)
- VAX 11/751 (堅牢なラックマウント型 11/750)
- VAX 11/730 (Nebula, さらに小型化, さらに性能が低いビットスライス実装, 1982年4月)
- VAX 11/782 (Atlas, 2プロセッサ版 11/780)
- VAX 11/784 (VAXimus, 4プロセッサ版 11/780, 1つの MA780 メモリユニットを共有, 非常に珍しい)
- VAX 11/785 (Superstar, 高速版 11/780, 1984年4月)
- VAX 11/787 (2プロセッサ版 11/785)
- VAX 11/788 (VISQ)
- VAX 11/725 (LCN, 低価格版 11/730)
- VAX 8600 (Venus, 開発中の別名は 11/790, ECL ゲートアレイ CPU, 1984年10月)
- VAX 8650 (Morningstar, 開発中の別名は 11/795, 高速版 8600, VAX 11/78xモデルで使われたSBIバックプレーンを使用した最後の機種, PDP-11互換モードを持つ最後の機種, その後の全 8000 シリーズ機種は VAXBI を使用)
- VAX 8x00 (Gemini, LSIベースの Scorpio が失敗したときの予備として並行開発; 出荷されず)
- VAX 8500 (Flounder, 1プロセッサでかなり低速な 8800)
- VAX 8530 (Skipjack, 1プロセッサでやや低速な 8800)
- VAX 8550 (Skipjack, 1プロセッサ版 8800, 拡張不可)
- VAX 8700 (Nautilus, 1プロセッサ版 Nautilus, 8800にアップグレード可能)
- VAX 8800 (Nautilus, 2プロセッサ ECL マクロセルアレイ-ベースの実装, 1986年1月)
- VAX 8810/8820/8830/8840 (Polarstar, Nautilusの派生シリーズで1~4プロセッサ, コンソールプロセッサをアップデート)
- VAX 8974/8978 (それぞれ4台か8台の VAX 8810 から構成されるクラスター, 1987年1月)
- VAX 9000 (Aridus, 空冷式だが当初水冷式で設計され Aquarius と呼ばれていた, ECL マクロセルアレイ CPU, VAXBI, 1989年10月[2])
- VAX 9000 Model 110
- VAX 9000 Model 210
- VAX 9000 Model 310
- VAX 9000 Model 4x0 (x = プロセッサ数, 1~4)
[編集] 技術転換期のVAX
- MicroVAX/VAXstation I (Seahorse, 1984年10月)
[編集] VLSI使用のVAX
- MicroVAX シリーズ (一部機種は VAXサーバとして販売された)
- MicroVAX II (Mayflower, 1985年5月)
- MicroVAX III (MicroVAX II のCPUを KA650 CVAX CPU で置換したもの)
- MicroVAX 2000 (TeamMate, デスクトップ機, 1987年2月)
- MicroVAX 3100 シリーズ (デスクトップ機, 1987年~)
- MicroVAX 3100 Model 10 (TeamMate II, KA41-A CVAX プロセッサ)
- MicroVAX 3100 Model 10e (TeamMate II, KA41-D CVAX+ プロセッサ)
- MicroVAX 3100 Model 20 (Model 10 の筐体を大きくして拡張性を増したもの)
- MicroVAX 3100 Model 20e (Model 20 の拡張性をさらに高めた)
- MicroVAX 3100 Model 30 (Waverley/S, KA45 SOC CPU)
- MicroVAX 3100 Model 40 (Model 30 の筐体を大きくして拡張性を増したもの)
- MicroVAX 3100 Model 80 (Waverley/M, KA47 Mariah CPU)
- MicroVAX 3100 Model 85 (Waverley/M+, KA55 NVAX CPU)
- MicroVAX 3100 Model 88 (Waverley/M+, KA58 NVAX CPU)
- MicroVAX 3100 Model 90 (Cheetah, KA50 NVAX CPU)
- MicroVAX 3100 Model 95 (Cheetah+, KA51 NVAX CPU)
- MicroVAX 3100 Model 96 (Cheetah++, KA56 NVAX CPU)
- MicroVAX 3100 Model 98 (Cheetah++, KA59 NVAX CPU)
- MicroVAX 3300/3400 (Mayfair, KA640 CPU)
- MicroVAX 3500/3600 (Mayfair-II, KA650 CPU, 1987年9月)
- MicroVAX 3800/3900 (Mayfair-III, KA655 CPU)
- VAXstation シリーズ
- VAXstation II (MicroVAX II のワークステーション版)
- VAXstation II/GPX (Caylith, ハードウェア強化, 高性能カラーグラフィックス, 1985年12月)
- VAXstation 2000 (MicroVAX 2000 のワークステーション版)
- VAXstation 3100 シリーズ
- VAXstation 3100 Model 30 (PVAX, KA42-A CVAX CPU)
- VAXstation 3100 Model 38 (PVAX rev#7, KA42-B CVAX CPU)
- VAXstation 3100 Model 40 (Model 30 の筐体を大きくしたもの)
- VAXstation 3100 Model 48 (Model 38 の筐体を大きくしたもの)
- VAXstation 3100 Model 76 (RigelMAX, KA43-A Rigel CPU)
- VT1300 (X端末; VAXstation 3100 Model 30 のディスクレス版)
- VAXstation 3200/3500 (Mayfair/GPX, KA650 CVAX CPU)
- VAXstation 3520/3540 (Firefox, 2個か4個の KA60 CVAX プロセッサを搭載)
- VAXstation 4000 (TURBOchannelバス)
- VAXstation 4000/VLC 別名 Model 30 (PVAX2/VLC, KA48 SOC ("System On Chip") CPU, 薄いピザボックス型, 標準の72ピンSIMMモジュールを使用可能)
- VAXstation 4000 Model 60 (PMariah, KA46 Mariah CPU)
- VAXstation 4000 Model 90 (Cougar, KA49-A NVAX CPU)
- VAXstation 4000 Model 90A (Cougar+, KA49-A NVAX CPU)
- VAXstation 4000 Model 96 (Cougar++, KA49-C NVAX CPU)
- VAXstation 8000 (Lynx, VAX 8200 ベースのハイエンド3Dワークステーション)
- VAX 4000 シリーズ (MicroVAX とは呼ばれない):
- VAX 4000 Model 50 (VAXbrick, KA600 NVAX プロセッサ, MicroVAX 3x00 や VAX 4000-200 にCPUアップグレード可能)
- VAX 4000 Model 100/100A (Cheetah-Q, KA52 NVAX プロセッサ)
- VAX 4000 Model 105A (Cheetah-Q+, 高速な KA53 NVAX プロセッサ)
- VAX 4000 Model 106A/108 (Cheetah-Q++, 高速な KA54/KA57 NVAX プロセッサ)
- VAX 4000 Model 200 (Spitfire, KA660 SOC プロセッサ)
- VAX 4000 Model 300 (Pele, KA670 Rigel 1.5 μm CMOS プロセッサチップセット[3], 1989年中ごろ)
- VAX 4000 Model 400 (Omega, KA675 NVAX プロセッサ)
- VAX 4000 Model 500/500A (Omega/N, KA680/KA681 NVAX プロセッサ)
- VAX 4000 Model 505A/600/600A (Omega/N+, KA690/KA691 NVAX プロセッサ)
- VAX 4000 Model 700A (Legacy, KA692 NVAX プロセッサ)
- VAX 4000 Model 705A (Legacy+, KA694 NVAX プロセッサ)
- VAX 8200, VAX 8300 (1~2プロセッサ Scorpio, VAXBI バックプレーン, 1986年1月)
- VAX 8250, VAX 8350 (高速版 Scorpio)
- VAX 6000 シリーズ (x = プロセッサ数, 600シリーズでは最大6プロセッサ):
- VAX 6000 Model 2x0 別名 VAX 62x0 シリーズ (Calypso, CVAX チップセット, 1988年4月)
- VAX 6000 Model 3x0 別名 VAX 63x0 シリーズ (Hyperion, CVAX+ 1.5 μm CMOS プロセッサチップセット, 1989年1月)
- VAX 6000 Model 4x0 別名 VAX 64x0 シリーズ (Calypso/XRP, Rigel 1.5 μm CMOS チップセット, 1989年中ごろ)
- VAX 6000 Model 5x0 別名 VAX 65x0 シリーズ (Calypso/XMP, Mariah 1.0 μm CMOS チップセット, 1990年10月)
- VAX 6000 Model 6x0 別名 VAX 66x0 シリーズ (Neptune, NVAX 0.75 μm CMOS チップセット, 1991年11月)
- VAX 7000 シリーズ:
- VAX 7000 Model 6x0 (Laser/Neon, 最大6個の NVAX+ プロセッサ, Alpha AXP 64ビットプロセッサにフィールドアップグレード可能 (DEC 7000 AXP と同等になる), 1992年7月)
- VAX 7000 Model 7x0 (Laser/Krypton, NVAX5 プロセッサ)
- VAX 7000 Model 8x0 (Laser/Krypton+, 高速な NVAX5 プロセッサ)
- VAX 10000 Model 6x0 (Blazer, VAX 7000 Model 6x0 に類似)
- VAXft フォールトトレラント シリーズ:
- VAXft 3000 Model 310 (Cirrus, CVAX+ CPUs, 2プロセッサ, ロックステップ型フォールトトレラントシステム, 1990年2月)
- VAXft Model 110 (低速, 低価格 Cirrus)
- VAXft Model 410/610/612 (Cirrus II, SOC CPUs)
- VAXft Model 810 (Jetstream, NVAX+ CPUs)
- VAX XXXX (BVAX, ハイエンド VAX; 出荷されなかった)
[編集] 関連項目
- VAX/VMS VAX 上で主に動いていた OS
[編集] 外部リンク
以下、いずれも英文
- ^ VAX timeline, ヒューレット・パッカードのウェブサイト
- ^ DIGITAL Computing Timeline
- ^ Trailing edge, 歴史的コンピュータのシミュレーションプロジェクト