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Nゲージ - Wikipedia

Nゲージ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

Nゲージのレイアウトの例
Nゲージのレイアウトの例
Nゲージのレールの幅
Nゲージのレールの幅

Nゲージ(エヌ-)とは線路の幅 (軌道の間隔・軌間)が9mmで縮尺1/148~1/160の鉄道模型規格の総称である。小形模型のうち諸外国ではHOゲージOOゲージ)が主流だが日本ではNゲージがもっとも普及している鉄道模型である。海外、特にアメリカではNスケールとも呼ばれる。

目次

[編集] 概要

Nゲージ名称の由来 
数字の9をあらわすヨーロッパ系言語はそれぞれ英語 (Nine)、ドイツ語 (Neun)、フランス語 (Neuf)で、それぞれNから始まることからNゲージ、Nスケールという呼称がひろまった。日本でも1970年代には一般にも用いられるようになった。
Nゲージの規格・定義 
Nゲージは9mm軌間の鉄道模型システムで、縮尺は各国・地域ごとに異なる。日本では縮尺1/150を標準としているが、新幹線車輛のみは縮尺1/160を採用している。ドイツフランスイタリアなどヨーロッパ大陸の国とアメリカでは縮尺1/160を基準としており、イギリスでは縮尺1/148を標準としている。

[編集] 基本的なしくみ

Nゲージ鉄道模型は鉄道模型一般がそうであるように走る模型であり、動力に電気を用いた電動模型である。Nゲージ模型車輛の多くは直流2線式と呼ばれる仕組みで運転される。2本あるレールの片方を正極もう片方を負極とし、レールと接する車輪を通じてモーターやライトに電流を流す。レール間の電位差を0ボルトから12ボルトまで変化させて列車の速度を変化させる仕組みだ。また、レールのプラス電位とマイナス電位を逆転させると列車の進行方向も切り替わる。右側が正極のときに前進するのが標準である。直流2線式と呼ばれるこのシステムは世界中の多くのメーカーが採用している標準的なもので、日本国内のすべてのメーカーが採用している。したがって、Nゲージであればどのメーカーの車両でも同じNゲージ線路の上で一緒に使うことができる。Nゲージの電源装置はコントローラー (パワーパックやトランス等とも呼ばれている)と言い、家庭用電源(日本では交流100V)から、直流0~12ボルトをつくりだす。コントローラーは模型列車の走行や停止、速度調節、前進と後進の切り替え、ライト制御など様々な機能を持った製品が、入門向けの低価格品から大容量の高級機種にいたるまで種類も豊富に発売されている。

21世紀初頭にはエレクトロニクス技術の応用で新しい制御方式が誕生している。デジタルコマンドコントロール(DCC)と呼ばれる制御方式は海外で普及している新しい制御方式で、国内でも海外とのつながりのあるメーカーなどを中心として紹介や普及活動が行われている。この方式は12ボルト電源を採用しながらも線路上にデジタル信号を送信して車両ごとの運転操作やライトの制御、サウンド制御を行うことができる。また、線路に流れる電圧は12ボルト一定なのでライトの明るさは模型列車の速度の影響を受けない。いままでの直流2線式の車両には小さなデコーダーを設置すればDCC運転を楽しめる。

外国にはNゲージ3線式の電動模型を発売するメーカーが一社あった。

[編集] 特色

まず、小型であるが故に走らせる場合にスペースをとらないのが最大の利点である。日本型のNゲージ車輌の場合、そのほとんどが半径250mmのカーブを難なく通過するため、長編成でなければ90cm×60cm程度のスペースでも充分走行可能であり、狭いスペースでも鉄道模型を愉しむことができる。そのことから、国内ではレイアウトの製作に最適なサイズの鉄道模型と考えられていて、多くのレイアウトが製作され鉄道模型誌に発表されてきた。レイアウト制作のためのガイドブックやプラン集、各種の材料なども揃っていて、日本国内ではNゲージが一番レイアウト製作に取り組みやすい。

次に、他のゲージの鉄道模型に比べ製品の数が豊富かつ安価であることが挙げられる。もっともこれは日本でNゲージが主流だからであり、海外ではむしろHOゲージの方が製品の数が豊富かつ安価で、逆にNゲージ製品の方が高価な場合もある。これには、Nスケールの車両やストラクチャー等を欧米人より容易に組み立てることができる日本人の手先の器用さも大きく影響しているといわれる。

[編集] 製品

日本ではカトー(KATO、関水金属)、トミックス(TOMIXトミーテック2000年まではトミー)が2大Nゲージブランドであり、それぞれ車輌から線路、パワーパック等の制御機器、さらには建物樹木等のシーナリー養親までトータルに製品化している。初心者はこの2社のいずれかの入門セット(車輌と線路、パワーパック等を含んだセット)を購入して入門する例が多い。

他に車両中心でワールド工芸マイクロエース(旧称:有井製作所)、グリーンマックス、モデモ(MODEMO、ハセガワ)、河合商会等がNゲージ製品を発売している。

これらの製品は、百貨店、量販店の模型コーナーや、鉄道模型専門店で購入することができる。

このほかにもスタジオフィールキッチン(kitcheN)など上級者向けの少量生産の製品を作るメーカーが多数存在する。

プラ製キットの組み立て例
プラ製キットの組み立て例
道床付き線路の例。架線柱は別売
道床付き線路の例。架線柱は別売
車輛
Nゲージの製品は、プラスチック成型(主にABS樹脂等)による完成品が主流である。これらはプラモデルとは異なり、塗装が施された上で組み立て済となっているが、機関車などは細かいパーツ(ナンバープレート等)は購入したユーザーが取り付けるようになっている製品も多い。前照灯や尾灯、室内灯が点灯もしくは点灯可能な製品も多く、前照灯の点灯については、3大メーカーの製品では古い製品を除き標準装備となっている。
また、プラモデル同様に自分で接着剤を使って組み立て、塗装するプラ製キットも発売されており、工作派のファンには根強い人気がある。
プラスチック製品のほかに、金属製(主に真鍮)やレジンの完成品及びキットも発売されている。
動力は基本的にはモーターで、金属製のレールから電力を取得して動く。海外の製品には、架線から電力を取得するもの(=架線集電システム)もあるが日本国内では採用例は無い。(トミックスが初期に対応架線柱(樹脂製)を発売していたが、架線集電対応車両の製品化はされなかった)
線路
大きく分けて道床付き線路と道床無し線路に分けられる。両者の違いは、道床無し線路がレール(軌条)とはしご状に作られた枕木部分だけで構成されているのに対し、道床付き線路は枕木の下の道床部分も土台のような形で一体となっている点である。道床なし線路には組線路と呼ばれる一般の線路のほかに長尺で自由に曲げることもできるフレキシブルレール(線路)がある。
Nゲージ初期には道床無し線路しか無かったが、日本においてはトミックスが道床付き線路を発売、これが急速に普及し、KATOなど他社も追随して独自の製品を発売した結果道床付き線路が一般的となった。以後道床無し線路はレイアウトを中心に使用されてきたが、レイアウトにおいても次第に道床つき線路が使用されることが多くなってきている。今や道床無し線路が使われるのは、道床付き線路では不可能な緩やかで自然なカーブをフレキシブルレールで作る場合くらいである。そのため道床無し線路の需要は減少し道床付き線路に比べて取り扱う店舗も少なくなってきている。
発売メーカー:主流の道床付き線路についてはトミックスとカトーの大手二社が製品を展開している。一方の道床無し線路はカトーの「固定式線路」が入手しやすく、海外メーカーながら、イギリスPecoの製品も多くの鉄道模型専門店で取り扱いがある。またレールの専門メーカー「篠原」からも製品が発売されている。このほか、マイクロエースからは小型の集合式レイアウトとしても楽しめる「ジオラマレール」が発売されている。
コントローラー
パワーパック、パワーユニット、トランスとも呼ばれる制御機器で、以前はHO/16番等で製品を発売していたメーカーの物も見られたが、現在ではレールにあわせてカトー、トミックスどちらかのメーカーの製品を使うのが一般的である。
ストラクチャー(鉄道模型のレイアウト・ジオラマなどの制作に使われる建造物の模型)
プラスチック製の完成品がトミックス、カトー、津川洋行から、プラモデル状のキットがグリーンマックスから発売されている。また、外国製品や縮尺がNゲージに近いプラモデルなども使用できる。
アクセサリー
自動車、人形など鉄道車輛・ストラクチャー以外のNゲージサイズの模型製品全般を指し、主にレイアウト・ジオラマの製作に使われる。日本においてはカトー、トミックス、グリーンマックス、津川洋行といったメーカーから、自動車はバス、トラックから自転車まで、人形は鉄道員、一般の通行人から牛、犬など動物まで製品化されているほか、電柱、自動販売機、ドラム缶、ポリバケツなど様々なものが模型化されている。日本以上に製品が豊富な外国メーカーの製品も輸入・販売されている。
シーナリー用品
レイアウトやジオラマ製作に使われる部材のことで、地形植生を表現するために用いられる。カラーパウダー、ライケン、コルクブロックが代表的な製品だがこのほかにも多くの種類が製品化されている。トミックスの製品が以前から市場に広く流通していて、カトーも海外メーカー「ウッドランド・シーニックス」と提携して同社の製品をカトーブランドで発売しているほか、「ノッホ」の製品も取り扱っている。また、津川洋行、河合商会からも製品が発売されている。
縮尺が1/144に近いため、建造物、自動車、フィギア等は、ガンプラやWTM(ワールドタンクミュージアム)、航空機等の情景模型を製作する際に多用され、特にグリーンマックスなどの安価で改造が容易いストラクチャーキットは、他の模型ファンからも重宝されている。

[編集] 楽しみ方

Nゲージ鉄道模型には様々な楽しみ方があるが、大きく分けると次のように分けられる。

運転を楽しむ
鉄道模型を楽しむ上で外せないのが運転する楽しみである。Nゲージにおいては小スペースでも運転が可能なことに加え、簡単に敷設ができ、安定した走行が得られる道床付き線路を使うことにより、テーブルの上や床の上でも運転を楽しむことができる。このようにテーブルや床の上に線路を仮設して楽しむ運転は「お座敷運転」等と呼ばれている。
情景のついたレイアウト上で車輛を走らせればさらなる満足感を味わうことができる。レイアウトはモデラー自身が制作・保有する場合が多いが、模型店のなかにはサービスの一貫として備え付けのレイアウトを来店客に開放している店もあり、数は多くないがレイアウトを有料で時間貸しするレンタルレイアウトもあるので、これらを利用してレイアウト走行をたのしむファンも少なくない。
さらに、最近では先頭車両に超小型のテレビカメラを仕込み、その映像を無線で受信するモニターテレビとコントローラーを組み合わせ、実車さながらの運転感覚を楽しむパターンも出現してきた。トミックスなどでは、それに対応した商品も販売している。
車輛を収集する
Nゲージで製品化された車輛は日本型だけでもかなりの数にのぼる。これをミニカーのように収集する楽しみ方もある。人によって集め方は様々で、自分の好きな地域・国、年代、鉄道会社、模型メーカー、車種、列車、形式などテーマを決めて車輛を集めている。収集やコレクションというと完成品を購入して観賞するというイメージがあるが、鉄道模型の場合、欲しい車輛を改造・自作する場合もあり、テーマにあわせたレイアウトを作りコレクションを走らせる楽しみもある。
車輛工作を楽しむ
鉄道模型も含めた模型趣味の楽しみ方の基本的なものとして模型工作がある。日本の鉄道模型においては模型工作の対象の中心は車輛におかれていた。Nゲージにおいては誕生時、車輛の小ささから車輛工作を不可能視する見方が大勢だったが、モデラーのチャレンジ精神と初期の車種不足下での非製品形式への欲求から徐々に車輛工作を楽しむファンが増加して、Nゲージブームの頃には細密化(ディテールアップ)のためのパーツが発売されたり、鉄道模型雑誌に工作記事が掲載されるなど一般化した。
車輛工作といっても多種多様であるが、模型車輛をより実車に即した形態になるよう手を加える細密化加工、元の車輛から別の形式や仕様を作り出す車輛改造、プラスチック等の素材と部品(パーツ)から車輛をつくりあげるスクラッチビルド(車輛自作)に大別される。
集合式(モジュール式)レイアウトの例。合板の上に風景を作成し、隣のモジュールまでは道床付レールを接続している。
集合式(モジュール式)レイアウトの例。合板の上に風景を作成し、隣のモジュールまでは道床付レールを接続している。
レイアウトを製作する
鉄道模型においてもう一つの模型工作としてレイアウトの製作がある。特にNゲージはレイアウト製作が盛んで、国内ではスペースの確保の問題からこの傾向が顕著であり、模型雑誌で発表される作品もNゲージを採用したものが多い。鉄道模型クラブの中にはメンバー共同で集合式(モジュール式)や分割式のレイアウトを製作しているところもある。個人では実現が難しい長大編成列車の運転可能なレイアウトもこのような方法をとれば実現が可能である。
また、路面電車や短縮(ショーティー)型車輛など小型車輛の製品が増加し小半径のカーブレールも発売されたことから、パイクとも呼ばれる超小型レイアウトの製作も増えている。これは同様のコンセプトの路面モジュールともども小スペース、短時間、小資材で手軽にできるレイアウトである。

このほかにも、メーカーやクラブなどが開催するイベントや運転会を見学したり、製品について出来栄えや使い勝手などの感想を交換するといったような楽しみ方もある。

[編集] 歴史

[編集] 黎明期

第二次世界大戦以前より、イギリスでは2mmスケール(1/152)、9.5mmゲージの鉄道模型を自作するファンがおり、日本でも熱心な工作派ファンが9.5mmゲージや8mmゲージの鉄道模型を自作し、模型工作雑誌や鉄道模型専門誌を通じて紹介されたことが幾度かあった。この当時はHOゲージでさえ超小型とみなされていた時代であり、これらはあくまでも特殊な模型(今で言えばZゲージよりも小さい模型を自作するような感覚か)として存在したに留まる。

戦後、各国共にそれまで主流であった1番ゲージ(45mm軌間)や0番ゲージ(=Oゲージ。32mm軌間)等の大型の鉄道模型から、より小型の16.5mm軌間のHOゲージやOOゲージが主流となり、日本でも、同じ16.5mm軌間を用いた16番ゲージが、急速に普及した。

さらに、HOゲージより小さな模型としてTTゲージ(1/120・12mmゲージ)が登場し、ヨーロッパでは製品が発売され、日本でも1960年代初期には自作するファン(日本型は1/105~110程度の縮尺を用いた)が少ないながらも出現。また海外のTTゲージ製品が輸入され売られていたこともあった。しかし間もなくTTゲージより小さな鉄道模型としてNゲージが製品化され、TTゲージは(東欧の一部諸国を除き)衰退することとなる。

世界で最初のNゲージとされる電動模型システムは、1960年代初頭、イギリスにおいて「ロンスター」ブランドで発売された「Treble-O-Lectric」シリーズ(1/152・9mmゲージ)であるが、西ドイツ(当時)の「アーノルト」が1962年に1/160・9mmゲージを発売したのが、Nゲージの本格的スタートであるとされており、同社はこのゲージのパイオニアとして名を残すこととなる。

この新しいゲージは、軌間である9mmの9(ドイツ語でneun、フランス語でneuf、英語でnine)の頭文字を取り、「Nゲージ」と名付けられた(なお、イギリスでは当初は「OOOゲージ」と称していた。また日本では当初「9mmゲージ」と呼称されており、「Nゲージ」という呼び方が一般的になるのは1970年代に入ってからである)。

海外でこのような超小型鉄道模型(当時の感覚としては)であるNゲージが製品として発売されるようになったことは日本でも『鉄道模型趣味』誌(以下、TMSと略)等で紹介され、熱心な工作派モデラーである池末弘が国鉄C59形蒸気機関車をスクラッチビルドしてTMS誌に発表し、大きな反響を巻き起こしたのもこの頃である。

[編集] 1960年代・日本での量産開始

海外で9mmゲージが登場してから程なくして日本でもこの規格の鉄道模型を製品化しようとするメーカーが現れた。 1963年頃に 玩具メーカートミーTOMY、現タカラトミー)の前身富山は「高級電気玩具 OOO(スリーオー)ゲージ 新幹線 夢の超特急セット」を発売した。新幹線3両編成に線路とパワーパックを加えたセットで、ロンスターの「Treble-O-Lectric」シリーズを参考にした当時としては画期的な電気玩具だったが、実験的なものであってそれ以上の展開は無かった。

1964年8月には音響/通信機メーカーのソニーが鉄道模型専門の子会社マイクロトレーンを設立し、ソニーのエレクトロニクス技術を生かして一般家庭まで流通可能な鉄道模型の量産を計画した。 マイクロトレーン社はソニーマイクロトレーンのブランド名で国鉄ED75形電気機関車国鉄スハ43系客車 (短縮型・ショーティー)、線路とパワーパックを開発し、製品のサンプルが配布された。しかし、当時のソニーの社内事情によりマイクロトレーン社1965年10月末に解散を決議、計画は中止され、金型は廃棄された。井深大関水金属のC50の出来栄えのよさに驚嘆し販売中止を命じたとも、アフターサービスに掛かる経費の問題から中止となったとも言われる。

富山の製品は実際に発売されたと考えられるが、1990年代に雑誌に紹介されて初めて存在が一般に知られた製品であり、当時の販売状況も不明である。 一方のソニー・マイクロトレーンは実際に発売されたものではない。したがってこの時点ではまだ日本国内の9mmゲージは普及はおろか製品を見たことがある人がどの程度いたかという状況であった。

1965年からは「関水金属」(KATOカトー)が国鉄C50形蒸気機関車オハ31形客車、線路を順次発売した。 関水金属は優れた模型製作者としても知られる加藤祐治が創業した鉄道模型メーカーで、前身の加藤金属時代に市販された製品の優秀さ、特に台車の走行性能の高さは国内外によく知られていた。当時国内有力メーカーに鍛造 (ドロップフォージング)製品を納入していた同社は金属加工技術を生かしてあらたにプラスチック射出成型による自社ブランドでの小型鉄道模型の生産を計画、HOゲージ・TTゲージ・9mmゲージで試作品を製作し、『鉄道模型趣味』の主筆山崎喜陽のアドバイスを得て9mmゲージ・1/150での製品化を決定した。C50はこの規格をもとにしたスケールモデルとして発売されている。日本メーカーの9mmゲージ製品が本格的に流通したのは関水金属製品が初めてであり、1965年は日本におけるNゲージの創始として語られることが多い。また、後に参入したメーカーは関水金属の規格に倣って製品を設計したため関水金属の規格が日本におけるNゲージの標準規格となった。

(なお1967年まで関水金属の正式社名は「関水金属彫工舎」であるが広告の表記は1965年当時から「関水金属」である。)

当時日本では、0番ゲージに代わって16番ゲージがようやく鉄道模型の主流となった状況であり、さらに小形の9mmゲージの登場は特異なものとして迎えられた。加藤はC50を「グリコのおまけ (キャラメルのおまけ)じゃないか」 と言われがっかりしたと当時を証言している。一方、アメリカでの評価は高く、C50形も海外向けのほうが格段に多く売れた。そのため関水金属は1968年に出荷されたALCO PA-1と貨車を最初としてアメリカ形Nゲージの製造も開始し、当時の外国メーカーと同様に北米大陸に市場を求めNゲージ事業を継続した。

1960年代から1970年代初頭まで関水金属が日本でほとんど唯一のNゲージメーカーだった。デパート等の売り場では、西ドイツのアーノルト (Arnold )、ミニトリックス (MiniTrix)」、イタリアリマ (Lima)等の海外製品が輸入販売された。関水金属が発売した日本形も限られていたため、日本で最初期にNゲージを購入した世代は海外製品を日本型に見立てたりあるいは無国籍的に楽しんだ。モデラーのなかには改造や自作により製品にない形式を製作する者も現れ、模型雑誌での作品の掲載を通してNゲージの車輛工作も徐々に浸透していった。

1968年に関水金属の加藤祐次は欧州を訪れ当時各社ごとにバラバラであったNゲージカプラー (連結器)の統一を提案した。ニュルンベルクのトリックス本社に各国のNゲージメーカー、バイヤーが集まり協議を行った結果、Nゲージカプラーの標準をアーノルトカプラーに統一することが決定された。アーノルトカプラーは現在においても各メーカーが装着する標準カプラーであり続けている。

[編集] 1970年代-1980年代前半・ Nゲージ新規参入メーカーとNゲージブーム

1974年に玩具メーカーのトミー(現タカラトミー) がトミーナインスケールブランドで一挙に9形式もの二軸貨車を同時発売して日本型車輌の製品化を開始した。トミーは1970年代初期以来アメリカのバックマン (Bachmann)社のNゲージ製品を輸入販売していたことから、バックマン製品と同様に香港のメーカーケーダーに製造を依頼した。線路やストラクチャー(建物)は、バックマン製品をトミーナインスケールパッケージに変更して流用していた。

1975年には、既に西ドイツのミニトリックスのNゲージ製品の輸入発売元であった学習研究社が、ミニトリックスのモーターを使用した0系新幹線を発売、日本型Nゲージに参入する。学習研究社は続いて国鉄583系電車国鉄485系電車といった特急電車、国鉄EF57形電気機関車を発売した。

1970年代半ばには東京・板橋の模型店ホビーショップMAXが国鉄オハ61系客車のプラ製組み立てキットでNゲージに参入。まもなくグリーンマックス (GREEN MAX)と改名し、客車や電車のプラキットや日本型建造物のキットを続々と発売するようになった。

一方、関水金属は新規メーカー参入後も細密な新製品を発売して支持を拡げていった。細密度の向上は他社製品にも影響を与え、日本型Nゲージ全体の品質向上にも寄与している。特に1975年に発売されたキハ82系は薄型動力ユニット、はめ込み式窓ガラス、ライト点灯構造を採用するなど画期的構造を持つ製品である。これらの構造は自社の後続製品にとどまらず、他社製品においても後に採用するところとなり、現在においては日本形Nゲージ車両の標準的な製品構造となっている。需要の拡大に応じ関水金属は1980年に販売会社を分離し株式会社カトーを設立した。名称は関水にかわってカトーが一般に定着した。

1976年トミーはトミーナインスケールに代えてブランド名をTOMIXトミックス)とした。製品についても海外生産依存を改め日本国内での生産を始め、日本形ストラクチャーも積極的に製品化した。特に自社開発による日本初の道床付レールシステムトミックスレールはNゲージ普及にきっかけを与えた。

1978年には、16番ゲージメーカーであるエンドウ (ENDO)がNゲージに参入。国鉄EF58形電気機関車と道床付線路システムを発売する。これらは他のNゲージ製品と異なり、同社の16番ゲージ製品と同じく金属プレスを主体とした構成であった。Nゲージ以前の日本の鉄道模型は大半が金属製品であり、当時の日本の鉄道模型ファンの一部にはプラ製品に対するアレルギーが存在した。そのため、同社製品はそういったファンの支持を受けるかとも思われたが、組立に手作業(はんだ付け)があるため他社のプラ製Nゲージと比較して割高であり、かつ金属プレスではNゲージのスケールでは細密感に限界があったためか、関水金属やトミー製品程の支持は得られなかった。そのため、EF57、DD51、24系客車、キハ30系気動車、9600型蒸気機関車、201系電車といった国鉄型から、次第に近鉄3000系、都営10-000系、京王5000系などといった、関水金属やトミーと競合しない私鉄電車に主力製品をシフトしていく。特に金属製品ならではの、メッキによるステンレス車体の表現はすばらしく、評価が高いものであったが、主流にはなれなかった。

イタリアのメーカー、リマが国鉄485系電車を発売したのもこの頃で、海外のメーカーが自社ブランドで日本型のNゲージを模型化することは、非常に珍しい。

1970年代後半からブルートレインブームとも連動したNゲージブームが社会現象となり、しなのマイクロ、プラモデルメーカーの永大 (EIDAI)がNゲージに相次いで新規参入した。

しなのマイクロはエンドウと同様に金属製品でNゲージ界に参入した。プレスを主体としたエンドウに対し、エッチング技術が得意だった同社は、16番ゲージの生産をほぼ中止してNゲージに移行したが、当初発売したED17、ED15などの旧型電機シリーズは、当時若年層が多かったNゲージユーザーの嗜好とは開きがあったためか、それほど人気とはならなかった。その後、国鉄157系、阪急6300系など新型電車をシリーズ化したものの、どうしてもプラ製品に比べて割高である上、ディテール表現に優れたプラ製品を見慣れたNゲージファンにはやはり物足りなく、1980年倒産してしまう。同社はその末期に、他社同様のプラ製品で勝負しようと考えたと思われ、プラ製による国鉄EF64-1000番台電気機関車、国鉄ED78形電気機関車、国鉄185系電車等の発売を計画していた。これらのプラ製品は同社がプラモデルメーカーの有井製作所の傘下に入り、マイクロエースと改名した後に発売されている。なお、しなのマイクロは倒産直前に自社のNゲージ製品にマイクロクス (Mycrox)というブランド名を付けるなど、Nゲージ部門のさらなる拡充を目指していたようで、プラ製品の計画もその一環であろうが、出展を予定していた鉄道模型ショウ開催直前に同社が倒産してしまったため、計画の全貌が明らかになることは無かった。

永大はエーダイ・ナインのブランド名で、国鉄ED75形電気機関車、国鉄EF65-1000番台電気機関車、国鉄キハ58系気動車国鉄キハ40系気動車、国鉄14系15型客車といった車輌を製品化したのみならず、TOMIX同様のプラ製道床付線路システムや、それと組み合わせる駅などの建造物も発売した。車輌の出来は当時のTOMIXよりも良い部分もあり、関水金属やトミーと並ぶNゲージ大手になるかと期待されたが、1980年に倒産。鉄道模型が原因ではなく、TVゲーム機での赤字が原因と言われている。

永大のNゲージ製品は学習研究社が引き取り、永大倒産時に製品化準備中だった国鉄キハ55系気動車国鉄EF60形電気機関車も含めて「GAKKEN N」として、自社の製品ラインナップに加えることとなる。学研はその後も、サウンドシステムや2列車同時運転が可能な「ICSコントロールシステム」といった製品を発売するが、ファンの間に普及するには至らず、学習研究社自身による車両の新製品が企画されることもなくなってしまう。

1980年代に入り、やはり16番ゲージメーカーである中村精密(後の「ナカセイ」)がホワイトメタルを多用した金属製蒸気機関車でNゲージに参入する。ただし、しなのマイクロの旧型電機シリーズと同様、題材が渋すぎたのか、価格が高かったのか、当時はあまり人気が出なかった。しかしそれらの機関車に牽引させる素材として追加した、スハ32系客車のプラキットは、当時のGMのキットよりも部品精度がよく、ディテールの完成度が高いことなどから熱心なファンには歓迎された。スハ32系については相当な数の種類を製品化したものの、同社が本業(大手音響メーカーの有力な下請けであったと言われている)の不振により業務を縮小したことにより、結局数年で新製品の開発を停止した。同社の客車キットの金型はMODEMO(ハセガワ)に引き継がれ、現在では組立済み完成品として販売されている。

キ620形除雪車をプラスチック製完成品で発売したモア (MORE)や、プラモデルの技術を生かして本格的なNゲージの近鉄30000系プラキットを製品化した「オータキ」も、Nゲージ市場の拡大にあわせて参入したメーカーであるが、ともに一作のみで終わっている。またプラモデルメーカーの「童友社」も、バックマン製のアメリカ型車輛と線路、電池を電源とするコントローラーをセットしたNゲージセットを発売した。家庭用電源を使わないより玩具的な平易なNゲージシステムであったが、注目されること無く終わっている。

また、この頃工作派ファンに焦点を当てたパーツ会社も現れた。ナローゲージでその地位を固めていた乗工社からはD51重装備パーツ、C62-2改造パーツといった重厚な製品から、EF65-500にホワイトメタル製の貫通扉を貼り付けるEF65-1000改造パーツといった珍品まで発売され、また、銀河モデルからは、信号煙管や常磐線用列車無線アンテナ等の工作派マニア期待のパーツが製品化された。

当時の「L特急ブルートレインブーム」とあいまった「Nゲージブーム」の盛り上がりは相当なもので、プラモデルメーカーの中にもNゲージサイズのL特急やブルートレインのプラモデルを発売する会社が、「フジミ」・「バンダイ」・「アオシマ」の様に何社も現れた程である。 また、鉄道模型、とりわけNゲージをテーマとした書籍が子供向けから大人向けまで何冊も一般の出版社から刊行され、新聞にNゲージの通信販売の広告が載るなど鉄道模型界以外の企業も参加した大きなムーブメントとなった。

Nゲージブームによって増大したファンの中には若年層も多く見られ、鉄道模型誌のレイアウトコンテスト等にも10代の応募者がめずらしくは無くなった。小・中学生にもブームは波及し、この時期、友達同士で集まって車輛や線路を持ち寄りNゲージで遊ぶことが日常的に行われていた。

Nゲージに対する注目が増す中でNゲージメーカーの業界団体である「日本Nゲージ鉄道模型工業会」が発足してメーカーの垣根を越えてNゲージの普及と発展が目指された。また、1979年 (昭和54年)にはNゲージファンを対象に東京科学技術館、大阪科学館で日本鉄道模型ショーが開催された。鉄道模型ショーはその後も開催され続ける恒例行事になっている。

このように、ブームにより飛躍的に普及したNゲージであるが、盛り上がりは一時的なものにとどまり、期待された大衆的なホビーとして定着するまでには至らなかった。ブームのピークは1980年から1981年1984年頃には終息を迎えた。

[編集] 1980年代 - 1990年代 Nゲージブーム終焉とNゲージメーカーの動向

1980年代半ばにはNゲージブームと呼ばれた社会現象は終息しNゲージの販売は急速に落ち込んだ。そのためNゲージから撤退するメーカーも現れた。永大製品を統合した学研は1980年代半ばにNゲージから撤退、エンドウ、ナカセイ (←中村精密)も1980年代半ば以降新製品の発売がなく、製品の再生産と市場流通も1990年ごろには途切れ店頭から姿を消していった。

一方ブーム終息後も、2大Nゲージブランドとして定着した関水金属とトミー、プラキットのメーカーとして独自の地位を築いたグリーンマックスが安定した活動を続けていた。

いわば停滞・調整期のこの時代に、プラスチック製品の間隙を縫う形で登場したのが金属キットである。「シバサキ模型」は1984年にKATO製キハ20をキハ10に改造する真鍮エッチング板を発売してメーカーとして名乗りを上げ、それ以降1986年の「ワールド工芸」、1987年の「レイルロード」、そして「タヴァサホビーハウス」、「ペアーハンズ」がこれに続いた。これらのキットのほとんどはエッチング技術を駆使したものであり、小売店が自社製品として自律的に発売したものも少なくなかった。内容的にも当初の側板のみ・車体のみという構成のキットに加え、下回り・動力込みのトータルキットも現れた。ことにワールド工芸は、倒産したしなのマイクロに代わり、細部表現にも留意した旧型電気機関車を続々とリリースして行った。

1990年代に入っても金属キットの分野は引き続き活発で、その発展の礎を築いたシバサキ模型は1993 年の新製品を最後に閉店・廃業したが、「スタジオフィール」など実力派の新規参入や新製品の発売が相次いだ。1995年11月にはNゲージファンのための即売会形式のイベント、第一回JNMAフェスティバルが開催され、プラスチック完成品にはない様々な製品を購入できる場として話題を呼んだ。以後JNMAフェスティバルは毎年開催されている。新たな販売機会の提供を受け、それまでのメーカー・模型店よりも規模の小さなグループや個人も参入し始めた。こうした小メーカーの製品はガレージキットとも呼ばれ生産数も少ないため、即売会などのイベントや特定の販売店、通信販売などでしか手に入らないものも多い。しかし中には「キッチン(kitcheN)」や「銘わぁくす」のように恒常的に販売を続け、JNMA出展者から中堅キットメーカーへと成長を遂げたところもある。

金属キットの浸透は金属工作に慣れ親しんできた他のゲージ/スケールのファンをNゲージに呼び込んだが、完成品で楽しむことに慣れた従来からのファンの反応は複雑で、「欲しい形式のキットが発売されたのはうれしいが、慣れない金属キットを組み立てられるか不安」という声も聞かれた。ニーズに応えて特製完成品を用意するメーカーもあり、中でも「ワールド工芸」は完成品の製造・販売に力を注ぎ、その工芸品と呼びうる出来映えによって金属完成品メーカーとしても認められるようになった。加えて90年代末期からは蒸気機関車のモデルを中心に市販のプラ製品には無いディディールをもつ細密製品として金属完成品を製品化する動きも見られる。新たな参入メーカーにはHO/16番ゲージのメーカーとして著名な天賞堂など、他のスケール/ゲージで実績を積んだメーカーが多い。

しかしプラスチック製品の大量生産を行うNゲージメーカーが三社だけになった訳では無かった。まず特記すべきは「マイクロエース」=「有井製作所」である。同社は1990年代初頭に10系客車を再生産して健在を示していたが、90年代中頃に至りアメリカ型の機関車・貨車を発売、話題となった。これらはアメリカ「ライフライク」の製品のOEMで中国で生産されたものであった。さらに1996年には国鉄D51形蒸気機関車を発売、以後コンスタントに国鉄型蒸気機関車を製品化していった。これらの製品が中国製なのはライフライクの生産方式の影響である。なお、同社の名称であるが1980年初頭の発足時は株式会社マイクロエース、1980年代後半の10系客車再生産以降は発売元として有井製作所の名前が明示され、マイクロエースはブランド名となった。これが長く続いた後、現在は有井製作所が社名変更したため、再びマイクロエースが会社名となっている。

新規メーカーとしては1990年代初めにプラモデル・情景素材メーカーの「河合商会」がトミーが絶版としていた香港製貨車シリーズを自社製品として発売し参入している。

さらに90年代後半にはプラモデルメーカーである「ハセガワ」が「MODEMO」のブランドでHO/16番ゲージに続きNゲージにも参入した。旧型客車や路面電車などの他社とは競合しないジャンルで地味ながらも勢力を広げている(ただし旧型客車はナカセイのキットの金型を使用し、完成品としたもの)。「ウィン」が塗装済みプラキット、レイアウト用品の発売で知られた「津川洋行」が情景用の非動力完成品を発売したのもこの時期である。

20世紀最後の年である2000年にはこれまで鉄道模型、とりわけNゲージではほとんど見られなかったレジンを素材として使った製品がキットや完成品として複数のメーカーから発売された。その特性上少量生産の製品が多かったが、「プラッツ」など一部のメーカーの製品は市場にも流通した。この素材が一過性のものとして終わるのか、定着するのか今後の動向が注目される。

[編集] 現況

[編集] 近年の動向

株式会社有井製作所 (現株式会社マイクロエース)は1996年にD51を発売以来継続して新製品を発売していて、国鉄制式蒸気機関車のほとんどを製品化するにいたっている。2000年代に入ると電車や気動車、客車、貨車などあらゆる車種において怒涛の勢いで新製品を送り出しはじめ、南満洲鉄道あじあ号アニメの『銀河鉄道999』等、今までにない種類の企画も製品化している。マイクロエースが2000年から現時点までの数年間で販売した車両の種類は国産メーカーがいままでの約30年間で発売した車種に匹敵するか既に凌駕している。

チョコエッグなどの食品玩具にはじまるコレクションモデルのブームがNゲージにも波及して、Bトレインショーティーや鉄道コレクションというような従来の鉄道模型とは一線を画する製品が発売されているのも近年の特徴である。 このような製品は他のコレクションモデルと並べられて量販店や時にはコンビニエンスストアでも販売されていて、販売形態においても従来の鉄道模型とは異なる扱われ方をしている。

[編集] 製造拠点と製品形態の変化

マイクロエースの製品はごく一部を除き中国生産のプラスティック量産品であり、製品は特定番号車両で特定時代の仕様にまとめ上げている。結果としてマイクロエースの製品はセット販売が主体となっていて以前の他メーカーのような一輌単位での製品販売は機関車を除いてほとんどない。車種選定は従来プラスティック量産品では採算ラインに乗らないとされた試作型車両、民鉄の車両、北海道や四国、九州などの特定地域の車両に及んでいる。再生産は全体のごく一部しか行われておらず、また再度生産される車両の製品仕様やプロトタイプは変更されてきたため、一回限り生産の実質的な限定品的な性格も強い。

このようなマイクロエースの製品展開は他メーカーにも影響を及ぼしていて、製造拠点の中国移転、さらなる細密化や特製仕様の製品化、セット販売の増加はNゲージ全体の流れとなっている。特に近年では各社とも「限定品」という形でカラーリングのバリエーションの追加、ダイヤ改正によって運転を終了した列車の最終日編成などを定期的に発売している。

カトーは先に米国市場で中国製品と競合状態に入っていたが、日本国内での生産を継続することで対抗し、近年の需要に対応して特定番号、特定年代の再現を盛り込んだ製品を多く発売している。また、その後の日本形Nゲージ製品の技術基礎となったキハ82を2005年の国産Nゲージ発売40周年にあわせて全面的に刷新した。サスペンションフライホイールDCCフレンドリーといった機構は電車、気動車の標準として導入され、カトーは時代の指標となる技術と製品水準を示した。車両以外では中国生産も採用しており、近年においてストラクチャーなどの充実を図っている。

トミックスは1980年代後半に香港製貨車の販売を中止後は日本国内で製品を製造してきたが、現在では再び海外での製品生産を中国で行っている。ハイグレード製品シリーズにおいても、DD51で初めて中国生産製品を導入した。ハイグレード製品の価格は高額であることを当然視され従来製品価格に対し2倍~3倍の価格が通常だったが、DD51は旧製品に比べ50%以内の価格上昇に抑えられた。

中国生産に関しては日本のNゲージ業界のみのことではなく模型・玩具業界全体の流れであり、なおかつ国際的な趨勢であり、欧州メーカーなども中国生産製品を導入している。また、Bトレインショーティー・鉄道コレクションストラクチャーモデルもそのほぼすべてが中国生産である。

一方、プラキットの形態で長年製品を供給してきたグリーンマックスは90年代後半より、より完成品に近い塗装済みキットを製品化していたが、2000年代にはいるとプラスティク製完成品を次々と発売してキットを作らないNゲージャーに対応している。製品のレベルはそれなりに高いが、他社と較べて高価格なのが欠点である。逆に未塗装プラキットの新製品は自社の系列店のみで限定販売される「クロスポイント」ブランドばかりとなり、形態も昔ながらのプラモデルスタイルの板キットよりも車体が一体成型されたものが多くなった。系列店での販売以外に通信販売での入手も可能であるが一般の店頭には原則として並ぶことはない。このようなことから、既存のグリーンマックス製品の再生産品やリトルジャパンなど数社の新製品キットが市場に流通しているとはいえ、毎月新製品が発売される完成品に比べると市場における未塗装キットの比重は低下している。

[編集] 流通と小売

Nゲージブームが去ってから次第に百貨店、玩具店でのNゲージの取り扱いは減少していく一方1990年代後半から、それまで鉄道模型とは縁のなかった家電系量販店と成長著しい玩具系量販店がNゲージの取り扱いを始め、量販店は百貨店、玩具店に代わって模型専門店に足を運ばない層にもNゲージを広める役割をはたしている。Bトレインショーティーや鉄道コレクションのようなコレクションモデルの販売にも力を入れていて、取り扱い商品の種類・数量とも豊富である。当初、量販店は模型専門知識を備えたスタッフをほとんど持たなかったが、他店との差別化や顧客サービスのため専門知識を持った販売員を置く店もある。また一般の模型店の中にも売り場を量販店型に改装するところも出てきている。

Nゲージ販売店の一部では店頭やインターネット上に商品情報を詳しく紹介し、製品の入荷スケジュールを公表し始めている。また、2000年代以降ウェブ上には新製品情報を紹介したり、製品の比較を行うブログ、個人ウェブサイトも出現している。

Nゲージ製品そのものは細密化などにより全体的に価格の上昇が見られる一方、大規模量販店の増加により値引き販売があたりまえとなっている。人気商品の中には瞬く間のうちに市場から姿を消すものもある。

かつてに比べ中古市場が拡大しているのも近年の特徴である。またインターネットが普及し、再生産を行わない製品や高い人気によって品不足となった希少商品はネットオークションでも取引されるようになった。オークションでの価格は市場原理で決定され、従来の中古Nゲージ販売店が販売経路をほぼ独占していた状態より中古品価格の透明性は高まったと同時に、投機的な取引が問題視されることもある。

[編集] 新たな形態の商品群の登場とヒット

2002年にバンダイ(ホビー事業部)から従来のNゲージとはまったく異なる商品が「Bトレインショーティー」の名称で発売された。 この製品は塗装済みキット形態のNゲージサイズのショーティー(短縮型)モデルでコレクションを主眼に置いたディスプレイモデルである。しかしカトーの全面協力によりNゲージとの互換性を持たせ、台車や専用動力装置を取りつけるとNゲージでの走行が可能になる構造となっている。ディテールも本格志向で、妻板や屋根などを選ぶことによって形式を選ぶことができる物もある。また、車両の可愛らしさから、ジオラマと模型好きの女性のファン層が多くなって来ている。

商品には食玩同様ブラインドボックス販売を原則とした(中身を選べる物もある)通常品と鉄道会社各社とタイアップして駅事務室や売店等で販売される限定販売品がある。限定販売品はBトレインショーティーの発売第1号となった江ノ島電鉄の限定品以来数多く企画されているが、販売場所が限られているため人気の商品ともなると発売日に長蛇の列ができることもある。

バンダイでは、ほぼ同時期にキャンディ事業部から食品玩具(食玩)として1/150スケールモデル「スタートレイン」が発売された。ディスプレイ(展示用)モデルとしての出来は良く、ディテールは本格志向で既存のNゲージ車輌と並べても遜色は無いが、先頭車のみの製品化で基本的にNゲージへの転用は考えられていない。Nゲージブームの頃に発売された1/150スケール鉄道車輌プラモデルの再来と捉えることができそうだ。当初は塗装済みキットの形態で発売されたがその後は半完成品、さらに塗装済み完成品と製品形態が変遷している。モデル化された車両には国鉄型の車両も多く熟年・中年層(30-50代)にも人気が高まって来ている。

2005年末にはトミーテックからNゲージサイズのブラインドパッケージ方式による「鉄道コレクション」が発売された。バンダイのBトレインショーティーやスタートレインと同じく基本的にコレクションを主眼に置いたディスプレーモデルであるが、別売りの動力ユニットなどを取り付けることによりNゲージとしても使用できるようになっている。短縮化やデフォルメを行わないスケールモデルを基本としているが動力ユニットとの兼ね合いや類型車との金型の共用のため実車とは異なる部分のある準スケールモデルとなっている場合がある。現在までに製品化された車輛はローカル私鉄小型車輌や1960年代の大手私鉄車両でかなり毛色が違うものとなっている。トミーテック自らが専用の動力装置の製造・販売をしている。

[編集] ストラクチャー・アクセサリーのさらなる充実

ストラクチャーやアクセサリーの分野も2000年代以降製品が目立って増加している。もともと、日本においてNゲージは他のスケールの鉄道模型に比べてストラクチャー等の充実が際立っていた。1980年代には既に必要最低限のストラクチャー類は製品化され、90年代には戦前~1960年代に見られたものまで発売されている。これはトミックスとグリーンマックス、および小規模メーカーながらもレイアウト用品を積極的に発売してきた津川洋行の製品化努力によるところが大きい。しかし1990年代になるとどのメーカーも車両を中心としたためにストラクチャーの製品化のスピードは鈍化していた。

しかし2000年代になると、最有力メーカーでありながらこれまでは鉄道施設以外はこの分野の製品がそれほど多くは無かったカトーが「ジオタウン」のシリーズ名で精力的に新製品を発売してラインナップを急速に拡大している。カトーらしい実感的な製品の出来具合とともに、パネル式の道路などユニークなアイディアやこれまでの製品にはあまり見られなかった種類の建造物を模型化するなど考えられた商品構成は、個々の建造物の製品化にとどまらず、シリーズ全体で町並みの再現が容易にできるように考えられていることが特徴である。2005年からは古い建物も製品化されており今後も新製品の発売が予告されている。

一方食玩ブームの延長上で多数の商品が生まれている。

バンダイではBトレインショーティーの姉妹製品として、公称Nゲージサイズの建物シリーズ「私の生まれた街」 をブラインドパッケージ方式で発売した。 ただし実際に鉄道模型のストラクチャーとして使うと、他社のストラクチャーや車輛との大きさの違いが目立つ。 続いて同様のコンセプト・販売方法で、ハピネット・ロビンからは鉄道ファンでもある映画監督 実相寺昭雄の監修による食玩「昭和情景博物館」を発売した。こちらはNゲージサイズである。 ただし「私の生まれた街」は第四弾、「昭和情景博物館」は第二弾まででその後の製品化は行われていない。実相寺はインタビューで「あまり売れなかった」 とコメントしている。バンダイではほかに「ワーキングビークル」Nゲージサイズの自動車(大型車中心)模型をブラインドパッケージ方式で発売している。

トミックスの製造元トミーテックからは2003年5月にブラインドパッケージ方式の完成品でNゲージサイズのバス模型「バスコレクション」の発売を始めた。 以後乗用車などを中心に模型化する「カーコレクション」、トラックを模型化する「トラックコレクション」・「トレーラーコレクション」も発売され、既存の製品だけでは不足感のあった自動車模型の充実に貢献している。 ストラクチャーの分野でもブラインドパッケージ方式で「街並みコレクション」を2003年に発売。2006年にはオープンパッケージとした「建物コレクション」も登場している。 さら人や樹木などを模型化した「情景コレクション」も発売してアクセサリーの分野にも進出している。 現在では「鉄道コレクション」を含め各シリーズを総合して「ジオラマコレクション」として展開を行っている。

また、プラモデル、ミニカー製造販売のナガノがNゲージサイズのストラクチャーを製品化し、1/144スケールのジオラマ用アクセサリーを発売していたアイコムが鉄道関連のアクセサリーも製品化するなど、鉄道模型には縁のなかったメーカーの進出も見られる。

[編集] 関連項目

ウィクショナリー
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