湧水
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湧水(ゆうすい)とは地下水が地表に自然に出てきたもののことである。湧き水(わきみず)や泉(いずみ)、湧泉(ゆうせん)とも言う。
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[編集] 湧出機構
地下水の水頭(地下水ポテンシャルと大気圧の平衡する高さ)が地表よりも高く、かつ地質条件としてこの地下水が地表に出てくる条件がある場所において、地下水が湧出し、水が湧き出る(泉)。このような地形は、沢の谷頭(こくとう、たにがしら)部、山地と平地(へいち)の境目、台地の崖線沿い、扇状地の末端(扇端部)、などが多い。また、石灰岩の洞窟は地下水による浸食で形成されることから、鍾乳洞も湧水地点となる。
地下水位が低下することで、湧出量が減少したり、涸れたりする。
[編集] 湧出の利用と管理
湧水は、古くから飲料、洗濯、農業などに広く利用され、地域住民の生活や生業に深く結びついた存在であった。
沖縄県のように、河川が少ない島では、地域住民が湧水を特に大切に利用、管理してきた。また、開発途上国にあっても、上水道が未整備な地域、安全な水へのアクセスが制限されている地域が広範に残っているために、湧水は、井戸とならんで、住民にとって大切な生活用水である。
湧水の農業用水としての利用も広い範囲で行われている。農業用水は、近年では、低位にある河川などの真水をポンプを用いて汲み上げて配水、使用する場合が多い。しかし、高位に湧き出る真水は、その量が確保できれば、高低差を利用して、農業用に配水することが容易である。したがって、湧水は、古くから、動力を用いないで済む農業用水として利用されてきた。
このように湧水は、伝統的に地域コミュニティの住民が共有資源、すなわちローカル・コモンズとして利用、管理されていた。しかし、上水道や農業用水路の整備、大規模な工業用水など地下水の汲み上げ利用にともなって、湧水の利用、管理は地域住民の手から離れつつある。住民の参加しなくなった湧水、水源の荒廃が危惧されている。こうした中で、地域住民を湧水の利用者、管理者として評価しようという草の根民活論が注目されている。
各所で湧水の持ち帰りを行っているが、あまり大量の水を持ち帰るのは勧められない。 なぜならば、湧水の大部分は、殺菌などの処理がされていないため、長期貯蔵しているうちに、細菌などが、繁殖し、飲料に向かなくなるためである。
日本全国では宗祇水など、また湧水を利用した給水システムを江戸時代に完成した町(轟水源を利用した轟水道をもつ熊本県宇土市)などもある。
[編集] 名所
- ハケの湧水(東京都)
- 龍泉洞(岩手県下閉伊郡岩泉町)
- 尚仁沢湧水(栃木県塩谷町と矢板市)
- 竹田湧水群
- 竹田の湧水(大分県竹田市)
- 黒部川扇状地湧水群(富山県黒部市生地)
- 忍野八海(山梨県南都留郡忍野村)
- 安曇野わさび田湧水群(長野県安曇野市)
- 柿田川湧水群(静岡県駿東郡清水町)
- 瀞川平の千年水(兵庫県美方郡香美町)
- 稲積水中鍾乳洞(大分県豊後大野市)
- 水前寺成趣園(熊本県熊本市)