再生可能エネルギー
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再生可能エネルギー(さいせいかのうエネルギー、Renewable Energy)とは、自然界に存在するエネルギー流に由来し、かつ自然界の営みによって利用するのと同等以上の速度で再生されるエネルギー源(またはそこから発生するエネルギーそのもの)を指す(再生されなければ、定義から外れる)[1]。 単にREと略されることもある。
資源を枯渇させずに利用可能であるため、枯渇性燃料が持つ有限性への対策、地球温暖化の緩和策、また新たな利点を有するエネルギー源などとして、有効性と必要性が指摘され、近年利用が活発化している[2][3][4][5]。
対義語は枯渇性エネルギーで、これは化石燃料(石油、天然ガス、オイルサンド、メタンハイドレート等)やウラン等の埋蔵資源を利用するもの(原子力発電など)を指す。
目次 |
[編集] 類義語
- 自然エネルギーと言う言葉は、再生可能エネルギーとほぼ同義に用いられている。
- 新エネルギーは、「新エネルギーの利用等の促進に関する特別措置法」(新エネルギー法)にて定められたエネルギー源を指し、現在の公的な定義では再生可能エネルギーの中から10分類が指定されている。ほぼ日本のみで用いられる用語である。
- 再生可能エネルギーのうち大規模水力を除くものを、最近新規に開発されたものという意味で new renewable energy と呼称することがある。
- 代替エネルギー (alternative energy) という用語もある。日本以外では主に再生可能エネルギー、特に new renewable energy を指すが、日本では「石油代替エネルギー」の意味で石炭ガス化・天然ガス・原子力等も含む場合がある(これらは枯渇性エネルギーである)。
[編集] 種類
通常、下記のようなものが範疇に含められる。[1][6][7][8]
- 太陽エネルギー
- 多くの再生可能エネルギーの源で、半永久的で膨大な資源量がある。
- 風力、風力発電
- 風車によって動力を得たり、風力原動機で発電する。風況さえ良ければ利用でき、比較的安価。ただし野鳥などの生態系に影響を与える[9]ため、自然保護区などへの設置は制限される場合が多い。
- 地熱
- 地球そのものが持つ熱を利用する。太陽エネルギーと並ぶ膨大な資源量がある。
- 大気熱
- 大気が持つ熱を利用するもので、近年、定義に加えられつつある[10]。ヒートポンプ式のエアコンや、エコキュートなどが該当する。
- 水力、水力発電
- 水の位置エネルギーを利用して水車を回し、動力や電力を得る。
下記は厳密にはエネルギー源でなく変換手段と言えるが、よく並列して取り扱われる。[11]
[編集] 特徴
再生可能エネルギーの多くに共通する特徴としては、下記のようなものがある。[12][13][14]
[編集] 長所
- 枯渇しない永続的な利用が可能。(再生可能エネルギーの定義)
- 化石燃料を用いるエネルギー源に比べ、同じエネルギー量あたりの温室効果気体の排出量が少ないものが多い。
- エネルギーを需要地近辺で調達できるものが多い。(自給率の向上、燃料等の調達コストの削減、送電・輸送にかかるエネルギー消費量の縮減)
- 枯渇性燃料に比較して、温室効果気体以外の有害物質の排出量をも減らせる
- 利用状況により、下記のような小規模分散型エネルギー源のメリットを得られるものが多い。太陽光・風力・バイオマス・小規模水力などが該当する。
- 需要に応じた運転の停止・再開や出力調整が短時間で可能になる
- 需要地に近接した場所でエネルギーを発生し、全体的な効率を高めたりコストを削減したりできる
- 移設・転売・廃棄・リサイクルなどが容易になる
- 工期が短くなり、需要量の予測のずれによるリスクを低減できる
- 個々の設備が比較的単純になるため、メンテナンス等に要する時間が短くなり、稼働可能率が高くなる
- 一部が使用不能になっても影響が小さく、全体的な信頼性が高くなる。災害などの有事においても影響(供給停止の範囲や期間)を抑制する。
- 化石燃料に代わる新たなエネルギー産業になる。
[編集] 短所、課題など
下記のような要因のため、活用の余地があるにもかかわらず、普及が阻害される場合がある。
- 他の問題の発生…たとえばバイオエタノールなどのバイオマスエネルギーの開発において、ほかの重要な用途があるものをエネルギー源とすることで、食料等の価格上昇や需給バランスの変化を招く場合がある。
- 普及規模による制限…現段階では普及規模が小さいために製造や輸送にかかる投入エネルギーの比率が高かったり、温室効果気体の削減効果が薄れたりする場合がある。
- 価格による制限…技術的に実用水準に達していても、化石燃料に比して現段階での市場価格が高い場合がある。
- 政治的要因による制限…反対勢力からの政治的抵抗や根拠に欠ける批判の流布など。
これらに加え、変動、分布の需要との不一致、つまり資源の地理的分布や時間的変動が需要の時間的変動や地理的分布と必ずしも一致しないため、貯蔵や別形態での輸送など、需要に合わせた供給の工夫が必要な場合がある(風力発電の出力変動、太陽光発電の出力変動などの例がある)が、この地理的偏在については枯渇性エネルギーにおいても共通する課題である。
[編集] その他の特徴
- 太陽からの輻射エネルギーに由来するものが多い…太陽光・太陽熱・風力・水力・波力・バイオマスなどが該当。なお、潮力は月や太陽などの近隣天体の引力に由来し、地熱は地球内部の放射性崩壊などに由来する。
[編集] 性能
再生可能エネルギーは原理的には温室効果気体を排出せずにエネルギーが得られるものが多く、新しいエネルギー源として、また地球温暖化への対策としても有効とされる。
設備の製造・メンテナンス・廃棄や燃料の運搬などにはある程度のエネルギー(電力、燃料など)を投入する必要があり、その過程で温室効果気体もある程度排出されるが、それら全てを考慮した上で
という点が性能を論ずる時に評価対象となり、多くがその有効性を認められている(スターン報告やIPCC第4次評価報告書を参照)。
利用に当たっては、枯渇性エネルギー源とも比較して
- 価格
- 入手性
- 安全性
- 信頼性
- 稼働率
- 保守性
- 供給の安定性(随意性)
- 利用可能な国や地域、気候
- ロケーション(冷却水の確保できる場所、日照や風況の良い所など)
- 排出物(排気・排水・排熱、廃棄物など)、リサイクル性
- 騒音、振動
- 用途との整合性
- 利用規模
- 寿命
- 建設や廃棄にかかる時間
- 将来の見通し(価格変動や供給可能量、性能向上など)
- 産業としての可能性
など、様々な点が評価の対象となり、性能の一部として論じられる場合もある。[13]
[編集] エネルギー収支
製造や運搬などのために外部から投入するエネルギーに対して、生み出すエネルギーの比率がどれだけ大きいかが評価の対象となる。指標としては、下記のようなものが用いられる。
- エネルギー収支またはエネルギー収支比(Energy Payback Ratio:EPR)…(生み出すエネルギー)/(投入するエネルギー)で定義される。大きいほど性能が良いとされる。
- エネルギーペイバックタイム(Energy Payback Time:EPT)…投入したエネルギーを取り戻すのにかかる時間で定義される。設備寿命に対してこれが短いほど性能が良い。
エネルギー収支からみた性能は下記のような要因に影響を受ける。普及や技術開発が進むにつれ、この10~20年程度で数倍~十数倍変化しているものもあり、具体的な数値を論ずる時はデータの出自に注意が必要である(例:[15])。
- 資源の分布状況…日照、風況、燃料作物の生産性、高温熱源の位置や種類(地熱)など
- 設備の技術水準
- 生産・流通・利用の規模…一般に、普及規模が大きくなるほど性能が向上する。
- 設備等のリサイクル状況
[編集] 温室効果気体の排出量
製造や運搬、メンテナンス、廃棄などの際、エネルギー源や原材料の一部として化石燃料等が利用されることで、ある程度の温室効果気体の排出がある。この排出量は、主に設備(発電設備など)の製造・設置・メンテナンス・廃棄などで決まるものが多い。またバイオマス燃料の場合、燃料の製造・運搬時の排出量が大きい(ただしバイオマス燃料そのものからの炭素の排出については、燃料の育成時に環境中から二酸化炭素として吸収されるため、その分はカーボンニュートラルとみなされる)。
これら温室効果気体の排出量を、生み出すエネルギー量あたりに換算して、化石燃料等に比して十分に少ないかどうかが評価の対象となる。指標としては、下記のようなものが用いられる。
- 発電量あたりの温室効果気体排出量(発電の場合)…ライフサイクル中に排出される全ての温室効果気体を二酸化炭素または炭素量に換算して、g-CO2/kWh や g-C/kWh で表される(12g-C/kWh = 44g-CO2/kWh)。これが少ないほど性能が良い。
- CO2ペイバックタイム(CO2 Payback Time:CO2PT)…化石燃料などと比較して全体的に温室効果気体の排出量が少なくなるまでの利用期間を言う。これが短いほど性能が良い。
温室効果気体の排出量も、エネルギー収支同様に資源の分布状況、普及規模や技術水準の影響を受ける。 また、製造等に必要なエネルギー源や原材料を温室効果気体の排出量が少ないものに転換すると、さらに温室効果気体の排出量が減少する。
[編集] 出力の安定性
再生可能エネルギーの中でも風力発電や太陽光発電は出力が不随意に変動するため、何らかの平滑化手段が無ければ、一定割合以上の電力需要を賄うことはできない。しかし、電力系統に接続できる限界容量の予測には不正確な見積もりや非現実的な想定が意図的に為されている場合が広く見られる(中には数%と見積もっているものもある)([13]P.254、P.261など)。実際には需要の数割程度の電力を問題なく供給可能とされる[16][17]。例えばデンマークでは2006年時点で国の電力の20%を風力発電で賄っており、さらに増やす予定である[18]。またスペインで風力発電による供給割合が瞬間的な需要の4割、数日間の平均でも約28%に達した例[19]など、既に多くの報告がある[16]。
不随意に変動する電源を効率的に利用するために、下記のような制度的・技術的な工夫が実用、または開発されている。
- 他の種類の小規模発電設備と連携する(マイクログリッドなど)
- 発電量の1割程度までの天然ガス火力発電等の組み合わせを制度的に認め、供給の安定度に応じて電力の買い取り価格を優遇する([20]P.51-52)
- 系統設備を強化する(逆潮流への対応など)
- 設備側である程度エネルギーを蓄積・平滑化する(圧縮空気、フライホイール、蓄電など)
- 需要側で需給バランスの平滑化を図る(ピークシェービング(ピークカット)[3]、夜間電力の活用など)
貯水式の水力、バイオマスなど再生可能な燃料を用いた火力発電、地熱などでは恣意的に出力を制御できる。また、太陽熱利用(太陽熱温水器など)や太陽熱発電の場合、蓄熱によって出力をより柔軟に制御可能である。発電した電気で水を電気分解して水素を製造し、これを圧縮、有機ハイドライド等に吸着、または二酸化炭素と反応させて炭化水素にする、若しくは窒素と反応させてヒドラジン(水加ヒドラジン)にする[要出典]ことなどによりエネルギーを貯蔵、輸送する方式は、結果的に出力の平準化の問題解決にもなると考えられている。
[編集] 設備の信頼性
一般的に、大規模集中型のエネルギー設備はシステムが複雑になるため、計画外の停止が発生する確率が高くなり、また老朽化の影響も大きくなる([13]P.42など)。これに対して、再生可能エネルギー設備は小規模でも実用になるものが多い。小規模な設備を多数用いる形式(小規模分散型)の設備は、全体での信頼性が高くなり、老朽化の影響も少なくなることが知られている。上手に設計された数百~数千kW規模の風力発電所や太陽光発電所においては、100%近い稼働可能率も記録されている([13]P.241)。
[編集] エネルギー源別の具体的な性能
詳細は、各エネルギーの項目を参照のこと。
[編集] 費用
一般に、再生可能エネルギーの発生エネルギーあたりの費用(コスト)は既存の枯渇性エネルギーよりも高価なものが多い。しかし適切な普及促進政策により、許容できるコストで相当量を導入することも可能とされる。水力、バイオマス、地熱などは昔から実用されており、新しい技術も加わってそれぞれ利用形態が多様化している。近年は風力発電のコストも普及域まで下がっているほか、昼間の高価値なエネルギーを供給する太陽光発電などのコストも実用域に近づいている。
下記にIEAによる比較と予測の例を示す。 (この資料では石炭による発電コストを4¢/kWhとしている([21] P.195, Figure6.3)が、G8のうちいくつかの国ではコストは 7.88p (~15¢/kWh)よりも大幅に高い[22]。下記の将来のコスト予測は今後の技術開発、市場の拡大と量産規模の拡大を前提としている[23]。)
2001年のエネルギーコスト | 将来のコスト予測 | |
電力 | ||
風力 | 4-8 ¢/kWh | 3-10 ¢/kWh |
太陽光 | 25-160 ¢/kWh | 5-25 ¢/kWh |
太陽熱 | 12-34 ¢/kWh | 4-20 ¢/kWh |
大規模水力 | 2-10 ¢/kWh | 2-10 ¢/kWh |
小規模水力 | 2-12 ¢/kWh | 2-10 ¢/kWh |
地熱 | 2-10 ¢/kWh | 1-8 ¢/kWh |
バイオマス | 3-12 ¢/kWh | 4-10 ¢/kWh |
石炭火力発電 (比較) | 4¢/kWh | |
熱 | ||
地熱 | 0.5-5 ¢/kWh | 0.5-5 ¢/kWh |
バイオマス | 1-6 ¢/kWh | 1-5 ¢/kWh |
太陽熱 | 2-25 ¢/kWh | 2-10 ¢/kWh |
全てのコストは キロワット時(kWh)あたり、 2001年時点での米国セント(¢)による。 | ||
出典: World Energy Assessment, 2004 update[23]、Table7。 |
コストが設備の価格に大きく左右されるエネルギー源(風力発電や太陽光発電・太陽熱発電など)の場合、市場規模の拡大に従ってコストが低減することが知られており、将来のコストの予測は比較的容易である([20]P.96, [24]など)。また一般にこうしたエネルギー源では、原油やウランなどの枯渇性エネルギーに比べてコストの不規則な変動も緩やかであり、コストの変動による財務リスクが小さくなる[13]。
生産規模の拡大や新技術の投入を促すため、コスト低減に当たっては市場規模の拡大が重要視される。その一方で枯渇性エネルギーには供給安定化などを目的として直接・間接的に多額の公金が投入され、再生可能エネルギーのコスト的な競争力を削いでいる[20]。導入に際してはこの障壁を越えるためのコストが追加される場合が多いが、後述のfeed-in tariff(FIT)制を用いて市場拡大に力を入れたドイツの場合、FITのコストを含めても、許容範囲内のコストで2020年までに電力の25%を再生可能エネルギーで賄うことが可能と見込まれている[25]。
[編集] 資源量
再生可能エネルギーは半永久的に利用可能かつ膨大な資源量を有する。技術的に利用可能な量は少なくとも現在の世界のエネルギー需要の約20倍で、2100年時点で予測されるエネルギー需要と比べてもなお数倍以上大きいと見積もられている。潜在的な資源量はさらに桁違いに大きく、技術の発達次第で利用可能な量もさらに増えると見られている([8]Chapter5など)。
再生可能エネルギーの資源量 (エクサジュール(EJ)/年) | |||
2001年時点での利用量 | 技術的ポテンシャル | 理論的ポテンシャル | |
水力 | 9 | 50 | 147 |
バイオマス | 50 | >276 | 2,900 |
太陽光・太陽熱 | 0.1 | >1,575 | 3,900,000 |
風力 | 0.12 | 640 | 6,000 |
地熱 | 0.6 | 5,000 | 140,000,000 |
海洋 | (算出されていない) | (算出されていない) | 7,400 |
合計 | 60 | >7,600 | >144,000,000 |
利用量は一次エネルギー換算。参考:2001年時点での世界の一次エネルギー消費量は約402EJ/年。 |
[編集] 利用状況と見通し
再生可能エネルギーはエネルギーの自給率を高めるほか、IPCC第4次評価報告書、スターン報告などでも地球温暖化への対策の一環として挙げられ、その効果は数ある緩和手段の中でも最も大きい部類に入るとされている[27]。このため今後の市場拡大やコスト低減を見越して、エネルギーや電力需要の数割以上を再生可能エネルギーで賄ったり、それを目指す国が増えつつある。
再生可能エネルギーは2004年時点では全世界の一次供給エネルギー(TPES)の13.1%を占めていた[7]。そのうち殆どがバイオマスなど可燃性のもの(10.6%)であり、それに水力(2.2%)、地熱(0.4%)が続く。発電分野では17.9%を再生可能エネルギーが占め、その殆どが水力であった。近年は風力発電など、大規模水力発電以外の("non-Hydro"な)再生可能エネルギーの利用が伸びている。例えば欧州では2020年までに一次エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を20%にする法的拘束力のある仕組みの準備が進められている[28]。また米国においても、米国エネルギー省が2030年までに総需要の20%を風力発電で供給可能との見通しを示し、また新規導入量も2007年時点で他方式の発電所を凌駕している[3]など、世界各地で導入の動きが活発である[4][5][2][29]。
これに比較して、日本での普及目標量は少なく、長年世界一を保ってきた太陽光発電の年間導入量でもドイツに抜かれるなどしており、政策の弱さが指摘されている[30][14][31][32][33][34]。
IEAでは、2030年にはnon-Hydroな再生可能エネルギーが欧州の発電量の2割以上、世界の発電量の約1割を占めると予測している。また、IEAによる2050年の発電量に占める割合の予測では下記のようになっている[7]。
- 現状維持(Baseline Scenario) :世界の発電量の2割程度
- 技術加速シナリオ(ACT Scenarios):世界の発電量の4~6割程度
- 楽観的シナリオ(TECH Plus Scenario):世界の発電量の7割程度
[編集] 普及政策
地球温暖化の抑制は急務となっており、IPCC第4次評価報告書では平均気温の変化を2℃までに抑えるには2050年までに温室効果ガスの排出量を半減する必要があるとされ、第三作業部会報告書において、再生可能エネルギーも重要な緩和技術に位置付けられている[35]。その一方で既存の枯渇性エネルギー源には供給安定化などの目的で直接的・間接的に多額の補助金が支出されており、また既に広く普及しているため安価で流通している。これらは再生可能エネルギーを普及させる際の障壁となる。このような障壁を乗り越え、かつ必要な速度で普及させるため、様々な普及政策が用いられている[20]。現在用いられている普及政策は、固定枠(quota)制とフィードインタリフ制(feed-in tariff、固定価格制とも呼ばれる)に大別できる。 温室効果ガスの排出源そのものの競争力を相対的に弱める環境税(炭素税)の導入も始まっているが、産業界が強く抵抗することが多い。
なお、こうした普及政策の有効性および必要性は、地球温暖化の抑制策の一環として、スターン報告やIPCC第4次評価報告書でも指摘されている。政策に頼らない自主的努力の限界についても、指摘が為されている。
[編集] 固定枠制
クォータ(quota)制とも呼ばれる。これは一定割合以上の再生可能エネルギーの利用を義務づけるものである。特に電力においてはグリーン電力証書 (tradable green certificates) 制度を用いて、環境価値分を他に転売することを可能とする制度である。
導入初期段階においてはある程度の導入促進効果を発揮する。しかし導入の際の投資リスクが高く、また条件の良い限られた案件だけが開発されるなどの欠点が指摘されている。下記の feed-in tariff 制と比較して、長期的にはコストが削減されず、また普及促進効果も劣ることが経験的に知られている[20]。日本のRPS制度もこれに属する。
[編集] フィードインタリフ制
フィードインタリフ制を参照
再生可能エネルギーの設備を導入した時点で、その設備から供給されるエネルギー(主に電力)の買い上げ価格を、一定期間(たとえば20年間)保証する方式である。固定価格制とも呼ばれる。事業計画が立てやすく、投資リスクが低いため、再生可能エネルギーの普及助成費用を最小限に抑えられる特徴を有する。特に風力発電や太陽光発電など、初期投資が投資額の大部分を占める方式で有効である。電力会社に対し、系統への接続や発生した電力の買い上げ義務を課するのも特徴である。買電価格は導入した時期が遅くなるに従って逓減する。この逓減のペースを普及状況とコスト削減の進捗状況に応じて定期的に調整することで、導入量と助成コストを制御する。この制御性、および制度的な柔軟性が他方式に比べて高く、導入量あたりのコストが最も低く済むことが経験的に知られている[20]。このため現在までに最も実績を上げている手法となっており、2006年時点で41の国や地域が導入している。欧州ではEU25カ国中19カ国が導入している(2007年時点)。 制度的な柔軟性も高く、下記の炭素税(環境税)のほか、グリーン電力証書や税額控除などの手法とも併用されることが多い[36]。
[編集] 環境税
環境税を参照
環境税[37]のうち、温室効果ガスの排出に対して課税するものがあり、これは炭素税とも呼ばれる。再生可能エネルギーの普及策という観点からは、これは化石燃料の競争力を相対的に下げる効果を持つ。上記のフィードインタリフ制などと併用される場合もある。 海外諸国で既に導入され、多くの国で温室効果ガス排出量削減を実現している(環境税を参照)ことから、導入を検討中の国においても高い効果が期待されている。化石燃料に直接課税するだけでなく、再生可能エネルギー源に対する減免・還付等の財源にする場合もある[38]。フィードインタリフ制と併用するドイツでは、環境税収の 9割を雇用にかかる人件費抑制(具体的には社会保険料の縮減。残り 1割は環境対策)に用いて、雇用への影響抑制に用いている[39]。 日本でも有効な手段になると考えられており[40]、環境省は得られた税金を地球温暖化対策に用いる(特定財源とする)方式による炭素税導入を提案している[41]。しかし、欧州諸国などに比べて議論は進展しておらず、地方自治体で散発的に導入されるに留まっている。詳しくは環境税を参照のこと。
[編集] その他の政策
導入費用に対する補助金、入札(tender)制、控除など税制上の優遇措置、低利融資、余剰電力購入(net metering)などがあり、固定枠制やフィードインタリフ制と組み合わせて用いられることもある。
日本では電力会社が自主的に余剰電力購入制度を設けている。また地方自治体が独自の補助制度を設ける場合も多い。
[編集] 懐疑論
再生可能エネルギーによって現在のエネルギーを代替しようとする場合、その現実性について下記のような懐疑的な意見もみられる。
- エネルギー密度が低い
- 不安定で系統安定化が必要
- 設備コストや発電単価が高い
- 発電効率が低い
- ライフサイクルで見るとエネルギー収支が正になるとは限らない
- 基幹エネルギー源として利用するには絶対量が不足している
ただし根拠に乏しかったり、条件の悪い時だけを取り上げて批判するものも多い。風力発電#出力変動、太陽光発電#太陽光発電に関する誤解例、太陽光発電#出力変動などを参照。
[編集] 脚注
- ^ a b What is Renewable Energy?(EPA)
- ^ a b 今月のトピックス No.122-1(2008年4月23日)(日本政策投資銀行)
- ^ a b c Wired Vision記事、2008年6月5日
- ^ a b NEDO海外レポートNo.1010
- ^ a b NEDO海外レポートNo.1011
- ^ Learning about Renewable Energy(NREL)
- ^ a b c IEA renewables fact sheet (2006)
- ^ a b World Energy Assessment (2000), Chapter 7, Table7.1.
- ^ 野鳥と風車—風力発電施設が野鳥に与える影響評価に関する資料集、日本野鳥の会 編・発行、2007年。
- ^ 日経BPスペシャル記事、2008年6月2日
- ^ What's 新エネ(NEF)
- ^ What Are the Benefits of Green Power?(EPA)
- ^ a b c d e f エイモリー・B・ロビンス「スモール・イズ・プロフィタブル(Small is profitable)」ISBN 4-87973-294-X
- ^ a b 飯田哲也「自然エネルギー市場」ISBN 4-8067-1303-1
- ^ 太陽光発電のエネルギーペイバックタイム・CO2ペイバックタイムについて(産業技術総合研究所)
- ^ a b [http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/story?id=51767 RenewableEnergyWorld.com Online, 2008年3月25日
- ^ Wind Power Myths vs. Facts,AWEA.
- ^ http://www.renewableenergyaccess.com/rea/news/story?id=46749
- ^ AFP BB News, 2008年03月26日
- ^ a b c d e f Feed-In Tariffs: Accelerating the Deplyment of Renewable Energy, Miguel Mendonca, World Future Council, ISBN 978-1-84407-466-2
- ^ World Energy Outlook 2004, IEA
- ^ EDF energy, UK, general purpose charging scheme, December 2006.
- ^ a b World Energy Assessment 2004 Update、 UNDP siteよりダウンロード可能。
- ^ http://www.heliotronics.com/papers/PV_Breakeven.pdf
- ^ in 2020 renewable energies can contribute 25% to electricity supply (BMU)
- ^ http://www.dlr.de/tt/Portaldata/41/Resources/dokumente/institut/system/projects/Ecobalance_of_a_Solar_Electricity_Transmission.pdf
- ^ たとえば IPCC第4次評価報告書の原典、Figure TS.10 (Figure3.23)
- ^ EU makes bold climate and renewables commitment (EurActiv)
- ^ 日経Ecolomy、2008年01月23日
- ^ NBOnline 2008年5月26日
- ^ Business Media 誠、2008年4月
- ^ ドイツの固定価格買取制度、遠州 尋美、2006年
- ^ FIT入門、櫻井啓一郎、2008年
- ^ Livedoorニュース、2008年03月24日
- ^ IPCC AR4 WG3 SPM 概要(環境省)
- ^ Feed-in Tariff Designs, Arne Klein, VDM Verlag Dr. Mualler, 2008, ISBN 978-3-8364-6238-9
- ^ 『環境税とは何か』、石弘光、岩波書店、1999年、ISBN 4-00-430600-0
- ^ NEDO海外レポート NO.1000, 2007.5.23
- ^ 日独気候政策シンポジウム2005 の資料(PDF)Germany's Ecotax Reform 1999 - 2003: Implementation, Impact, Future Development(英語)などを参照
- ^ 炭素税は対策として有効か?(国立環境研究所によるコラム)
- ^ 環境税について(環境省)
[編集] 関連項目
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経過 |
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原因 |
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影響 |
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対策 |
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議論 | 懐疑論 • 暴走温室効果 • スベンスマルク効果 • ガイア理論 • エコロジー • 地球寒冷化 • ホッケースティック論争 | ||||||
カテゴリ : 気候変動 • 地球温暖化 |