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ヒートポンプ - Wikipedia

ヒートポンプ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヒートポンプ: heat pump)は、外部から電気などの駆動エネルギーを与えて、低い温度の部分から温度の高い部分へ熱を移動させる装置。理論上は逆カルノーサイクルが最高効率である。19世紀後半より、熱力学の理論としては確立されていた。

冷房冷蔵・冷凍の場合周囲より温度を下げるために使用される。また、暖房給湯の場合、大気地下水河川下水道)・排熱から、投入エネルギー(電気が多いがその他の動力・熱のものもある)の3~6倍のを回収し省エネルギーを可能とする。熱の移動方向が違うだけで同じしくみであるため、冷温熱同時取り出しも可能である。

すなわちヒートポンプの特徴は2点あり、ひとつは1世紀以上も歴史がある熱移動による冷却技術と、もうひとつは1970年代後半に実用化された熱回収によって加熱を行う省エネルギー技術である。

目次

[編集] 普及・技術改善の背景

ヒートポンプは地球温暖化問題で削減対象となっているCO2の排出抑制技術として注目されている。近年のさまざまな要素技術の改善(インバータによる運転制御、冷却ファンの高効率化、熱交換器の性能向上、コンプレッサの改良など)の積み重ねにより、ヒートポンプの成績係数(COP)はここ数年で大幅に向上してきた。そのCOPの向上には主に技術改善を促す二つの背景があった。

[編集] 社会的要因

省エネルギー法などによるトップランナー規制が浸透してきたことと、環境負荷の低減効果やCO2削減効果が、機器を選定する上で評価されるようになったのである。ライフサイクルコストや省エネ性・CO2排出抑制も、価格同様導入の判断材料と評価されることで、導入価格が多少増加しても効率の高い機器を選択する需要家が増加した。また、1999年から導入された省エネ法のトップランナー規制は、環境評価の判断材料として、消費者に対して簡単に省エネ性能を明示するラベリング制度と相まって、ヒートポンプ技術の改善に寄与してきた。当時でもルームエアコンはCOPが約3の機種が多く、一次エネルギー換算COPは1.1以上であり、ファンヒーターなどの効率η=0.8程度をはるかに上回る省エネルギー性を保っていた。しかし、トップランナー方式が導入された後、2006年時点でルームエアコンのCOPは6.5前後、パッケージエアコンは5.0弱に向上している。決して革命的な技術が導入されたわけではないが、各部位の性能が向上した結果、相乗効果でCOPが大幅に改善している。

[編集] 日本の気候

日本の気候がヒートポンプを活用する上で適した環境だった。欧米のように暖房中心の国や東南アジアのような冷房中心の国では冷房、暖房のいずれかを行う単機能の機器で済む。日本では夏は冷房、冬は暖房と季節ごと空調種別が異なることと、欧米に比べて温暖湿潤な日本の気候は、空気を熱源とした冷暖両機能を持ち合わせたヒートポンプエアコンが市場から受け入れやすかった。冷房と暖房を同じ機器で行うことができることは二重に空調設備を導入しなくて済むため、年間を通して機器の稼働率が高まり経済的である。また、ヒートポンプの特徴として室内外の温度差が小さくなればなるほどCOPが向上するため、中間期などでも空調が必要な場合、燃焼式とは異なりカタログ記載値よりもCOPが向上する。メーカーにとっても、この消費者が機器効率の改善を新たな商品価値として評価する傾向が開発へのインセンティブとなり、COP向上を目指した開発競争が本格化した。また、日本では熱エネルギーを取り込む技術が発達したため、高効率エアコンだけではなく、ヒートポンプ式の洗濯乾燥機や、自然冷媒ヒートポンプ給湯機が開発されるなど、ヒートポンプの応用技術も拡充している。

[編集] ヒートポンプの種類

スターリングサイクルを使用するものやケミカルヒートポンプ等がある。それぞれ用途に応じて使い分けられる。

[編集] 日本の現状

従来から電力会社によって、省エネ化や割安な深夜電力消費によるコスト削減、負荷平準化を成せる機器として、ヒートポンプは業務用氷蓄熱エアコン(商品名:エコアイス)などとして普及を目指していたが、近年家庭向けに自然冷媒ヒートポンプ給湯機(商品名:エコキュート)が開発され、省エネやオール電化の一環として、電力会社が普及促進に力を入れている。背景にはエコロジー意識の向上やCO2排出に対する意識の変化(暖房でも直接燃焼させ熱エネルギーを得るよりCO2排出量が約半減する)などがある。寒冷地用のヒートポンプ給湯もCOP値が4を越えるようになってきている。自然冷媒ヒートポンプ給湯機は、CO2排出抑制の切り札として注目されており、機種によっては政府(有限責任中間法人 日本エレクトロヒートセンター)の補助金制度が利用できるものもある。日本では財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターが中心となって普及促進に努めている。

[編集] 世界の現状

欧州では統一的な方針は出ていないものの、多くの国で従来の地中熱利用のみならず、大気熱利用まで対象範囲を広げてヒートポンプを熱利用分野の再生可能エネルギーとして見なす傾向が高まっている。スウェーデンのように国際エネルギー機関へ再生可能エネルギーの普及実績として空気熱利用のヒートポンプを計上している国もある。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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