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停車 (鉄道) - Wikipedia

停車 (鉄道)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

停車(ていしゃ)とは、鉄道車両運転中に何らかの理由で停止する事を言う。

狭義では等において旅客の乗降等を取扱う為のものを意味するが、広義では運転停車など列車が停止するすべての場合を含める。本項では鉄道における停車をダイヤグラムや鉄道運転業務の観点から見たものについて記述する。

目次

[編集] 停車の取り扱い

運転規則上、停車している車両に乗務員が乗務している場合を「列車の停車」、乗務していない場合は「車両の停車」として取り扱っている。

[編集] 主な目的

鉄道においては、主として以下に挙げる行為を目的として停車を行う。特に駅や信号場において客扱いや荷扱いを行わないものは運転停車と称する。

[編集] 列車の停車時間

旅客列車の場合、基本的には列車種別や車両のドア数、また大都市の駅では乗降客数ホームと出入口の構造(階段の位置など)、線路配線および平面交差支障時分などの様々な制約や条件を考慮して停車時分を設定する。このため明確な基準は無いものの、小規模の駅では短い場合15秒程度、長距離列車や乗降客が集中する駅では1分-90秒程度となる。またワンマン運転を行う場合は客扱いに時間がかかり、停車時間が延びやすい。客扱いのほか列車交換や待避、増解結、乗務員交代、機関車交換等を行う場合には停車時間が長くなる。

貨物列車の場合には、荷役を行なう貨物駅の構造や入換作業の有無に大きく左右される。貨車の連結と解放を同時に行う場合は停車時間が長くなるが、貨車の解放のみだと5分程度で済むことがある。また着発線荷役方式 (E&S) を採用している貨物駅では貨車の連結・解放作業なしでコンテナの荷役作業が可能である。この場合15-20分程度の停車時間を要する。

[編集] 旅客列車の停車方式

基本的には、1線に1列車を停止させ、客扱いとドア開閉を行った後に発車となる。しかし、以下のような特別な方法も存在する。

[編集] 交互着発

1面のホームに(待避線がある等の理由で)2線ないしそれ以上ある場合、列車の待避などを行わない場合にも列車を複数の番線に交互に停車させる方式である。ホームの片方に列車が停車している状態でも後続の列車が入線できるため、列車の運転間隔を狭めることが出来る。ラッシュ時など列車本数が多い時間帯、乗降客の集中などで停車時間が延びるターミナル駅等で用いられる。

[編集] 緩急接続

詳細は待避駅を参照

1つの鉄道路線に停車駅・速度の異なる列車(主に普通列車と速達列車・優等列車)が走っている場合、待避駅において待ち合わせを行う列車と追越を行う列車それぞれの間で相互に乗り換えられるようにすることを緩急接続という。特に同一ホーム(島式ホーム)で乗り換えられる場合を指す場合が多い。

専門的には前者の列車を「緩行」、後者を「急行」と呼び、それらが「接続」することから「緩急接続」と呼ぶ。「緩急結合」とも呼ばれる。アナウンスでは「急行の待ち合わせ」「各駅停車に連絡(接続)」などと案内する場合が多い。また、待避駅を通過して追越を行う場合にその前後の駅に停車し、待避駅以外の通過駅から上位種別の列車への乗換の利便を図ることを「準緩急接続」と呼ぶ場合もある。

緩急接続を行う場合、普通列車しか停車しない駅でも優等列車を利用しやすくなり、路線全体の駅に利便が及ぶ。その反面、優等列車の乗客が増えることで混雑したり、待合わせにより普通列車の所要時間が増えてしまう短所を持つ。そのため、通勤時間帯など利用が集中する場合は、わざと緩急接続しないで混雑の平均化を図る場合が多い。これを緩急分離という。また、途中駅での列車待避を行わず、列車種別に関係無く平行ダイヤに乗せてしまうこともある。

また類似の例として、乗換駅などで1面のホームに複数の番線が設けられている場合、列車を同時に到着、或いは発車させ相互に接続をとる手法もある。

[編集] 千鳥停車

列車種別によって停車駅を分散させるダイヤグラムが混雑時間帯などに採用されることがある。これを千鳥停車、または千鳥式運転という。日本では阪神電気鉄道で初めて採用された[1]

多くの場合、緩急接続のため上位の列車種別の停車駅には下位の列車種別の列車は必ず停車するが、ラッシュ時にそれを行うと、より速達効果の高い上位種別列車に乗客が集中し、乗換駅での乗降時間の増大を招く。それを防ぐため、種別ごとに対象とする駅を分散させ、列車ごとの乗客数を平準化することが千鳥停車を実施する主な理由である。列車の追越もあまり行わず、複数種別の列車が走る場合でも平行ダイヤに近い形態をとることもある。代表的な事例として、西武池袋線池袋~所沢間が挙げられる(1998年3月~2001年12月までが最も多く、10種もの列車種別が存在していた)。

このような利点のある千鳥停車であるが、上位種別の停車駅を下位種別の列車が通過するというような事態も起きるため、その路線に慣れていない利用者にとっては利用しづらく、誤乗により下車駅を通過してしまったり、所要時間が伸びてしまう危険が高い。そのため、千鳥停車の大半は混雑の激しい路線においてラッシュ時間帯限定で実施される。採用した場合には駅係員はダイヤの記憶と判断力が必要になる。

[編集] 選択停車

ダイヤ作成上停車する駅・バス停を選択的に決定することを選択停車と言い、鉄道の場合には優等列車を停車するだけの規模を持った駅が近接して続いている場合などにその停車駅を固定化せず平準化させることをいう。停車駅を絞ることで各駅の利用客に配慮しながら、列車ごとの所要時間均一化を計る目的がある。別種別を立てるなど、これを制度的に採り入れてダイヤを組んだものが千鳥停車である。

また、現在でもしばしば見られる優等列車の停車駅争奪戦を避ける意図で用いられる事も見られ、主に国鉄・JRの列車本数が少ない路線で行われてきた。この例は現在伯備線のエル特急「やくも」などで見ることができる。

[編集] 臨時停車・特別停車

ある駅において通常より多くの乗降客が発生する際、本来はその駅を通過する列車を停車させることを「臨時停車」「特別停車」と称する。これは、所定の停車列車では利用者を輸送しきれない場合や特に利便性を図る必要がある場合に行われる。季節営業駅を除く臨時駅ではすべての停車列車が臨時停車扱いとなる。

主に駅に近接するサッカー場野球場・公営競技施設等で試合やレース、催事が開催される場合に実施される。味の素スタジアム最寄りの飛田給駅中京競馬場前駅JRA京都競馬場最寄りの淀駅での例などが代表的である。

著名な社寺への最寄り駅では、正月三が日の初詣や大規模な祭事が開催される場合に実施されることがある。(初詣臨時列車も参照)

また受験シーズンに受験会場近くの駅で行われる場合もある。なお受験生の乗り間違えから通過駅に停車させる「恩情停車」が発生することがあるが、本来この様な手法は殆どの鉄道事業者において許可されていない。

また緊急を要する急病人等が発生した列車を臨時に停車させる場合もあり、同様に「特別停車」と称する。但しこの場合、当該列車乗務員と運行指令双方の判断による許可が必要である。

なお、利用者の増加により特別停車が恒常的となり、案内上混乱をきたすようになったため列車種別を2005年に増やした名古屋鉄道のような事例もある。

JRの場合は、ダイヤ改正時に1年間のうちの停車期間を予め設定するものと、各季節の臨時列車の設定時にその都度臨時停車日を設定するものの2種類がある。市販の時刻表上では、前者は「(駅名)停車は○月○日~○月○日」、後者は「○月○日~○月○日は(駅名)停車」と表現が異なっているが、2007年現在、前者に該当するものは津軽海峡線竜飛海底駅のみである。

[編集] 運転停車

客扱いや荷扱いを行わない場所で停車するものを指す。主に小駅や信号所における列車の行き違いや待避、スイッチバックによる方向転換、乗務員の交代や機関車の付け替えといった運転上必要な業務を行なうためのものが多い。比較的走行区間が短い夜行列車では時間調整として行なわれる場合もある。また旅客列車に併結された荷物車の荷扱いのための停車についても、乗客から見ると運転停車に当たる。

なお、列車の扉が自動扉で無かった時代は、客扱いを行わない停車は多く存在しなかった。車両の扉は走行中も乗客が自由に開閉でき、停車していれば乗降が可能だったからである(一部列車では、施錠される例もあった)。そのため昭和中期ごろまでの時刻表では、運転扱い上の理由で停車する小駅(瀬野八区間における上りの瀬野駅など)や深夜に停車する駅でも、優等列車の停車時刻が掲載されていることがあった。

また、自動扉を持った車両が増えてきた時代に起こった有名な運転停車に関する事件として、1961年の「サンロクトオ」改正における特急「白鳥」をめぐり、北陸本線能生駅で起こった「能生騒動」がある。

[編集] その他の停車

場内信号待ちで停車場外などの本線上で停車する場合は「機外停車」と称することもある。

[編集] 脚注

  1. ^ この名称の由来として、鉄道評論家川島令三は「千鳥が急に停まったり走ったりすることから千鳥式運転といわれている」という説を挙げている。『新東京圏通勤電車事情大研究』(川島令三草思社ISBN 4794203810)46ページ

[編集] 参考文献

[編集] 関連項目


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