ロマ音楽
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ロマ音楽(-おんがく)では、西アジアやヨーロッパなどで移動型の生活を送る、あるいは送っていたロマ民族(ジプシー)を中心に発達してきた音楽について述べる。
目次 |
[編集] 放浪生活
ロマは北インドに起源を持つ移動型の民族であり、中近東、北アフリカ、ヨーロッパなどで生活している。 ロマは西暦1000年以前には北インド、ラジャスタンを離れ、放浪生活に入っていったと考えられている。一方、現在もラジャスタンで演奏家や旅芸人として生活しているロマもいる。
ロマは各地を放浪し、音楽の演奏やダンスなどを行う旅芸人として生計を立ててきた。彼らによってもたらされた音楽は、現地の音楽に影響を与え、また影響を受け、相互に発展してきた歴史がある。
ロマは北インドをたった後、イラン、イラク、アルメニア、その他中近東に現れるようになった。西暦1050年頃には既に、コンスタンティノポリスで音楽の演奏をしていたと考えられている。15世紀ごろにはエジプト、スーダン、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、ギリシャ、クロアチア、マケドニア、セルビアなどへと居住地を拡大、やがてヨーロッパ全域へと広がっていった。
スペインのフラメンコの原型もロマの音楽とダンスであったと考えられるなど、彼らは放浪先の中近東やヨーロッパ各地の音楽文化に強い影響を与えてきた。ロマの音楽の大きな特徴として、ソウルフルなヴォーカル、そして音高をすべるように移動するグリッサンドの多用などがある。
[編集] インド
インド北部のラジャスタン地方はロマの故地であり、現在でもロマが音楽やジャグリングなどのショーをする旅芸人として住んでいる。
[編集] トルコ
トルコ音楽も参照
トルコは西暦1000年ごろからロマが住んでおり、さまざまな音楽が生み出されてきた。こんにち、トルコのロマの音楽はベリーダンスの音楽としてよく知られている。
ファスル(Fasıl)は軽快な伝統音楽で、主にクラリネット、バイオリン、ダラブッカ、ツィター(qanún)などが使用される。
チフテテリは、激しいベリーダンスと比べて、よりスローテンポでゆったりとしたダンスである。古代アナトリア半島に起源を持つといわれているが、その発展には多くのロマが関わっている。
ベリーダンスやファスルのショーはレストランやナイトクラブで披露される。
[編集] マケドニア
マケドニア共和国の音楽および チョチェクも参照
チョチェクは、ブルガリアではキュチェクと呼ばれ、サクソフォンやクラリネット、そして第一次世界大戦以降盛んになったブラスバンド形式の演奏、およびダンスである。チョチェクの音楽は9/8拍子を大きな特徴とする躍動感のあるもので、マケドニア共和国からは多くの世界的に有名な奏者を輩出している。代表的な音楽家には、女性歌手のエスマ、ブラス・バンドコチャニ・オーケスターがいる。
[編集] アルバニア
アルバニアの音楽も参照
アルバニアでは、ロマの音楽と現地の音楽がむずびつき、[:en:Tallava|タラバ]]と呼ばれるジャンルを形成している。タラバは中東の影響を濃く受けついた特徴的な音楽で、ドラムス、そしてダフが使用される。タラバはロマのみならず非ロマ系のミュージシャンも多く、アルバニアでは人気のある音楽となっている。
[編集] セルビア
セルビアの音楽も参照
セルビアのロマは主に南セルビアに多く住み、オスマン帝国の軍楽隊の音楽に由来する、ブラスバンド形式の音楽で知られている。主な奏者としてBoban Markovićが知られている。( [1][2][3] "Kecarac kolo" "Sunen romalen, sunen cavalen")
[編集] ギリシャ
ギリシャはオスマン帝国支配下でトルコと共通の文化圏に属しており、ギリシャのロマの音楽にはトルコからの影響の要素が強い。希土戦争の影響でアナトリア半島のイズミルからギリシャ本土に移ったギリシャ人によってもたらされたチフテテリなどが有名。
[編集] ルーマニア
ルーマニアの音楽も参照
ルーマニアのロマ音楽奏者はラウタリと呼ばれ、そのバンドはタラーフ(taraf)と呼ばれる。タラーフの主な構成はフィドル、ツィンバロム、アコーディオン、コントラバスなどからなる。Taraf de Haidouks、ファンファーレ・チョカルリア (Fanfare Ciocărlia)などのバンドは国際的に知名度がある。
マネーレはロマ音楽の影響を受けた現代の音楽としてルーマニアはじめバルカン半島で盛んになっているジャンルである。
著名なロマのミュージシャンには、次のような人物がいる。
- Romica Puceanu 女性歌手
- Nicolae Guţă 男性歌手
- Sandu Ciorba 男性歌手。ほとんどの楽曲をロマ語で歌う。
[編集] ブルガリア
ブルガリアの音楽も参照
多くのロマ人口を抱えるブルガリアでは、ロマの音楽は大変盛んであり、パーティーや結婚式などでたびたび演奏される。ロマの演奏するキュチェクは、チャルガの起源としても知られている。
[編集] ハンガリー
ハンガリーのロマの音楽の歴史は長く、また世界的に有名である。しかし近年、音楽家の登録にクラシックの試験が課せられるようになってからロマ音楽家は減っており、ロマ音楽が必要なイベント(結婚式など)では隣国のルーマニアからミュージシャンを招いてまかなっているという側面がある。バイオリニストの ロビー・ラカトシュ、ヤーノシュ・ビハリなどの奏者が知られている。
[編集] ロシア
ロシアの音楽においてもロマは重要な役割を果たしてきている。エカチェリーナ2世の時代に大きく発達した。19世紀にはより洗練されたものに進化し、ロシア革命までは大きく栄えた。 Jean GoulescoやPyotr Leshchenkoなどの奏者が知られている。
[編集] スペイン
スペインのロマ音楽は、その人気が一般化したフラメンコ音楽によって広く世界的にしられている。フラメンコはスペイン南部のアンダルシア地方で生まれ、ロマの文化と関連づけられてとても良く知られている。スペインのロマはヒタノ(Gitanos)と呼ばれ、多くの有名なフラメンコ・アーティストを生み出してきた。しかし、実際にはフラメンコは純粋なロマの音楽というよりは、アンダルシア地方の土着音楽に由来するところが大きい。もっとも、その発展には多くのロマのアーティストたちが関わってきてはいる。
[編集] フランス
フランスのロマは、スペイン由来のグループ(ルンバ・ヒターナ rumba gitana) と、マヌーシュ、あるいはドイツ起源のグループに分けられる。前者にはジプシー・キングス、後者にはジャンゴ・ラインハルトが有名である。
[編集] 関連項目
- ロマ
- チョチェク - キュチェク、チュチェク、あるいはジプシー・ブラスとして知られる。
- ベリーダンス
- フラメンコ
- Category:ロマの人物
[編集] 参考文献
- Broughton, Simon. "Kings and Queens of the Road". 2000. In Broughton, Simon and Ellingham, Mark with McConnachie, James and Duane, Orla (Ed.), World Music, Vol. 1: Africa, Europe and the Middle East, pp 146-158. Rough Guides Ltd, Penguin Books. ISBN 1-85828-636-0
- 関口義人著『ジプシー・ミュージックの真実 - ロマ・フィールド・レポート』(青土社、2005年)ISBN 4-7917-6210-X
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