ヘラガバルス
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ヘラガバルス(203年3月20日 - 222年3月11日)は古代ローマ帝国セウェルス朝の皇帝(在位:218年 - 222年)。英語ではエラガバルス(Elagabalus)、ラテン語ではヘリオガバルス(Heliogabalus)。本名はマルクス・アウレリウス・アントニウス(Marcus Aulerius Antonius)。ローマ史上で最も伝統から逸脱した皇帝として知られる。
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[編集] 生涯
父はセクストゥス・ウァリウス・マルケルス、母はユリア・ソエミアス・バッシアナ。母ユリアは皇后ユリア・ドムナ(セプティミウス・セウェルスの妻)の姪にあたる。母ユリアはエラガバルスが、従兄に当たるカラカラ帝の実子であると主張した。
彼の本名は
- ウァリウス・アウィトゥス・バッスス(Varius Avitus Bassus)
と呼ばれ、後に
- ウァリウス・アウィトゥス・バッシアヌス・マルクス・アウレリウス・アントニウス
- (Varius Avitus Bassianus Marcus Aurelius Antoninus)
という名になる。
『エラガバルス』という名はシリアのエメサ(現在のホムス)で崇拝された太陽神「エル・ガバル」(El-Gabal)に由来する。これはギリシアの太陽神ヘーリオス(Helios)が中東で土着化した神である。もう一つの名前『ヘリオガバルス』(Heliogabalus)はそのラテン語化した名前である。彼の治世はほんの数年ではあったが、ローマの神々をないがしろにしたり、また性的な趣向で逸脱した面があった。その支配はしばしば退廃の代名詞とされ、彼にちなむ小説や絵画が19世紀以降多く製作されている。
[編集] 宗教
ヘラガバルスはまた、神々のような子供を授かりたいという理由から、処女として貞節を守るウェスタ神の巫女と結婚した。一説には強制的にさせたといわれている。ウェスタに仕える巫女が男性と関係を持った場合、生きたまま穴に埋められるというのが古来の習わしだったので、この事はローマの人々を驚愕させた。
また220年、彼は自らをヘリオガバルスの最高司祭と称して、この神を帝国の最高神とすることを図り、中東から聖なる石を持ってこさせ、それをローマの神々が宿るパラティーノの丘の東側に置き、神殿を築かせた。現在でもその基礎は残っている。
[編集] 男色
エラガバルスの性的な趣向、性自認に関しては様々な議論がなされてきた。まずエラガバルスは男女合わせて5人以上と結婚あるいは性的関係を繰り返している。
女性との関係は、最初に親衛隊長官の父を持つユリア・コルネリア・パウラ、離婚後には前述のウェスタ神の巫女ユリア・アクィラ・セウェラと結婚。1年後、彼女を捨てて賢帝マルクス・アウレリウスの子孫アントニア・ファウスティナと結婚、彼女はすでに既婚であったが、夫を処刑して結婚した。そしてその年の暮れに再び離婚すると、またウェスタの巫女セウェラとよりを戻している。
またカッシウス・ディオは「エラガバルスは奴隷である自分の馬車の御者とも肉体関係にあり、彼の一番の好みはこの小アジアからの金髪の奴隷ヒエロクレスであった」と伝えている。ヘラガバルスは顔に化粧を厚く塗り、また自分をヒエロクレスの妻、愛人、后と呼ばれるのを好んだと言われる。このような記述から現代の歴史家は、彼を性同一性障害ないしトランスジェンダーだったと判断している[要出典]。
[編集] 親衛隊による殺害
ヘラガバルスの逸脱した性格は、自ら祀る太陽神の祭儀を他人に強要するにまで至り、ここに祖母ユリア・マエサはヘラガバルスの廃位を画策、そしてまだ少年のアレクサンデル・セウェルスを擁立する。ヘラガバルスはこれに対してアレクサンデルの処刑を親衛隊に命令するが、222年、ユリアより賄賂を受け取った親衛隊によって逆に殺害された。彼の遺体はテヴェレ川に投げ込まれたと言う。
[編集] 外部リンク
- エラガバルス@古代ローマ
- エラガバルスローマ皇帝変人史
- 皇帝エラガバルスとりかへばや物語
- Entry on Elagabalus from De Imperatoribus Romanis
- Antoninus Elagabalus and his relationship with the Senate
- Appendix C of The Transsexual Phenomenon by H. Benjamin mentioning Elagabalus as transsexual
- Biography of the life and reign of the Roman Emperor Elagabalus
- Life of Elagabalus (Historia Augusta at LacusCurtius: Latin text and English translation)
- Historia Augusta, English translation at Heliogabby
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