フライ・フィッシング
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フライ・フィッシングとは、フライを使って魚を釣ること。日本における毛針を使った釣りと異なるのは、フライロッドというこの釣法専用の竿とフライラインという特殊なラインを使い、至近距離から中遠距離までのポイントに自在にフライを投げ入れることができる点である。起源はイギリスにあるとされる。
フライ・フィッシングには4つの要素がある。
- キャスティング
- フライフィッシングの中核をなす。ラインの重さによってフライを飛ばすことがこの釣の要諦である。
- ファイト
- ヒットした魚を釣り上げる技術のことである。他の釣にくらべ、フライフィッシングのこの工程は非常にエキサイティングなものとなる。オモリなどの邪魔者なしに直接的に魚とやり取りが出来るためである。
- タイイング
- 毛ばりを作成することである。毛ばりのパターンは数百万とも言われ、研究しつくせぬ分野である。
- 自然観察
- この釣の哲学そのものである。現在の水棲昆虫の状況を確認し、魚が捕食していると思われる対象に近いフライを選ぶことである。
いずれの分野も一朝一夕で身につくものではなく、奥の深い趣味と言えるが、この釣法の独特の技術と趣味性から、一般的には敷居が高いという面もある。
なお、使用するフライに応じてドライフライフィッシングとウェットフライフィッシングに大別することが出来る。
ドライフライフィッシングとは、水面に浮かせたフライを使用した釣り方を指し、ウェットフライフィッシングとはフライを水中に沈めて使う釣り方を指す。但し、水中にフライを沈める釣り方ではあるが、ニンフと呼ばれるフライを使用する場合は一般にウェットフライフィッシングとは呼称せず、ニンフフィッシングという。
フライフィッシングではサケ科の魚が主なターゲットになる事が多い。そのためサケ科の魚が生息出来る河川や湖沼での釣をする場合が多い。
最近では管理池や海でフライフィッシングを楽しむムーブメントもある。
プロのフライフィッシャーとして、岩井渓一郎がTV・雑誌等のメディアでフライフィッシングの紹介をすることが多い。
元・かぐや姫、風のメンバーで1979年以降はソロとして活動している伊勢正三の趣味として、テレビで紹介されたこともある。
日本古来の毛針を使う「てんから釣り」がある。水面を打ち返しながら魚を誘う。対象魚は、ヤマメ、イワナなどのマス類。
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[編集] タックル
[編集] 必須タックル(最低限必要なもの)
- ロッド
- リール
- フライライン
- リーダー(フライラインの先に付ける糸)
- フライ(毛鉤)
[編集] 必要なタックルや道具
- ティペット(リーダーの先に付ける糸)
- フロータント(フライやリーダー、フライラインを浮かせる為)
- フィッシングベスト類(フライボックスなどを入れる上着。移動の多いフィッシングにおいては必須とも言える)
- ウェーダー(和名:胴長。フライフィッシングにおいては必須とも言える)
摘要:他にも状況や釣法、対象魚によって様々なタックルが必要。
[編集] ロッド、リール、フライラインのサイズ
ロッド、リール、フライラインのサイズは○番、#○と呼ぶ。なお、呼び方は違っても意味は同じである。 ロッド、リール、フライラインのサイズは数字が大きくなればなるほど大型になり、小さいもので#0(メーカーによっては#000というものもある)、最大では#15まである(さらに大きい番手もある可能性がある)。
[編集] 番手と主なフィールド・狙う魚種
- 1以下:藪沢・渓流などの近距離かつ無風。小型のヤマメなどがメイン。
- 2~4:渓流での中・近距離。ヤマメ、イワナなどのサケ科がメイン。
- 4~6:中・大河川・湖での中・遠距離。ニジマスなどの比較的大型になる魚種がメイン。
- 6~8:湖での中・遠距離。大型のニジマス・ブラウントラウト・アメマスなどがメイン。
- 8~10:サーモンやソルトウォーターでのシーバスなど、大型魚がメイン。
- 10~15:シイラ、カツオ、ツナなどの超大型魚がメイン。
ただし、人によっては上記に当てはまらない場合もある。
近年ではブラックバスをフライフィッシングで釣る人も多くなってきた。バス狙いのフライをバスフライと呼ぶ。 バス狙いでのタックル番数は8番付近が多いようである。
[編集] フライラインの仕様
フライラインには太さ以外に仕様があり、テーパーデザインや、ウェットフライ用では沈下速度などによって記載が変わる。
フライラインのパッケージには仕様を示す記号がある。
[編集] フライラインの仕様の名称の意味
[編集] 1.テーパー形状
- DT:ダブルテーパーと呼び、フライライン全体のテーパーが左右対称になっているものを言う。
テーパーの無い太い中間部が長いためロールキャストやメンディングが楽に行える。
超遠投には不向きだが、使用していくうちに先端部が痛んできた場合に反転させ使用する事ができる、
フライラインを中心でカットし使用したり、などコスト面で優位である。(遠投が出来ない訳ではない)
- WF:ウェイトフォワードと呼びフライラインの基本的な仕様である。
テーパーが左右非対称で、一方が太く、一方が細い形状になっているため遠投に向いている仕様である。
(使用する際は太い側を飛ばす側に使用する)
- ST:シューティングテーパー、またはシューティングヘッドと呼び、WFラインから細い側を取り除いた形状。
このラインは、ライン後端にモノフィラメントなどの細いラインを接続し使用する、超遠投用ラインである。
[編集] 2.フライラインの太さ
この数字はロッドなどと同じ意味合いである。購入の際はロッドやリールの番手に合ったサイズを購入する。
[編集] 3.使用目的との適合
- F:フローティングという意味で、主にドライフライで使用するフライラインで水面に浮くタイプ。
- S:シンキングという意味で、ウェットフライで使用するフライラインで、水中に沈下するタイプ。
- I:インターミディエイトと呼び、シンキングに属するフライライン。沈下速度が一番遅いタイプ。
[編集] 4.シンキングラインでの沈下速度
ウェット用での表記であり、ドライ用では表記しない。インターミディエイトは沈下速度毎秒2~5cmである。
- SⅠ:スローシンキング。沈下速度毎秒5~6.7cm
- SⅡ:ファーストシンキング。沈下速度毎秒6.7~10cm
- SⅢ:エクストラファーストシンキング。沈下速度毎秒11.8~13cm
- SⅣ :スーパーファーストシンキング。沈下速度毎秒15.4~18.2cm
上記これらの記号の組み合わせにより、ラインの性質、使用目的などが細かく分類されていて、必要に応じてラインを選ぶことになる。
DT-3F、WF-5F、WF-6S、WF-9SⅢなどと商品パッケージに記載されている。
[編集] フライ(フック)のサイズ
フライ(フック)のサイズはロッドなどと呼び方は同じであるが意味合いが逆で、数字が大きくなればなるほど小型になる。
小さいもので#32(それ以下もある可能性がある)、大きなもので#4/0(#0の更に4つ上)まである(さらに大きい番手もある可能性がある)。#32ともなると米粒以下の大きさである。
[編集] フライサイズとタックルサイズの適合
- 0以上:ロッドサイズ#10~15。
- 1~6:ロッドサイズ#7~10。
- 6~12:ロッドサイズ#5~7。
- 12~20:ロッドサイズ#2~5。
- 18~24:ロッドサイズ#1以下~1。
ただし、人によっては上記に当てはまらない場合もある。ロッドの番手が該当していなくても近いサイズであれば使用可能で、問題は無い。
[編集] リーダー・ティペットのサイズ
リーダーとティペットのサイズは上記タックルとはまた別の呼び方で、○Xと呼ぶ。
意味合いはフライと同じで、数字が大きくなればなるほど小型(細く)なる。
小さいもので10X(それ以下もある可能性がある)、大きなもので04X(0Xの更に4つ上)まである(さらに大きい番手もある可能性がある)。
あくまでも太さの目安であり強さとの関係はない。
[編集] リーダーサイズとタックルサイズの適合
- 0X以上:ロッドサイズ#10~15。
- 1~3X:ロッドサイズ#7~10。
- 3~5X:ロッドサイズ#5~7。
- 5~7X:ロッドサイズ#2~5。
- 7~10X:ロッドサイズ#1以下~1。
ただし、人によっては上記に当てはまらない場合もある。ロッドの番手が該当していなくても近いサイズであれば使用可能で、問題は無い。
フローティングラインには9ft以上、シンキングラインには7.5ft以下がリーダー長の目安。
また、一般的なリーダーは中間部にテーパーがかかっており、元は太く先端部は細くなっている。
太い側をバット(BUTT)、中間をミドル(MIDDLE)、細い側をティップもしくはティペット(TIP or Tippet)と呼ぶ。
製品によってバット、ミドル、ティップのリーダー全体に対する割合が工夫してあり
この割合によって使用目的や使いやすさなども決まる。