パワーボム
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パワーボム(Power bomb)はプロレス技のひとつ。
いわゆる「がぶり」の体勢から、両膝(もしくは太もも)で相手の頭を挟む。そこから両手を相手の胴の前でクラッチし、相手の身体を自らの頭上まで跳ね上げ、相手の体を反転、そこから相手を背面からマットに叩きつける。多くの場合はそのままエビ固めでピンフォールの体勢に持ちこむ。
技を掛ける形からスタンプホールドと呼ばれることもある。この技から「ボム系」と呼ばれる派生技が多く生まれた。レスラーによってはこの技がかかるかかからないかの攻防が大きな見せ場となる。
総合格闘技や組み技系格闘技ではバスターと呼ばれ、三角絞めに来る相手をパワーボムの要領で叩き付ける場面がしばしば見られる。柔術では禁止している大会が多い。
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[編集] 技の遍歴
技の原型はルー・テーズが使った「リバース・スラム」という技で、今で言う投げっ放し式に近かった。日本での初公開は1968年1月17日、宮城県スポーツセンターにおける豊登戦。頑丈な豊登が失神するほどの威力であった。「テーズ式パイルドライバー」と呼ばれることがあるが、テーズ自身はパイルドライバーを嫌っていたので、この呼び名はあまり適当ではないかもしれない。その後テリー・ゴディにこの技を伝授する際、叩きつけたあとそのままエビ固めの体勢ですぐカウントを奪えるような形を指導し、現在のパワーボムの形になった。
[編集] 名手
前述のゴディに加え、天龍源一郎が使い始めたあたりから使い手が増えた(日本で最初にゴディのパワーボムを受けたのは天龍である)。ゴディが片膝をつく形で落としていたのに対し、天龍は相撲の股割を応用して両足の裏をつけたまま膝を曲げてしゃがみこむ形にし、落下のダメージよりも体重を乗せてがっちりエビで固めることの方を重視した。天龍はこの技でジャイアント馬場、アントニオ猪木の両巨頭から3カウントを奪い、ジャンボ鶴田からは三冠ヘビー級王座を奪っている。女子ではジャンボ堀が1982年ごろから毎試合のように披露。新技の研究に熱心だった堀は、叩きつけるのではなくそのまま後方に投げ飛ばす「ジャンボ・スープレックス」も開発した。
現在では派生技が多くなっており、原型のまま使っているのは天龍、川田利明、越中詩郎ぐらいである。
総合格闘技ではPRIDEでクイントン・"ランペイジ"・ジャクソンがKO勝ちを上げているほか、ボブ・サップがアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラに仕掛けたシーンが衝撃場面として語られることが多い。
[編集] 派生技
持ち上げ方・叩きつけ方その他挙動にアレンジを加えることにより、多くの派生技が開発された。
- 侍パワーボム
- 越中詩郎の得意技で、相手を肩の上に持ち上げてから数秒溜めを作る滞空式で、相手をフォールするとき両拳を突き上げ勝利を誇示する。「侍」は越中がメキシコ遠征でのリングネームが「サムライ・シロー」だったことに由来する。
- 念仏パワーボム
- 相手の頭を腿に挟んだ後、両手を相手の胴の前でクラッチする前に念仏を唱えるかのように手を合わせる。みちのくプロレスの新崎人生と、黒師無双が使用する。
- 餅つき式パワーボム
- 相手を叩きつけた後、背筋力で持ち上げて(実際は対戦相手が手をつかんで自ら上体を起こす)さらに数回落とす。連発式パワーボムとも。元祖はランス・ストームで、その後クリス・ジェリコ・高岩竜一が使用。WWEのブロック・レスナーも使っていた。
- サンダーファイヤー・パワーボム
- 通常のパワーボムのように相手を自らの頭上にまで持ち上げるのではなく、相手を自らの肩の上あたりに担ぎ上げてからのパワーボム。大仁田厚が開発し、ザ・グレート・サスケ他インディー系のレスラーに使い手が多い。
- ライガーボム
- 獣神サンダー・ライガーが使用する技で、相手を落とす際にジャンプして自分の足を開脚し尻餅する形で着地、その時に同時に空中で開脚した脚を相手の腕に引っ掛ける。リングの対角線上をランニングしてから使うこともあり、この場合は「ランニング・ライガーボム」あるいは「サンダー・ライガーボム」とも呼ばれる。使い手は多く、様々な名前で呼ばれている。プラム麻里子が尾崎魔弓にこの技を受け、日本プロレス史上初の試合中の事故死を招いた技としても有名。
- シットダウン・ジャンピング・パワーボム
- 相手を落とす際にジャンプして大きく開脚しながら尻餅をつくようにして落とし、固める際自らはマットに尻をつけた状態になる。バティスタが「バティスタ・ボム」の名で、田上明が「ダイナミック・ボム」の名で使用する他、嵐、平田淳嗣、KENTA、リッキー・マルビンらが用いる。よくライガーボムと混同されるが、ライガーボムは相手を叩きつける際に相手の両腕を足で固めるのに対し、シットダウン・ジャンピング・パワーボムはは脚で相手の腕を固めない。
- デビル雅美もこの形に近いパワーボムを使うが、相手の両太腿を抱え込むようにして持ち上げる独特のやりかたであり、デビル本人によればパワーボムと同時並行的に進化した別の技だとしている。
- スパイラルボム
- 相手を持ち上げたあと横に回転しながらジャンプして尻餅する形で落とす。大谷晋二郎が新日ジュニア時代に好んで使っていた技で、名前が決まる前は旋回式ライガーボムと呼ばれていた。受身が取りにくいと言われている。
- タイガードライバー
- リバースフルネルソンの形からダブルアーム・スープレックスのように相手を持ち上げ、相手の両腕を放すと同時に相手の体を反転させて相手の胴を両腕で掴む。そしてシットダウン・ジャンピング・パワーボムの形で落とす。三沢光晴が2代目タイガーマスク時代に使っていたためこの名がついた(初代も「タイガードライバー」という技を使っていたが、これは今で言うフロントネックチャンスリーであり、別の技である)。神取忍の得意技でもある。この技のバリエーションに、ダブルアーム・スープレックスの要領で体勢持ち上げた後に腕のロックを離さず、そのまま垂直に落とす「タイガードライバー'91」があるが、受身が非常に取りにくく危険な為、開発者の三沢も本当に大一番の試合以外では使わない。
- リバース・タイガードライバー
- タイガードライバーの要領で抱え上げた後、相手の腕を離さずにジャンプして自らの足を開脚、腕をロックしたまま相手を前面からマットへ叩きつける。効果からみるとパワーボム系というよりも盤面砕き系の技といえる。ダブルアーム式シットダウン・フェースバスターとも言い換えることもできる。大日本プロレスの山川竜司がデスマッチのフィニッシュホールドとして用い、現在は葛西純が受け継いだ。
- ドクターボム
- 相手の頭を自分の股に挟んで持ち上げるのではなく、横からの胴クラッチ(アマチュアレスリングでリフトを仕掛けるような体勢)から正面に持ち上げるパワーボム。「殺人医師」の異名をとったスティーブ・ウィリアムスの得意技であったことからこの名がついた。ガットレンチ・パワーボムとも。
- ターボドロップII
- サイドスープレックスをかける体勢から旋回しながら肩の上まで持ち上げ、前方に放り投げる。かけられた相手は水平方向に旋回しながらマットに叩きつけられる。ジム・スティールの得意技。
- ラストライド
- 二段階式超高角度パワーボム。ツームストーン・パイルドライバーがWWF(現WWE)によって禁止技とされたため、それに代わって開発されたジ・アンダーテイカーの技。一度抱え上げた後で相手のタイツの両サイドを握り、さらにもう一段高い位置に高々と抱え上げてから叩き落すフィニッシュムーブ。日本では、ビッグボスMA-G-MA(現・マグニチュード岸和田)、GAINA、スーパー宇宙パワー、諏訪魔が主な使い手。
- スプラッシュマウンテン
- 胴の前で両手をクラッチしてから高々と抱え、ハイジャック・バックブリーカーのように脇の下に手を差し入れる形で相手と背中合わせになり、ここから急角度のシットダウン・ジャンピング・パワーボムを打つ。ダイナマイト・関西がアジャ・コングを倒すために開発した技。2代目ブラックタイガー(エディ・ゲレロ)もこの技を「ブラックタイガーボム(B.T.ボム)」として使用している。
- セガのアーケードゲーム「バーチャファイター」のジェフリー・マクワイルドが使用した事で一躍有名になった。
- さらに派生技として、この技の原型となった投げっぱなし式の「通天閣スペシャル」や雪崩式の「ダイハード関西」、ツームストンパイルドライバーのように両膝をつく形で前方に投げ捨てるスコット・ホールの「アウトサイダーズ・エッジ(レイザーズ・エッジ)」およびマイク・バートンの「バート・バッシュ」、つんのめるようにして落とす新崎人生の「高野落とし」がある。
- ネック・ハンギング・ボム
- ネック・ハンギング・ツリーの状態からシットダウン式パワーボムに持っていく。TARUは「T-クラッシュ」、ジャイアント・バーナードは「ボルドー・ボム」の名称で使用している。
- ミラクルエクスタシー
- チョークスラムの要領で相手の喉元をつかんで持ち上げ、そのままシットダウン式パワーボムに持っていく。MEN'Sテイオーのオリジナル技。
- パワージャック
- ジャックナイフ式パワーボム、パワーボム・ジャックナイフとも。パワーボム後に相手の足を離さずに前方回転し、ジャックナイフ固めに移行する。流れるような美しさがある技。小橋建太が若手時代に使用していた。
- ターンバックル・パワーボム
- パワーボムの要領で持ち上げ、エプロンコーナー(ターンバックル)にそのまま打ち付ける危険な技。小橋建太が開発した技。
- 雪崩式パワーボム
- コーナー最上段からのパワーボム。術者がコーナーから飛び降りながらパワーボムを掛ける。コーナーからの落差によりダメージが増大する。ワイルド・ペガサスがこの技で獣神サンダー・ライガーを失神させ、みるもの全てを驚愕させた。他にはザ・グラジエーターが「カミカゼ・アッサムボム」として得意としていた。雪崩式フランケンシュタイナーを失敗したときに「雪崩式一人パワーボム」ということもある。
- スーパーパワーボム
- スリープラトン雪崩式パワーボム。技を掛ける選手がコーナー最上段に座って、残り2選手が相手選手を抱え上げて高角度パワーボムの体勢になるようアシストし、コーナーから飛び降りながらパワーボムを掛ける。コーナーからの落差と、パートナーのアシストによる落下速度の上昇により、大きなダメージを与える。故冬木弘道・邪道・外道組が得意とした。上記雪崩式パワーボムの事を指す場合もある。
[編集] カウンター
パワーボムは決まれば大きなダメージを与えることができるが、それだけに防御策も数多く開発されている。また、逆にこれらの技のカウンターとしてパワーボムを行うこともある。
- パンチ
- 持ち上げられた際に頭にパンチ、もしくは顔面をかきむしる。地味なせいか最近では見られない。持ち上げられる寸前に巧妙に凶器を手り、持ち上げられてから凶器で頭部を攻撃することも。
- フランケンシュタイナーまたはウラカン・ラナ・インベルティダ
- 相手が頂点まで持ち上げた隙をついて技を実行し、投げ捨てるかそのままフォールに持ち込む。ジュニアレスラーや膝を痛める前の武藤敬司が使っていた。三沢はウラカン・ラナをパワーボム返し専用の技で使用している(大抵、敢行する相手は川田)。
- ヘッドシザースホイップ
- 相手が頂点まで持ち上げた時に技を実行し投げ捨てる。三沢が田上に対して、棚橋弘至がジャマールに対して披露したことがある。
- 着地からの背面攻撃
- 相手が頂点まで持ち上げた勢いを利用して隙をついてそのまま相手の背後に着地。そのままジャーマン・スープレックスやスリーパーホールド等の背面技をかける。
- 毒霧
- 持ち上げられた際に毒霧を吹き付けて、相手が怯んでいる間に脱出またはフランケンシュタイナーを仕掛ける。グレート・ムタやタジリの得意パターン。
- リバーススープレックス
- 相手が持ち上げようとするのをこらえて、逆に背筋を使って体を反り後ろに放り投げる。投げっぱなしにせずにそのままフォールに行くこともある。
- 回転エビ固め
- 相手が頂点まで持ち上げたときにその勢いを利用して回転し、エビ固めを仕掛ける。
- 三角絞め
- パワーボムを食らった後に相手の腕を捕らえ、そのまま絞め上げる。ただしまともにダメージは受けてしまうため、それに耐え得るだけの強靭な体力が要求される。また、投げ落とされた瞬間の体勢を維持してしまうため、ピンフォールされてしまうリスクを負う。