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キーボード (コンピュータ) - Wikipedia

キーボード (コンピュータ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

IBMのModel M
IBMのModel M

キーボードは、コンピュータへの入力装置の一つ。コンピュータの操作全般に用いられる。GUIを使用する場合は全ての操作がキーボードで行えない場合が有るため、その際は文字の入力、項目やカーソルの移動、特定の操作の実行など、ユーザからの直接的な入力を担う。ポインティングデバイスが存在する場合は、特に文字入力に使われることが多い。

キーボードは、コンピュータ用語では「KB」と略される場合も見られるが、同じくコンピュータ用語である「キロバイト記憶容量単位)」や「ナレッジベース」と混同を避ける上で注意が必要である。

目次

[編集] 概要

一般的なキーボードの形状は、長方形の板状の筐体におよそ百前後のキー)が設置され、キートップには文字、記号、機能等が印字されている。キートップを押したり離したりする事によってスキャンコードがコンピュータへと送信され、これによりコンピュータの操作を行う。材質、配列、形状、インターフェイス、また用途や品質により様々な種類が存在する。

元来は、電動タイプライターの操作部をそのまま借りてきたものであり、最初期のコンピュータで用いられたパンチカードやロジック配線パネルに代わるものである。その後、端末動作用のコントロールキーファンクションキー、オルタネート(ALT)キーなどが加えられて、現在の形になっている。これらは内部に電気的スイッチをもち、場合によってはそれをキーボードの内部的に処理して、各々のキーに設けられた単純なスイッチの開閉という信号から、より少ないケーブルで入力情報を伝えるための電気信号に変換する集積回路を持っている。

[編集] キーボードの種類

[編集] 配列による分類

コンピュータ用キーボードは様々な種類があり、キー配列一つ取っても多くの種類に分類する事ができる。日本では日本語入力のために全角/半角キー、変換キー、無変換キー、カタカナ/ひらがなキーなどの漢字変換用キーが追加された旧JISキーボードが主に使われているが、親指シフトキーボードをはじめとする、特に日本語入力のための配列を工夫したキーボードもある。

なお、使用字種の少ない米国英語入力のためには、欧州より文字キーの少ない米国配列のキーボードが使われている。米国配列のキーボードでは、アットマークコロン引用符等、記号の配列がJISキーボードとは一部異なる。ちなみに米国配列の英語キーボードでも日本語の入力は十分可能である。文字キーの個数がJISキーボードより少ないため、仮名の配列も一部異なる。一部では、日本語ユーザでもあえて米国配列のキーボードを使用する者も存在する。最初に触れた米国配列のキーボードでタッチタイピングを覚えたり、キーの少ないシンプルさが好まれたりする事等がその理由である。

[編集] テンキーの有無

テンキーレスのキーボードのひとつ Realforce91UBK
テンキーレスのキーボードのひとつ Realforce91UBK

JISキーボードでも、テンキーが右側に別にある物をスタンダードキーボード、テンキーがアルファベットの文字列中にある物(テンキー部のない物)をデータエントリーキーボードと呼ぶ事もある。また、前者をフルキーボード、後者をテンキーレスキーボード、等と呼ぶ事もある。

前者は、主にデスクトップ型パソコンやコンピュータ端末などで使用され、後者はノートパソコンや省スペースを目的とする一部のデスクトップパソコン、データ入力を専門とするパソコン、コンピュータ端末などで使用される事が多いが、テンキー部の有無で用途が区別される事はあまり無い。

テンキー部の省略されたテンキーレスキーボードは、通常のフルキーボードに比べ種類が少ないが、その中でもフルキーボードから純粋にテンキー部を取り除いた物[1]と、少しでも全体をコンパクトにまとめるために独自の配列を採用した物[2]の二種類に大別される。どちらにせよ、テンキーの存在はポインティングデバイスの設置位置を遠くするため、テンキーの無いキーボードは一部のユーザに重用されているが、個人用途では2007年1月現在でも未だニッチの域を出ていない。PCサーバを19インチラックに搭載する場合、設置スペースの関係からテンキーレスキーボードを用意することが多い。数値入力を頻繁にする場合は、USB接続の外付けテンキーを接続すると、効率が向上する。

[編集] 様々なキーボード

エルゴノミクスキーボード
エルゴノミクスキーボード

また、KinesisのContoured Keyboardに代表される、人間工学に基づいてタイプする人の負担を減らすことを重点に置いた、いわゆるエルゴノミクスキーボードや、Frog PadやCut Keyのように片手での入力を行なうことを前提としたキーボードもある。

ゲーム用のコントローラゲームパッド)の中には、ゲーム用デバイスであるにもかかわらずゲームコントローラの信号ではなく、キーボードと同じキーコード信号を出し、OS側からは一般のキーボードとして認識される物もある。これらは特別なドライバをインストールする必要が無く、またゲーム用の接続ポートが占有されないなどの利点があるが、USBの普及やゲーム用デバイスがOS標準でサポートされるなどを理由に、近年ではあまり見られなくなっている。中にはマイクロソフトの「Strategic Commander」のような特殊な形状をしたものもあった。

最近ではマウスにハードウェアマクロを搭載するため、マウスをUSB接続にし、内部的にキーボード信号を出して「マウス+キーボード」の複合デバイスとして認識させる場合もある。この場合いったんマウスに設定を登録しておけば、他のPCでドライバレスで同じ動作を可能に出来る。

また身体障害者向けに一部キー機能を抜き出した入力装置も見られる。特に、ソフトウェアキーボード(スクリーンキーボード)は、キーボードの機能をソフトウェアで実現したもので、画面上にキーボードの形を表示し、ポインティングデバイス操作によるカーソルや、タッチスクリーンとペンなどで各キーを指定して文字入力を行なう。音声出力や検索機能を搭載できるカスタマイズ性が、特徴のひとつで、初心者や障害者支援の一環にもなっている。

この他、ブックを搭載し、ページをめくる事でキーボードキーの意味がプログラムにより変わるインテリジェントキーボード(鉄道駅などのみどりの窓口発券端末など)、特殊なペンによりキー入力を行うペンタッチキーボード(PDAなどで使用)などがある。

[編集] キーボードの機能

今日、一般に普及しているキーボードは、昔のタイプライターの時代から継承してきたものや、コンピュータの時代になってから新たに追加されたものなど、数多くの機能を備えるようになっている。

[編集] オートリピート

開始や間隔の設定
開始や間隔の設定

キーを押しっぱなしにした場合、そのキーに対応するコードが連続して入力(送信)される機能である。最初に押した時点からn秒後、m秒間隔で繰り返しするというような設定を行なえるキーボードもある。ソフトウェア的にシミュレートしたり、ソフトウェア側から(キーボード単独でなく)設定できるものもある。ほとんどのOSでは、これらの間隔を自由に設定出来る。例えば、Windowsにおいては、コントロールパネルでキー入力しきい値と入力間隔を設定できる。

[編集] シフトロック

ロックされている間は、キーボード上の全てのキーがシフトキーを押したままの状態になる特殊なキーである[3]。この機能の起源は機械式のタイプライタに見る事が出来、シフトロックキーが有効になっている間は文字通り物理的にシフトキーがロックされた状態となるものであった。通常コンピュータ用のQWERTY配列キーボードでは用意されている事は少ないが、フランス語圏で多用されるAZERTY配列等やコモドール64などを含む比較的古いもの等にはシフトロックキーが搭載されている。

QWERTY配列のキーボードにはシフトロックキーの代わりにキャップスロックキーが用意されている。ただし、何らかの理由で同時に押すことが出来ない状況があり得るので、例えばMacOS/OSXやWindows等を含む一部のOSやウィンドウマネージャの一部には、キャプスロックキーにシフトロックキーを割り当てる事が出来る機能がある。

[編集] Caps Lock

Caps Lock(キャップスロック)キー、キャピタルロックキーは、キーが有効になっている間、コンピュータに入力される文字を小文字から大文字に変える為のキーである[3]。CapsとはCapital lettersの略、すなわち英字の大文字の意味である。

その由来は、昔のタイプライターの時代まで遡る。

昔のタイプライターのキーは非常に重かったため、シフトキーを押しながら文字キーを打鍵するという動作は、身体的に非常に負担のかかるものであった。CapsLockは、この負担を緩和するために作られた機能である。

[編集] Num Lock

PCのキーボードでは、NUM Lock(ナムロック)というキーがある。この場合のNumはNumeric(ニューメリック、数字の)の略であり、これをオンにした場合には…

  • テンキー付きキーボードでは右側のテンキーによる数字入力が可能になる(オフ状態ではカーソル上下動などの働きをする)。
  • ノートパソコンなどのテンキーなしキーボードでは、右半分の一部のキーが数字入力モードに変わる(オフ状態では通常どおり文字が入力できる)。

[編集] Scr Lock

Scr Lock(スクロールロック)キーは、いまだにPCのキーボードに存在するが、本来はIBM製メインフレーム(汎用機)用の専用端末である「3270」などのキーボードに存在し、コンソールとして使用している場合の画面スクロールの制御(オン状態で自動スクロールが停止し、矢印キーで一画面ごとにロールアップ・ロールダウンできる)を行うものである。なお「Pageup」「Pagedown」キーには、「PF8」「PF9」(現在の「F8」、「F9」)キーが相当するので、別物である。IBM PC/ATの後期キーボード(IBM 101拡張キーボード)より採用され、各社の「3270端末エミュレータ」などで使用された。OADG日本語キーボードでも規定されている。

現在ではPC起動時のBIOS画面で、情報を詳しく見たい時にScrLockキーを押すと画面が停止するなどの利用がされている。また、オン状態で「Pageup」「Pagedown」を押すとIEなどのブラウザではほぼ一画面ごとの移動ができる。現在のWindows環境では機能するソフトはほぼ皆無であるが、Excelではカーソル位置を固定してシートの方をスクロールする切り替えとなっている。

[編集] SysRq

SysRq(システムリクエスト)キーは、いまだにPCのキーボードに存在するが、本来はIBM製メインフレーム(汎用機)用の専用端末である「3270」などのキーボードに存在し、アプリケーション画面を使用中に、システム系コマンド入力モードに切り替えるためのものである(MVS系のTSO使用時にはVTAMコマンドが送信可能になり、VM系のCMS使用時にはCPコマンドが使用可能となった)。IBM PC/ATの後期キーボード(IBM 101拡張キーボード)より採用され、各社の「3270端末エミュレータ」などで使用された。OADG日本語キーボードでも規定されている。

現在のWindows環境では機能するソフトはほぼ皆無である(一部のディスプレイ切替装置用ソフトウェアで使用されている)。

[編集] PrtSc

Prt Sc(プリントスクリーン)キーは、いまだにPCのキーボードに存在するが、本来はIBM製メインフレーム(汎用機)用の専用端末である「3270」などのキーボードに存在し、現在端末に表示されている情報を印刷するようにホストに対して要求する信号を送信するためのキーである。IBM PC/ATの後期キーボード(IBM 101拡張キーボード)より採用され、各社の「3270端末エミュレータ」などで使用された。OADG日本語キーボードでも規定されている。

現在のWindows環境では、現在画面に表示されている情報をビットマップイメージとしてクリップボードに格納する機能が割り振られている。なおALT+PrtScではアクティブなウィンドウの画像のみが格納される。

[編集] ベル音/ビープ音

機械式キーボードにおいては、右端まで来ると、その旨を通知するためのベルが鳴る。コンピュータ用のキーボードは、一部の機種(Sunのキーボードなど)において、キーボード内にベル音をならすためのスピーカーがついている場合がある。この場合、本体側からBelキャラクタ(ASCIIで07H)を送信することで音が鳴る。但し、本物のベルではないのでビープ音という場合がほとんどである。

[編集] クリック音

機械式キーボードにおいては、キーを打鍵するたびに機械的な動作に応じて音と手応えがするが、電気式のコンピュータ用のキーボードではほとんど音がしない。そのため、キーの打鍵がされたかどうかを確認するために、打鍵するたびごとに音を発生させる仕組みが用意されている場合がある。これをクリック音という。音の発生機能そのものは前述のベル音と同じである。

しかし一部の業務用やマニア向け仕様のキーボードの中には、スイッチ部分に物理的にクリック感を生み出す物も見られ、好みで選択されている。中にはこれに特化して、激しい動作音のするものも見られる(後述)。

[編集] ロールオーバー

電気式のキーボードは、機械式キーボードとは違い、同時に複数のキーを押すことが物理的に可能であるが、内部の電気回路的な制約により、押下したキー全ては入力できないことがある。この際、何文字まで同時にキー入力を受け付けるかを表わすのがロールオーバーである。たとえば3キーロールオーバーとは3キーまで同時に押しても入力可能ということを指し、Nキーロールオーバーとはどのキーを同時に押しても全て入力されることを指す。現在のキーボードはコントローラーによっていくつかの種類があり、安価なキーボードの場合には2~3キーロールオーバー、高価なキーボードの場合には疑似Nキーロールオーバーや完全Nキーロールオーバーとなっている。USBキーボードはUSB HID規格で定義されているboot protocolがほとんどの場合使われるが、その場合そのフォーマットの構造からくる制約により、完全Nキーロールオーバーの機種でも、同時押しを認識されるのは最大6キーまでとなる(キー自体は入力されるが、6キーより先は最初に押したキーから順に指を離した扱いとなる)。

この機能は主に複数同時押しを行うゲーマー向けキーボードで宣伝される事が多い。たとえばダイアテックから発売されているマジェスタッチ、マジェスタッチリニアには、特別バージョンとしてNキーロールオーバーモデルが通常モデルとは別に存在する。大抵この機能を搭載したキーボードは1万円以上するのだが、シグマA・P・OがNキーロールオーバーではないものの、限定エリア内での複数キー同時押しを保証したキーボードを発売し、FPSゲーマー向けのエントリーモデルとなっている。

[編集] 主なNキーロールオーバー対応キーボード

  • SteelSeries「SteelSeries 7G」
  • 東プレ「Realforce」シリーズ
  • ダイアテック「マジェスタッチ N-Key rollover」シリーズ
  • PFU「Happy Hacking Keybord Professional」
  • Logitech「G15 Gaming Keyboard(初代)」, 「G11 Gaming Keyboard」
  • Kinesis「Kinesis Contoured Keyboard」, 「Kinesis Maxim Ergonomic Keyboard」

[編集] 表示機能

光るキーボードの例
光るキーボードの例

特殊なキーボードには特殊なステータス表示機能がついている場合がある。PC用のキーボードでは、一般的には、キャップスロック状態、ニューメリックロック状態、スクロールロック状態を3つのLEDによって表す表示機能が付いている。LEDの色はたいてい緑色か橙色であるが、青色が使われているものもある。PCで一般的に使われるATキーボード(PS/2キーボード)ではこれらの表示機能はコンピュータ本体から制御可能である。この制御がアプリケーションソフトウエアが実際に行えるかどうかはコンピュータで動作しているOSに依存する。GNU/Linux等の一部のOSでは、PC用のキーボード上のこの3つの表示機能を使い、OSからのパニック時のステータスを表示させることができるものもある。

ステータス表示用の他にも、全てのキーにLEDを内蔵し、その光で暗い部屋でもキー表示が見えるようにした物等もある[4]。売り出された当初は軍事用ではないか等の噂も立ったが、恐らくは派手な電飾を好むModding文化から由来した物であると考えられる[5]。但し、LEDではないものの、光るキーボード自体はバックライト用にエレクトロルミネセンスを使用したセンチュリー等、それ以前から存在していた。出所の怪しさやチェリー製のスイッチ等が注目を浴びた理由であろうと考えられる。

LEDだけではなく、キーボードに液晶表示を搭載する例もあり、ロジクール(Logitech)のゲーム用キーボードG15 Gaming Keyboardには、角度調節が可能なバックライト付きLCDパネルが搭載され、様々な情報が表示される。

また極めて特異な例ではあるが、ロシアのデザイン会社Art. Lebedev Studio[6]から、全てのキートップに有機ELディスプレイが内蔵されたOptimusキーボード[7]の発売が発表された。しかし度重なる発売延期と仕様変更が相次ぎ、実際に当初の発表通りの製品になるのか、実際に発売されるのか等は不明である。2007年1月現在Optimusキーボードはまだ発売されていないが、キーが3個だけ搭載された簡易版となるOptimus mini threeキーボード[8]とその改良版が発売されている。

[編集] キー配列

キー配列も参照。

[編集] その他

特定の機種専用のキーボードには、特殊なキーが用意されている場合がある。下記はその例である。

  • ACPI対応キーボードや、ADB対応のMacintosh[9]NeXTワークステーションにおいては、電源ボタンが用意されており、これ一つ押すだけで終了操作(設定によってはスリープ)を行うことが出来る。
  • 一部のパソコンでは、メールソフトwebブラウザなどの特定のアプリケーションソフトを起動させるキーを持っているものがある(このためには、キーの操作を感知してソフトを起動する専用ドライバの常駐が必要となる場合もある)。
  • 近年のハードウェアには、Windowsで機能するWindowsキーとアプリケーションキーがついていることが多い。
  • Macintoshに代表されるアップル製キーボードにはコマンドキー等の専用キーがついている。
  • かつてパソコンが一般家庭に普及しだした頃に、コンピュータ画面に「 Press Any key to continue... 」などと表示されたのを見た新規ユーザが、そのような“Any”と刻印されたキーがキーボード上にあるものと誤解した(→Any key)。
  • トラックポイントやトラックボール、タッチパッドなど、ポインティングデバイスを内蔵したキーボードもある。

[編集] キーボードの機構

[編集] キースイッチユニット

様々なものがあるが、メカニカル・メンブレン・静電容量無接点が使用される事が多い。

メカニカルスイッチ
キーの数だけ独立したキースイッチユニットがあり、コストがかかるため衰退しつつあるが、メンブレンでは再現出来ないキータッチを好み、再評価の動きもある。メカニカルのキーボードはキー押下時に音がするとの誤解もあるが、カチカチという音自体はスイッチ内に内蔵された音を出す為の機構によるものであり、キースイッチ自体からは音はせず[10]、またそれらの部品が内蔵されていない音のしないメカニカルスイッチも多い[11]。キー音の軽快さや入力の確実性、そして独特の打鍵感(キータッチ)を好むユーザから見直され、最近復活の兆しがある。ドイツチェリー製のスイッチ[12]日本アルプス電気製のスイッチが有名である。スイッチがボタンの戻ろうとする力を吸収してくれるので、長時間のタイピングでも疲れにくい。ただし粗悪な物は、ある程度使うとチャタリングが発生する場合がある。
メンブレンスイッチ
メンブレン(Membrane)とは、日本語で膜、薄膜を意味する。2枚の接点シートの間に穴のあいた絶縁シートを挟み、キーを押すと接点が触れ合う仕組みとなっている。シートを押すための機構としては、ラバードーム、パンタグラフ、バックリングスプリングなどさまざまな種類がある。材質的に耐久性に限界があるものの、メンブレンとラバードームを使用したキーボードは安価に製造できるため、現在最も普及しているが、安価なものほど指先に反発の力がダイレクトに戻ってくるので長期間のタイピングには向かず、タッチの固いものは腱鞘炎になる危険性が指摘されている。しかし、必ずしも粗悪なものばかりではなく、一部マニアの間ではミネベア製のキーボード製品[13]が丁寧に作り込まれていることで重宝されている[14]が、現在そのモデルは生産されていない。
静電容量無接点
静電容量の変化でキー入力を検知する。機械接点が無いため静穏で、耐久性やキータッチを高められるが、高価になりがちという面もある。事実、普及価格帯での価格はメンブレン方式では1,000円~4,000円程度なのに対し、静電容量無接点方式では10,000円~25,000円程度である。IBM PC、PC/XT、PC/ATの初期の83/84キーボード、Sun Type4に代表されるKeyTronic製キーボード等がある。東プレ製のRealforceシリーズや、東プレOEMPFU Happy Hacking Keyboard Professional等のキーボードが有名。金融機関や証券業界などでも広く使われている。
レーザー投影式
厳密にはスイッチというよりもむしろセンサーである。机の上にレーザー投影機とセンサーが一体となった装置を置き、机の上にレーザーで直接キーを投影し、そこに指を置くことによりそれをセンサーで感知して入力とするものである。装置は非常に小型で可搬性に優れ、ある程度のスペースと反射率のある机があればどこでも使用できるが、物理的なキーが存在しないためブラインドタッチが難しく、構造上縦に並んだーキーの同時押しが検知できないという欠点がある。

[編集] アクチュエータ

メカニカルスイッチはユニット自体にアクチュエータを内蔵している事がほとんどであるが、その他のスイッチの場合、スイッチを通電させたりキータッチを出したりするアクチュエータが存在する。

ラバードーム
主にメンブレンスイッチや静電容量無接点スイッチ等で使用される、半球(ドーム)状のゴム製の部品で、一つ一つが独立しているものや、全て一つにつながっているものなどがある。
パンタグラフ
外観・形状が鉄道車両のパンタグラフに似ているため、パンタグラフと呼ばれている。ラバードームとの組み合わせで使用される事もある。特徴としてはキートップ上面のどの部分を押しても同じ圧力でキーを押せること等の利点がある。構造的に薄く出来るので、ほぼ全てのノートパソコンに採用されている。指先に反発の力がダイレクトに戻って来る(それでも一般的には弱い)事や、構造上ステップスカルプチャ形状をとるのが困難である事等から、長期間のタイピングには向ないとされているが、一方で低いキートップや短いキーストローク、そして軽い打鍵感により指を滑らせるような軽快な入力が可能として固定ファンも多い。
バックリングスプリング
バックリングスプリングのしくみ
バックリングスプリングのしくみ
座屈ばね機構とも呼ばれる[15]。バックリング(buckling)とは、「(圧力による)歪み」のような意味で、その名の通りキーに内蔵したスプリングを歪ませることで明確なクリック感を出す機構である[16]。キーを押すと「カシュンカシュン」「パシュンパシュン」と、スプリングが折れ曲がってスライダの内部にぶつかる音がする。
右の図はIBMによる特許の図であるが、図によると、まず1のキートップを押し下げると2のスプリングが徐々に湾曲して行き、完全に折れ曲がると7を支点にして4が可動、スイッチが通電する。この瞬間、スプリングが折れ曲がり急激にキーの重さが低下する事によってクリック感が、スプリングがスライダ内部3にぶつかる事でクリック音が発生する。キーを離すとスプリングの弾力によって元に戻るというしくみである。12と13が完全に接触すると、それ以上キーは沈まない。このため明確な底付き感を発生させており、一般的なラバードーム等に見られるゴムを押すようなあやふやな底付き感と一線を画している。
かつてIBM社が生産していたキーボードが有名であリ、その一連のシリーズは「Model M」と通称されている。
なお、あくまでアクチュエータがこのような構造になっているというだけであり、IBM社のキーボードの場合、スイッチの接点方式としては静電容量式とメンブレン式のものが存在した。すでにIBMの特許期間は切れているが、一部を除いて、製造・販売される事は稀である。

[編集] スタビライザー

シフトキーやスペースバーのような長いキーのどの位置を押しても正しくまっすぐ押下できるようにするための仕組みである。これを省略している安いキーボードは、シフトキーの端の部分を押すと、引っかかってスムーズに押せないものがほとんどである。初期のIBM PCのキーボードは、そのためキーの中央のみにキートップを付け、端の部分を押せない物としていた。

[編集] キートップ

主にキーの機能などが印字されている。たいていの場合表面にホームポジション・マーカがある。平らな物、球面状に窪んでいる物、円筒形に窪んでいる物などの種類がある。 平らなものはパンタグラフなど薄型キーボードに多く、球面状に窪んでいる物は昔の物に多かったようである。

印字方法には様々な種類があり、二色成型・昇華印刷・シルク印刷・レーザー印字などがある[17]。 最も耐久性(印字の消えにくさ)に優れるのは二色成型だが、文字の種類だけ金型が必要なため、近頃ではコスト的な問題から採用されることはまずない。 また、昇華印刷も一部の高級機種に用いられているのみであり、大多数のキーボードには専らシルク印刷(特にカラー印字がある場合)とレーザー印字が用いられている。

印字がされていない無刻印キーボードとよばれるものが存在する。キーボードの印字の重要性は、タッチタイピングをしない人に比べてタッチタイピングをする人は低い。また、タッチタイピングをする人は使いやすいようにキー配列をカスタマイズする場合があり、こうしたユーザにとって印字がされていないキーボードは、使い勝手が良いとの考えによるものである。[18]

[編集] ホームポジション・マーカ

ホームポジション(人差し指を置く位置)を触って分かるようにする、キートップ上に付いている小さな出っ張りのことである。または、FとJのキートップを他のキートップよりも深くえぐってある場合もある。現在の多くのキーボードでは、人差し指のFキー、Jキーの所に付いている。俗にOld Worldと呼ばれるiMacより前の、つまりベージュのMacintoshのキーボードは、テンキーと同じ中指のDとKであった。親指シフトキーボードには、人差し指だけではなく小指(Aと;)の部分に付いているものもある。これらホームポジション・マーカはキーボードを見ないでも、文字入力するためのものであるが、特に長い文章の作成やプログラミングをキーボード入力で行う人達には、非常に重要な存在である。

[編集] ステップスカルプチャ

打鍵しやすくするため、あたかも階段のように上段のキーほど高くなっているステップ構造と、キーボード全体に指が届きやすくするため、上段・下段に対し中段が凹んでいるスカルプチャ構造との折衷構造の事である。特にキートップの指との接触部分が円筒形の溝になっている物はシリンドリカルステップスカルプチャと呼ばれる。スカルプチャには、実際のキーが曲面状に設置されているものや、キートップの形状で再現したものなどがある。

なお、シリンドリカルと言う単語は、キートップの表面の形状が円筒の内側のようなえぐれをしているものを差して使用されるのが本来であるが、最近ではスカルプチャと混乱している様である。

[編集] チルトスタンド

タイプしやすいようにキーボード全体を傾けるための機構である。平たく言えばキーボードの足である。人間工学的には、奥を上げた方が良いという意見以外にも、手前を上げた方が良いなど異論もあり、実際に手前側を高くするためのチルトスタンドを装備したキーボードも存在する。

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ スタパ齋藤の『これだ!!これで行くゼ!! 〜 IBM SpaceSaverキーボード 〜』等。
  2. ^ 極端なキーの詰め込み具合から「変態配列」等とも呼ばれ、一部のユーザには嫌悪されている。
  3. ^ a b Weekly "Keyboard World" 『7. Capitals lock
  4. ^ TG3 Electronics BACKLIT 82 KEYS
  5. ^ Deck Backlit Keyboards
  6. ^ Art. Lebedev Studioを参照。
  7. ^ Optimus keyboard
  8. ^ Optimus mini three keyboard
  9. ^ Macintosh用キーボードは、ADBが廃止されUSBとなった後もしばらくは電源ボタンが搭載されていたが、OSのフリーズ時やハブを介しての接続では使用不能となった。
  10. ^ 但し、キーを最深部まで押下した時の底付き音や、押したキーが元に戻った時の音などは発生する。これらの音を軽減するためユニット内部にゴム製の部品を使用したスイッチもあり、Apple Extended Keyboard II等に使用されている。
  11. ^ チェリーの茶軸等。
  12. ^ チェリーキーボードMXキースイッチ
  13. ^ 例えば、RT6652TWJPCMI-6D4Y6)等。
  14. ^ ミネベア・NMB製 メンブレンキーボード友の会等を参照。
  15. ^ 鍵人Buckling Spring Mechanisms
  16. ^ IBM BucklingSpring Keyboard (IBM 5576-003, 5576-A01, 101model M, etc...)
  17. ^ Nogujyu Keyboard Mania キートップの文字
  18. ^ Tech総研『和田英一@日本初ハッカーはちょっと変わった絵を描く』無刻印HHK発売の経緯

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ


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