Pentium FDIV バグ
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1994年10月30日、リンチバーグ大学のThomas Nicely教授はPentiumプロセッサの浮動小数点演算ユニットにバグがあることを報告した。その内容は、非常に小さな値でとある割り算を行うと間違った値を返すというものだった。この結果はインターネットを通じて他の人々の手で素早く検証された。そしてPentium FDIV バグ(FDIVはx86アセンブラ浮動小数点割り算の命令)として知られるようになった。また、別の人々はPentiumが返す結果が引き起こす割り算問題は、100万回に高々61回までしか起こらないことを見つけた。この問題はPentiumプロセッサのあるモデルにのみしか起きないことに注意すること。120MHz以上のクロックのPentium系プロセッサは新しいのでこのバグはない。
この報告によって大論争が巻き起こった。インテルは最初この問題があることを否定していた。後に、Intelはこの問題は重大ではなくたいていのユーザーには影響がない、と主張していたが、一方で影響があると確認できたユーザーにはIntelによってプロセッサの交換を行った。多くの独自の検証によって、このバグはほとんど重要ではなく、たいていのユーザーに対する影響は無視してもよいと分かったが、このIntelの対応は非常に大きな抗議を引き起こした。(当時IntelのPentiumラインに競合する「586」プロセッサを持っていた)IBMのような企業は、一緒になって非難した。
ついにIntelは、バグのあるPentiumプロセッサをすべて交換するという、非常に大きな損失を潜在的にもたらす可能性のある申し出をすることになった(しかし、このチップ交換を行った抗議したPentium所有者は、実際にはほんの少数であったことが判明した)。一大企業の広報としてはしばしば陥る悪夢ではあったが、実際にはすでに織り込み済みだと認識され、その日のIntelの株価はあがった。
結局Intelは根拠のないリコールをさせられたと言う人もいる。ただ、科学技術計算などでは演算結果がすべてなので、その結果がいくら確率的にわずかだとはいえ信頼できないというのは、研究や仕事において致命的である人たちもいたこともまた事実である。仮にこのバグをソフトウェア的に回避しても、速度的に以前のプロセッサで実行する方が圧倒的に早くなり、Pentiumプロセッサを使う意味が全くなくなってしまう。この問題はそのような科学技術系などの計算目的でプロセッサを購入した人をインテルが切り捨てるのか、切り捨てないのかという問題でもあった。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Personal website of Dr. Nicely, who discovered the bug
- A page with precise information, also about the cause
- Ivars Peterson's Mathland on the bug
- A Tale of Two Numbers, by Cleve Moler of The MathWorks
- ZIP-file containing more details (See ZIP file format for details on the file)
- Intel's official site