Model View Controller
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Model View Controller(モデル・ビュー・コントローラ; MVC)は、コンピュータ内部のデータをユーザに呈示し、それに対してユーザが何らかの指示を出すタイプの、独自のユーザーインタフェースを持つアプリケーションソフトウェアを、以下に述べるようなmodel・view・controllerの3つの部分に分割して設計・実装するという技法、又はそのような構造をいう。
MVCは、デザインパターンの一種と扱われる場合もあるが(MVCパターンと呼称される)、MVC自体が他の小さなデザインパターン(Observer パターン・Command パターン・Factory パターン・Facade パターンなど)を利用して実装されることが多いところからすると、デザインパターンというより、さらに粒度の大きい一種のソフトウェアアーキテクチャという方が適当であろう[1][2]。
各モジュールが比較的截然と分かれ、プログラムの見通しがよくなるとともに、UI部分を別のモジュールに取り替えることが容易となるのが利点である。自動プログラミングなどにも適している。
元来Smalltalkにおけるウィンドウプログラム開発のための設計指針として生まれたものであるが、特に構造が複雑となりがちなGUIを持つソフトウェアにおける有用性から他方面へ広がった。
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[編集] MVCの構造
前述のように、MVCでは、プログラムをModel(モデル)、View(ビュー)、Controller(コントローラ)、の3つの要素に分割する。
- Model
- そのアプリケーションが扱う領域のデータと手続き(ビジネスロジック(ショッピングの合計額や送料を計算するなど))を表現する要素。また、データの変更をviewに通知するのもmodelの責任である(modelの変更を通知するのにObserver パターンが用いられることもある)。
- 多くのアプリケーションではデータの格納に永続的な記憶の仕組み(データベースなど)が使われている。MVCの概念では、データの(UI以外の)入出力は取り扱わないので、データアクセスも本来MVCの概念の範疇を超えるものではあるが、敢えていえばmodelの中に隠蔽されると考えられる。
- View
- modelのデータを取り出してユーザが見るのに適した形で表示する要素である。すなわちUIへの出力を担当する。例えば、ウェブアプリケーションではHTMLを生成して動的にデータを表示するためのコードなどにあたる。
- Controller
- ユーザの入力(通常イベントとして通知される)に対して応答しそれを処理する要素である。すなわちUIからの入力を担当する。modelとviewに変更を引き起こす場合もあるが、直接に描画を行ったり、modelの内部データを直接操作したりはしない。
なお、UIにおける入力と出力は本質的には不可分なものであり、従ってviewとcontrollerはいつでも分離できるとは限らない。このようなM-VCとなるような場合を時に「拡張MVC」と呼ぶ場合がある。
[編集] MVCのシナリオ
MVCの実装は様々であるが、制御フローは一般的に次のようになる。
- ユーザがユーザインタフェース(view)を操作する。(ボタンを押す、など)
- controllerがviewからの入力イベントを処理する。controllerは登録されているイベントハンドラやコールバックを通して呼ばれることが多い。
- controllerがユーザのアクションに応じてmodelのメソッドを呼ぶ。その結果modelのデータ(例えば、ショッピングカートの中身など)が書き換えられることもある[3]。
- viewがmodelから関連するデータを取得し、ユーザーインタフェースを更新する。例えば、ショッピングカートの中身の表示を更新する。
- viewがユーザの次の操作を待つ。始めに戻って、新しいサイクルに入る。
[編集] 脚注
- ^ Frank Buschmann, Regine Meunier, Hans Rohnert, Peter Sommerlad, Michael Stal (1996). Pattern-Oriented Software Architecture. John Wiley and Sons. ISBN 0-471-95869-7.
- ^ Model View Controller As An Aggregate Design Pattern
- ^ 複雑なcontrollerはアクションの実体を隠蔽し、拡張を容易にするため、Command パターンを使って構造化されることが多い