酒寿司
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
酒寿司(さけずし)とは、鹿児島県で作られている郷土料理であり、寿司の一種である。
[編集] 概要
薩摩藩島津家の殿様が、宴会の残り料理と飯に酒をかけておいたら、翌朝良い香りが漂っていた事から出来た料理と言われている。また寿司と称しながら酢を一切使わず、日本酒の一種である地酒(じざけ・じしゅ)をふんだんに使い、春先の山の幸・海の幸を沢山使った押し寿司のような独特の料理である。最近は合わせ酢を少々混ぜたものもあるようであるが、あくまでも地酒がベースであり、酒に弱い人だと、香りだけで酔うこともあるらしい。
享和2年(1802年)『名飯部類』に「薩摩ずし」の名で記述があり、サバを開き腹の中に酒を混ぜた飯を詰め、酒を振りながら桶に並べる(姿ずし)とある。さらに、「こけらずし(飯に具材を混ぜるか上に貼り付ける形式)もつくる」とある。発酵して酸味が生じるまで待てば、酒を発酵の促進に使った生成(ナマナレ)のすしである。篠田統『すしの本』によると、「昔は7~8日押した」とある。今日の酒寿司は、発酵を待たなくなった生成のすしの残存例だとする見方が一般的である。
余談だが鹿児島県は、国内屈指の焼酎文化圏であり、一般的な日本酒の酒蔵は一軒もない。それだけに地酒を使った寿司が郷土料理となった点は興味深い。
[編集] 作り方
〈家庭で作る場合・一例〉
- 具はエビ、タイ、赤貝、タコ等の魚介類に蕗、筍、椎茸、錦糸卵、薩摩揚げ等が挙げられる。しかし、料理の成り行きが単純であるだけに、実際には寿司に合うものなら何を加えても良いと言う意見もある。
- 地酒(じざけ・じしゅ)と塩だけで、合わせ調味料を作る。基本的に旨味調味料や酢などは使用しない。
- 飯は普通に炊いてさましておく。その後、先の合わせ調味料を飯に混ぜる。
- 具はそれぞれに味を付けて、魚は薄塩をして、ちらし寿司のように切っておく。
- 冷ましておいた飯と合わせ調味料の3/4の量をよく混ぜ合わせて、4等分に分けておく。
- 寿司桶に少々塩を振り、その上に飯の1/4の量を敷き込み、平らにする。
- 飯の上に好みの具を散らし、再びその上に飯1/4の量を敷き込む。このようにして順々に段を作っていく(残しておいた合わせ調味料は段を整えるたびに使用する)。
- 最後に飯を敷いて、残りの具を彩りよく盛り付ける。
- 上から葉らんを敷いて、中ふたをする。
- 寿司桶の中の地酒が常にふたの上段ギリギリにあるように、中ふたの上から重石を乗せて調整する。この重石の調整が美味しく作るコツである。
- 重石を調整しながら4~5時間待つと出来上がり。長時間置くことで、地酒の酵素が飯や具を軽く醗酵させて旨味や甘みを引き出す。仕上げに山椒の葉を載せると一層彩りが良くなる。
- いわゆる「左党」の人の中には、さらに地酒を寿司の上に振りかけて食べる人もいる。