透明人間 (1933年の映画)
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透明人間は、ジェームズ・ホエールが監督し、ユニバーサル・ピクチャーズが1933年に制作した映画である。 原作はH・G・ウェルズの同名のSF小説。 1930年代の映画の中で最も偉大なユニバーサル・ホラーの映画の1つに数えられており、透明人間のアイデアを使っておきながらウェルズの原作とはかけ離れたスピンオフが量産された。
アメリカの映画に初主演となるクロード・レインズは、肉体から離れた者として、透明人間(ジャック・グリフィン博士)を演じた。映画の最後のほうでレインズの姿ははっきりと見えるが、それ以外は、包帯を巻いたままの姿をしている。共演者の中には、グロリア・スチュアートもいた。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
目次 |
[編集] 登場人物
- 主な人物
- 透明人間 (クロード・レインズ) - 肉体を透明にできる薬を開発した科学者。
- フローラ・クランリー (グロリア・スチュアート) - 透明人間の婚約者。
- アーサー・ケンプ博士 (ウィリアム・ハリガン) - 透明人間が透明になる前はパートナーだった科学者。
その他リポーター役にドワイト・フライ、自転車を盗まれる男役にウォルター・ブレナンといった俳優が端役で出演し、ジョン・キャラダインがピーター・リッチモンドの名前の下で演技をしていた。
[編集] あらすじ
物語は、顔を包帯で覆い、目を黒いサングラスで隠した奇妙な男が、サセックスのIping という村の宿屋に泊まりに来るところから始まる。
クォーター硬貨をおいていくこともせずに、従業員に自分を一人にするよう頼む。しかし彼が透明人間だったという暗い秘密は、宿屋の主人(フォレスター・ハーヴェイ)と半分ヒステリックになっている妻(ウナ・オコーナー)が、部屋をめちゃくちゃにして他の泊り客を追い出した男に出て行くよう頼むと、男が狂ったように笑いながら包帯を剥ぎ取って主人を階段から落とすことで明らかになってしまう。 それから彼は服を全部脱いで透明な姿をあらわにすると、警官を絞め殺しにかかる。
この透明人間の正体は、モノケインと呼ばれる不思議な新薬の実験を行っているうちに透明化の秘密に気づいた科学者ジャック・グリフィン博士なのである。
彼は師であるクランリー博士(ヘンリー・トレヴァース)のいるラボに戻り、底で彼の秘密を漏らしたもと相棒のケンプ博士(ウィリアム・ハリガン)と、グリフィン博士のフィアンセフローラ・クランリー(グロリア・スチュアート)もラボにいた。 モノケインはグリフィンの肉体全体にいきわたり、グリフィンは人間の目には完全に見えないからだとなった上、狂気のとりこになってしまう。
宿屋から逃げてきたその夜、グリフィンはケンプのリビングに現れ、そのケンプを監禁する。彼は相棒になって宿屋に一緒に戻って自分の書いた透明化に関する書物を取りにいくよう脅す。 と、そこへ警官がやってくるがグリフィンに木製のスツールで殴り殺される。 ケンプはクランリーに助けを求め、ケンプの秘書は警官を呼ぶ。フローラもやってきて、警察が来るまでの間、グリフィンと会話を交わす。 会話の内容は、グリフィンとフローラが互いに夢中になるほど愛し合っているということがわかるものである。 フローラの前で彼女をDarlingと呼ぶほどグリフィンの気分は落ち着く。
グリフィンは力について大言壮語を思想になるが、警察が来たのを見て、ケンプが自分を裏切ったことに気づき、まず最初にフローラを外へ避難させることにする。彼女は一緒にいたいとせがむが、グリフィンに「僕ができることは君を逃がすことだけだ。そうなったら警察は君に手出しができない。さあ行ってくれ。」と説得されてしまう。
ケンプを翌日の午後10時に殺害すると予告した後、グリフィンは再び逃走し、人を殺したり強奪したり悪意のある声でわらべ歌を歌ってみせながら通りを駆け抜る。警察は透明人間を捕まえる方法を見つけた人に賞金を与えることにする。
ケンプは自分を守るために、警察官の一人に変装することになったが、グリフィンはその様子をずっと見ていてケンプの手を縛って乗用車の前の席に乗せ、緊急ブレーキを解除して逃走。車は丘を転げてがけから落ちて爆発。 それから電車を脱線させて、捜査に協力していた警官2人をがけへ投げ飛ばし納屋へ隠れるが、農夫からの通報で警察が納屋へ火を放ってしまう。グリフィンが納屋から出てきたとき、雪の上の足跡や炎に照らされて見える、ひどい重傷を負ったグリフィンを見つける。 彼は死の床でフローラに、ある種の科学の力が自分を孤独にしたと話し、死んだとたんにモノケインの効果が薄れていき、本来の姿が再び現れる。
[編集] 原作との相違点
この作品はウェルズの原作を忠実に表していると評価されるときがあるが、実際は多くの相違点がある。 小説では1890年代の世界が舞台となっていたが、映画では1933年となっている。 小説ではグリフィンに婚約者はなく、クランリー博士なる人物もおらず、ケンプも殺されていない。実際小説の結末で、ケンプはグリフィンの死を宣言していて、グリフィンとの関係も古い親友や元相棒なんてものではなく、ただの知り合いだった。 また、小説の中でグリフィンの作った薬はモノケインではなく、名前の明かされていない別の薬であり、彼は薬を使うずっと前から狂気のとりこになっていた。 映画版のグリフィンは小説版より同情心があり、小説版の非情さはケンプが警官に’非人間的な人物’と説明しているほどである。 映画の中でグリフィンはフローラにしたことを後悔しているが、小説版ではそのような描写はない。
[編集] 特殊効果
この映画は革命的で巧みな視覚効果で知られている。 透明人間が裸になっているときはワイヤー及びそれに類似したもので視覚効果を出せばよいが、透明人間がいくらか服を着ているときは黒いベルベットのスーツの背景の後ろから全身黒いベルベットのスーツに身を固めたクロード・レインズに光を当て、つや消しの用法で撮影現場の光とこの光をあわせた。当のクロード・レインズは閉所恐怖症で、スーツをしている間は息苦しさを感じた。.[1]
[編集] モノケインという名の薬
モノケインは1933年に公開されたこの映画に出てくる架空の薬品である。この作品の続編であるThe Invisible Man Returnsでは、デュオケインに名前が変更されている。 クランリー博士がひどい代物だといったその薬は、強力な漂白作用があってインド製であること以外は得体の知れないものである。 ドイツの科学者がこの薬を犬で試したところ、犬は死んだように白くなり狂ってしまった。 この薬はジャック・グリフィン博士によって(モノケインの副作用を知らぬまま)透明薬の材料として使用された。 何年貸し手繰りフィンの兄弟フランクがこの薬を実験に使う。 この映画へのオマージュとして、モノケインは今日までよくわからない毒薬としてテレビドラマなどに使用されてきた。 以下の作品においてモノケインという名の薬が使用された。
- TVドラマMatlock(シーズン1、第16話、1987年2月3日放送、ピーター・セント・ジョンソン殺害に使用)
- TVドラマMatlockより"The Nurse"(シーズン1、1987年1月16日放送)
- ペリー・メイソン制作のTV映画"A Perry Mason Mystery: The Case of the Lethal Lifestyle" (1994年公開、殺人目的で使用)
- 『Dr.マーク・スローン』とMatlockの合同ドラマ"Murder Two" (1997年放送、殺人目的で使用)
- TVドラママクブライドより"The Doctor is Out… Really Out" (2005年放送、殺人目的で使用)
以上で物語・作品に関する核心部分の記述は終わりです。
[編集] 脚注
- ^ Now You See Him: The Invisible Man Revealed! Dir. David J. Skal. With Rudy Behlmer, Bill Condon, Curtis Harrington, and Paul M. Jensen. Universal Home Entertainment, 2000.