軽飛行機
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軽飛行機(けいひこうき)とは小型の飛行機を指す非公式なカテゴリーのひとつ。概ね自重1,500kg以下、レシプロ単発、プロペラ推進、発動機出力300hp以下、乗員8名程度以下の固定翼飛行機で、遊覧・移動・写真撮影などを目的とし、飛ぶこと以外の特別な装備を持たないものを指すが、公式ないし明確な定義があるわけではない。
同程度の大きさでも業務としての輸送、ビジネス、曲技飛行、農薬散布などの目的を持ち、そのための設計が行われている場合はそれぞれ輸送機(軽輸送機)、ビジネス機、曲技機、農業機などと呼ばれ、軽飛行機とは言わないのが普通である。また、軽飛行機は軍用に用いられることもあるが、その場合も「雑用機」「観測機」等、その目的に沿った呼び方が行われる。ただしそれらも外形的な印象から「軽飛行機」と呼ばれることがある。
ICAO(国際民間航空機関)の航空機分類に「軽航空機」というものがあるが、これは気球や飛行船などの空気より軽い飛行体を指し、軽飛行機とは全く異なるものである。
[編集] 代表的な軽飛行機
- セスナ 170 / 180シリーズ(アメリカ)
単発高翼。180シリーズの方がややエンジン主力が大きい。シリーズの中で特に172がベストセラーとなって1985年の製造中断までに35,000機以上生産され、「セスナ機」が軽飛行機の代名詞ともなる原因を作った。1997年から生産を再開している。高翼式のため遊覧にも好適。170/180は尾輪式であったが172/182から前輪式となった。 - ビーチクラフト・ボナンザ(アメリカ)
単発低翼。初期型のボナンザ35はV字型の尾翼が特徴だった。現在のA36は通常形式の尾翼に改められている。やや高級なクラスであるが10,000機以上が生産されている。 - パイパー・チェロキー(アメリカ)
単発低翼。普及型の軽飛行機。これも各型合わせて30,000機以上が生産された。 - ソカタ・TB9タンピコ(フランス)
単発低翼。系列にTB10トバゴ、引込脚のTB20トリニダード等がある。 - 富士重工 FA200エアロスバル(日本)
単発低翼。日本製の代表的な軽飛行機で、スポーツ機としての特性も持つ。旧中島飛行機の流れを汲む富士重工の製品ということで当初「隼」という名前も候補に上がったが結局「エアロスバル」という名前になった。
[編集] 軍用機としての軽飛行機の例
かつては弾着観測や連絡飛行に多用されたが、それらの任務はヘリコプターに移ってしまった。また初等練習機も、軍用機の発動機がターボプロップ主流になる中、ターボプロップエンジンを装備したより運動性の高いものに変わってきており、今日では軽飛行機は軍用にはほとんど用いられていない。
- セスナ L-19 / O-1 / T-41(アメリカ)
単発高翼。いずれもセスナ170シリーズの軍用型。L-19は陸軍の連絡機、O-1は空軍の観測機であるがいずれも170を母体とした尾輪タイプである。朝鮮戦争からベトナム戦争にかけて使用された。T-41は1970年代まで初等練習機として使われたタイプで前輪タイプの172が母体である。当時アメリカ空軍では初等訓練を民間委託していたため民間の登録番号も持っていた。
[編集] 軽飛行機に類似する小型機カテゴリー
- 軽輸送機
山岳地帯や道路整備が十分でない地域などの輸送を任務とする機体。貨物室を持ち、多くはSTOL性能にも考慮が払われている。ピラタス・ポーター(スイス。今日ではターボプロップエンジンを装備してターボポーターと称している)、アントノフAn-2(ロシア。複葉機。農業機や軍用輸送機としても使用される)など。 - 農業機
大面積の畑などに農薬を散布する飛行機。農薬散布装置を装備するのは当然であるが、超低空を飛行するため、安定性や操縦者の視界確保などには十分な配慮がされている。グラマン・アグキャット(アメリカ)、エアトラクター社(アメリカ)の農業機シリーズなど。 - スポーツ機/曲技機
エアレースやアクロバット飛行などを目的とした機体で、軽飛行機より高出力のエンジンを装備し、安定性よりは機動性を重視する。多くは単座である。ピッツ・スペシャル(アメリカ。複葉)、ヤコブレフYak-50(ロシア)など。