補体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
補体(ほたい)とは免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群で、動物血液中に含まれる。抗体が体内に侵入してきた細菌などの微生物に結合すると、補体は抗体により活性化され、そして細菌の細胞膜を壊すなどして生体防御に働く。補体は易熱性であり、56℃、30分の処理で失活する(非働化)。
補体の成分はC1~C9で表され、C1にはさらにC1q、C1r、C1sの3つの、その他はC5a、C5bといったように2つのそれぞれサブタイプを持つ。これらのタンパク群が連鎖的に活性化して免疫反応の一翼を担う。
さらに、C1~C9の補体蛋白以外にB因子、D因子などを含めた16種類の蛋白、液性(血液中にある)の5つの調節因子(I因子、H因子、C4Bp、C1抑制因子、properdin)、細胞膜上の4種類の調節因子 (CR1、CR2、membrane cofactor protein、decay accelerating foctor) などの蛋白も補体の機能の発現・調節に関与しており、これらを総称して補体系と呼ぶ。
目次 |
[編集] 古典的経路
古典的経路とは、C1の活性化に始まる経路のことである。体液性免疫の抗体抗原複合体に補体C1が結合することでC1が活性化する。以降も基本的に数字順に活性化するが、C4は例外的に2番目に来る。『C1→C4→C2→C3b→C5b』まで活性化され、あとはC5bにC6~が次々と結合、最終的にC5b6789にまでなる。
[編集] C5b6789
C5b6789は別名『細胞膜障害性複合体』といい、細菌の表面に取り付き細胞膜を破壊する。この働きを免疫溶菌反応、または免疫溶菌現象という。細菌の感染に対して好中球の貪食と並び重要な機構である。
[編集] 副経路
一部の細菌は抗体を介さず直接C3を表面に結合し、いきなりC3a、C3b活性化(→以下は古典的経路と同じ)の経路をとる。この経路を副経路という。
[編集] 代表的な補体とその働き
以下のその代表的なものを示す。
- C1q
- 標的の蛋白や表面に結合し、補体反応の基点となる。免疫複合体の形成。第1染色体短腕(1p34)にコードされる。
- C1r・C1s
- セリンプロテアーゼ(蛋白分解酵素の1グループ)であり、C4、C2を切断して活性化する。12番染色体短腕(12p13付近)にコードされる。
- C2・C4
- C4b2a複合体を作り、C3を活性化する。免疫複合体の除去作用を持つ。
- C3
- C3b4b2a複合体を構築し、C3/C5転換酵素となる。C5b以降の補体の活性化作用を持つ。