蘋果日報 (香港)
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蘋果日報(Apple Daily、アップルデイリー・りんご日報とも。ピンイン: Píngguǒ Rìbào) は香港で発行される繁体字中国語の新聞。大きなカラー写真と人目を引く扇情的な見出しを特徴とする大衆紙であり、自由主義を標榜する反北京・親民主派の代表的な新聞でもある。香港の中国語新聞の中では「東方日報」に次ぐ発行部数第2位となっている。香港のメディアグループ壹傳媒(Next Media Ltd.)が100%の株式を保有しており、1995年に壹傳媒の創業者である黎智英(ジミー・ライ、Jimmy Lai Chee Ying)が創刊した。台湾に同名の姉妹紙がある。
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[編集] 特徴
蘋果日報の分厚さはニューヨーク・タイムズ日曜版に匹敵する。毎日発行される新聞は、「地元ニュース」・「国際ニュース」・「経済」・「エンタテインメント」・「スポーツ」・「その他(科学技術、旅行、グルメ、料理、ファッションなど)」が別々にたたまれている。1部6香港ドルで販売しており、一日の発行部数は30万部に達する。
[編集] 躍進
東方日報(1969年1月22日創刊)、明報(1959年5月20日創刊)、成報(1939年5月1日創刊)、大公報(1938年8月13日創刊)、文匯報(1948年9月9日創刊)など香港の他の中国語大衆紙や日刊紙と比べ、蘋果日報の創刊は1995年6月20日と若い新聞であるが、創刊後まもなく他紙を圧倒する部数を発行するに至った。
創刊した1995年当時から、カラー写真をメインに据え文章をそれに従わせるスタイルや洗練されたエディトリアルデザインを採用するといったビジュアル性重視と、内容面での徹底した娯楽的な大衆紙路線で、大量の部数を売り上げた。この結果、香港返還前の香港新聞界に激しい競争を起こし、ついてゆけなかった基盤の弱い新聞が多数廃刊することとなった。
蘋果(りんご)日報という題名は、発行人の黎智英が発案したものであり、黎智英は「もしアダムとイブがリンゴを口にしなかったら、世界に善悪はなくニュースも存在しなかっただろう」と命名の理由を述べている[1]。
台湾の蘋果日報は、2003年に黎智英が他社と組んで立ち上げた姉妹紙である。
[編集] 煽情性
内容は芸能人の動向、扇情的で時にやりすぎや出まかせも指摘されるルポルタージュ、企業や政治家のスキャンダル内部告発、流行の着こなし、「バスおじさん」のようなネットの話題など人々が飛びつくものが特に多く、人気と論争のもとになっている。ACニールセンの調査では香港で第2位の売り上げを誇るが、独立機関の調査では人々の蘋果日報の記事に対する信頼性は低い。
新聞のレイアウト・デザイン・内容が読者に好まれるように変化し、硬派なデザイン・「読者の知るべきことを伝える」論調から、見やすく派手なデザイン・「読者の知りたいことを伝える」内容へとなってゆく現象(内容的なタブロイド化)を、香港などでは蘋果化と呼ぶこともある。
[編集] 反政府の論調
政治的には、香港特別行政区政府や北京の中国共産党政府に反対し、親北京的でなく、西側メディアや香港民主派(泛民陣営)に近い論調をとる香港でも数少ない新聞である。香港返還前から北京政府に対し激しい批判を加えてきたため、中国大陸では発行が禁止され、現在も蘋果日報のウェブサイトは中国国内では遮断されている。また論調は「小さな政府、市場重視」の色彩が濃厚である。