紫微斗数
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紫微斗数(しび-とすう)は占いの一種。仙人として知られている陳希夷が創始したと伝えられている[1]。紫微斗数の名前は、北極星である紫微星を主とする星々から運命(=数)を量る枡(=斗)を意味している。そのため紫微斗数を短縮して呼ぶ場合は紫微もしくは斗数と呼ぶべきである。
中国や台湾ではよく知られており、子平(八字、四柱推命)と併用されることもある。日本ではあまり知られていなかったが、最近は徐々に知られるようになって来ている。もっとも日本において紫微斗数は第二次大戦以前から阿部泰山によって公開されており、これは香港や台湾における紫微斗数の流行に先駆けている。現代の紫微斗数は幾つかの流派に分かれているが、どれも明の嘉靖29年(1550年)に出版された『紫微斗数全書』を原典として、その上に各派独自の解釈を加えている。『紫微斗数全書』の著者である羅洪先は陳希夷18代の子孫を自称した。また一部には紫薇斗数の表記[2]を採用している流派がある。
ただし、北派紫微斗数、道蔵紫微斗数あるいは十八飛星策天紫微斗数と呼ばれる占術は、紫微斗数の名前を共有していても本項の紫微斗数とは全く異なる技術体系を持っている。本項の紫微斗数を北派紫微斗数と区別するために、南派紫微斗数と呼ぶことがある。
英語圏でも知られるようになってきており、紫微斗数の読みそのままのZi Wei Dou Shuや紫微星をもじったPurple Star Astrologyと呼ばれている。
[編集] 概要
太陰太陽暦をもとにした占術。主に生年月日時を基にして個人の特性や巡ってくる運勢を占う、いわゆる命占術の一つ [3]。 配置は異なっているが、西洋占星術のハウスと同じ概念の十二宮へ暦から算出される星を配置し、その星の吉凶象意から占う。星の配置にあたっては、天体の実際の位置は考慮されない[4]。 紫微斗数では多くの『星』を使用して占う[5]が、それらの『星』は重要度を基準とした分類がなされている。重要度の高い『星』のほとんどが実在する天体に起源を持っていると考えて良く、実在する天体としての星と同じ名前を持っている。
紫微斗数では特に北斗七星と南斗六星が重要視されており、特に重視される甲級星の大多数はこの2つの星座に起源を持っている。甲級星のいくつかと実際の星の対応は以下のようになっている。
- 紫微垣
- 北極星 - 紫微(甲級主星)
- 北斗七星
- 大熊座α星 - 貪狼(甲級主星)
- 大熊座β星 - 巨門(甲級主星)
- 大熊座γ星 - 禄存(甲級補星)
- 大熊座δ星 - 文曲(甲級補星)
- 大熊座ε星 - 廉貞(甲級主星)
- 大熊座ζ星 - 武曲(甲級主星)
- 大熊座η星 - 破軍(甲級主星)
- 南斗六星
- 射手座ζ星 - 天府(甲級主星)
- 射手座τ星 - 天梁(甲級主星)
- 射手座σ星 - 天機(甲級主星)
- 射手座φ星 - 天同(甲級主星)
- 射手座λ星 - 天相(甲級主星)
- 射手座μ星 - 七殺(甲級主星)
- 中天
- 太陽 - 太陽(甲級主星)
- 太陰 - 太陰(甲級主星)
北斗七星の中で実際に等級が低い禄存、文曲の2星は、甲級ではあっても主星とは見なされてなくて補星となっている。結局、紫微、貪狼、巨門、廉貞、武曲、破軍、天府、天梁、天機、天同、天相、七殺、太陽、太陰の14星が甲級主星と呼ばれており、紫微斗数において最も重要な働きをする。特に「どのような」といった象意の主要な部分は甲級主星から判断することになる。
なお、北斗七星の柄を構成する廉貞、武曲、破軍の3星は死の使いとされていた[6]が、紫微斗数においても、廉貞、武曲、破軍の3星は軍事との関わりがあって、破軍は特にその傾向が強い。これは紫微斗数で使用する星々が、位置は実在天体の位置と無関係に暦から計算されるものであっても、同じ名前の実在天体の性質を受け継いでいることの証左となるだろう。
紫微斗数の星々が元の実天体の性質を受け継いでいるという現象は、太陽・太陰でより顕著で、例えば太陽は夜明けに対応する卯宮にあるとき品位が最上の廟となる。また紫微斗数において太陽が持つ基本的な象意は公明正大であって、これは西洋占星術等での実太陽の象意と共通する部分がある。
従って紫微斗数では実在天体の位置を考慮しないことをもって、紫微斗数で使用する星は『虚星』であって実在しないなどという主張は端的に言って間違いである。