熊野権現
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熊野権現(くまのごんげん)は、熊野三山に祀られる神である。熊野神(くまののかみ)、熊野大神(くまののおおかみ)とも言い、神仏習合によって権現と呼ばれるようになった。熊野神は各地の神社に勧請されており、熊野神を祀る熊野神社・十二所神社は日本全国に約3千社ある。
[編集] 概要
熊野三山は熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の三社からなり、それぞれの神社が祀る神の神霊の総称(または統合された神霊)が熊野神(熊野権現)である。熊野三所権現とも言い、熊野三山に祀られるほかの神々も含めて熊野十二所権現ともいう。 権現とは仏や菩薩がもともとの本体であり、仏が人々を救うために「権」(仮:かり)に「現」れた神のこととされる。
各神社の主祭神は以下の通りであるが、相互に祭神を勧請しあい、現在では各神社で三神を一緒に祀っている。
熊野本宮大社の主祭神の家都御子神(けつみこのかみ)は阿弥陀如来 、新宮の熊野速玉大社の熊野速玉男神(くまのはやたまおのかみ)は薬師如来、熊野那智大社の熊野牟須美神(くまのふすみのかみ)は千手観音とされる。三山はそれぞれ、本宮は西方極楽浄土、新宮は東方浄瑠璃浄土、那智は南方補陀落浄土の地であると考えられ、平安時代以降には熊野全体が浄土の地であるとみなされるようになった。
熊野本宮大社・熊野速玉大社では十二柱の神が以下のように祀られている。
社殿 | 祭神 | 本地仏 | |||
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上四社 | 三所権現 | 第一殿 | 西御前 | 伊邪那美大神・熊野牟須美大神・事解之男神 | 千手観音 |
第二殿 | 中御前 | 伊邪那岐大神・速玉之男神 | 薬師如来 | ||
第三殿 | 證証殿 | 家津美御子大神 | 阿弥陀如来 | ||
五所王子 | 第四殿 | 若宮(若一王子) | 天照皇大神 | 十一面観音 | |
中四社 | 第五殿 | 禅児宮 | 忍穂耳命 | 地蔵菩薩 | |
第六殿 | 聖宮 | 瓊々杵尊命 | 龍樹菩薩 | ||
第七殿 | 児宮 | 彦穂々出見尊 | 如意輪観音 | ||
第八殿 | 子守宮 | 鸕鶿草葺不合命 | 聖観音 | ||
下四社 | 四所明神 | 第九殿 | 一万十万 | 軻遇突智命 | 文殊菩薩・普賢菩薩 |
第十殿 | 米持金剛 | 埴山姫命 | 毘沙門天 | ||
第十一殿 | 飛行夜叉 | 彌都波能賣命 | 不動明王 | ||
第十二殿 | 勧請十五所 | 稚産霊命 | 釈迦如来 |
熊野那智大社では「瀧宮」(祭神 大己貴命(飛瀧権現)、本地仏 千手観音)を第一殿として、以下一殿ずつ繰り下げとなり、中四社・下四社の八神を第六殿(八社殿)に祀り、あわせて「十三所権現」となっている。