火車 (妖怪)

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火車（かしゃ）は、日本に伝わる妖怪。

[編集] 特徴

棲息地は特定されておらず、全国に出現すると言われている。罪人が死ぬと、暗雲と大風雨と共に地獄から現れ、その者の葬式や墓場から亡骸を奪い去っていく。正体は猫の妖怪とされることが多く、年老いた猫がこの妖怪に変化するとも言われる。火車の出現は、その者が罪人である証とされ、人々は恐怖と同時に恥ずべきことと考えていた。

火車が住むと伝えられる付近の寺では、葬式を2回に分けて行い、最初の葬式には棺桶に石を詰めておき、火車に亡骸を奪われるのを防ぐこともあったという。

[編集] 考察

日本古来では猫は魔性の持ち主とされ、「猫を死人に近づけてはならない」「棺桶の上を猫が飛び越えると、棺桶の中の亡骸が起き上がる」といった伝承がある。また中世日本の説話物語集『宇治拾遺物語』では、獄卒（地獄で亡者を責める悪鬼）が燃え盛る火の車を引き、罪人の亡骸、もしくは生きている罪人を奪い去ることが語られている。火車の伝承は、これらのような猫と死人に関する伝承、罪人を奪う火の車の伝承が組み合わさった結果、生まれたものとされる。「家計が火の車」の「火の車」と言う言葉はこの妖怪が元でできたといわれている。

また長年飼われていた猫、古猫は火車になると広く信じられていて、葬式があると死体を奪いに来てその肝を食らうとの話は、‘弥三郎婆’の話でも語られている。『北越雪譜』（鈴木牧之）には「北高和尚の火車退治の話」が載っている。また播磨国（今の「兵庫県」）でも山崎町牧谷の「火車婆」に類話があり、この一帯では性格の悪い老婆を「火車婆」というと言う。（化け猫のような婆さんと言う意味合い。）

逸話としては『西播怪談実記』に「享保年中、播磨国　揖保郡龍野町　醤油地売業「林田屋」にて店の奉公人の娘の祖母が店に逗留中に病を患い、いよいよ臨終となった時、火車が現れたと言う。店のものが誰一人見えないのにもかかわらず、娘にのみ見え、家の外からおぞましい姿の地獄の鬼が燃え盛る火の車を引いてやってきて祖母を車に放り込み連れて行こうとしていたと言う。それを取り戻そうとし錯乱し外へ出て行こうとして、他の奉公人に引き戻されたと言う。娘の袖に焼け焦げた跡、火傷の跡まであったと言う。」。