準安定原子
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準安定原子(Meta-stable atom、メタステーブル原子)とは励起状態の原子のうちでも特に長寿命のもの。
基底状態の原子に外部から光などのエネルギーが与えられると、安定軌道の電子が高い軌道へと遷移を起こし一時的に高エネルギー状態となることがある。これが励起である。 通常の原子では、こういった不安定な高エネルギー状態(励起状態)の原子はマイクロ秒程度の寿命の後で光などのエネルギーを放射して基底状態へと戻る。希ガスのいくつかの原子では励起状態を比較的長時間保つことがある。21世紀初頭現在、研究が進められている比較的新しい物理領域である。
コンピュータ・シュミュレーションでは励起状態のヘリウム2個が結合して分子を作る事も予想されている。シュミュレーションでは常温から500℃までの領域で安定したヘリウム分子の固体が出来るとされる。このような高エネルギーを内抱する原子や分子は、これ以上の高温では励起状態を維持できずにエネルギーを放射して基底状態へ戻ろうとするため、大きなエネルギーを放つと考えられている。理論値では、重量で比較すると最強の爆薬の300~500倍のエネルギーを蓄え放出することになる。
ヘリウムの準安定原子は「準安定ヘリウム」と呼ばれる。ヘリウムに続いて水素でも準安定原子の存在が確認された。
[編集] 出典
- 防衛技術協会編 「未来兵器の科学」 日刊工業新聞 ISBN 978-4-526-05883-7