家制度
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家制度(いえせいど)とは、明治民法に採用された家族制度であり、親族関係のある者のうち更に狭い範囲の者を、戸主と家族として一つの家に属させ、戸主に家の統率権限を与えていた制度である。江戸時代に発達した武士階級の家父長制的な家族制度を基にしている。
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[編集] 「家」の概念
家は、戸主と家族から構成される。戸主は家の統率者であり、家族は家を構成する者のうち戸主でない者をいう。
一つの家は一つの戸籍に登録される。つまり、同じ家に属するか否かの証明は、その家の戸籍に記載されている者であるか否かにより行われた。このことから、民法の条文の「父ノ家ニ入ル」「家ヲ去リタル」という(当時の)表現は、戸籍の面からは、それぞれ「父の家の戸籍に入籍する」「家の戸籍から除籍された」ことを意味する。
なお、昭和22年法律第224号戸籍法では、孫を養子にしない限り三代以上の親族が同一戸籍に記載されない制度になっている(三代戸籍の禁止)が、家制度においては家の構成員は二代に限られなかったので、戸籍上も制約はなかった。
[編集] 戸主権・戸主の義務
戸主は、家の統率者としての身分を持つ者であり戸籍上は筆頭に記載された。このため、戸籍の特定は戸主の氏名と本籍で行われることになる。
戸主は、家の統率者として家族に対する扶養義務を負う(ただし、配偶者、直系卑属、直系尊属による扶養義務のほうが優先)ほか、主に以下のような権能(戸主権)を有していた。
- 家族の婚姻・養子縁組に対する同意権
- 家族の入籍又は去家に対する同意権(ただし、法律上当然に入籍・除籍が生じる場合を除く)
- 家族の居所指定権
- 家族が戸主の同意なしに居所を定めた場合や婚姻・養子縁組した場合における、家籍排除権
[編集] 戸主の地位の承継(家督相続)
戸主の地位は、戸主の財産権とともに家督相続という制度により承継される。相続の一形態であるが、戸主の死亡を前提とした制度ではなく、死亡以外にも隠居、国籍喪失なども相続開始原因とされていた。また、家の統率者としての地位の承継を含むので、遺産相続と異なり常に単独相続である。
家督相続人(新戸主)となる者は、旧戸主と同じ家に属する者(家族)の中から、男女・嫡出子庶子・長幼の順で決められた上位の者、被相続人(旧戸主)により指定された者、旧戸主の父母や親族会により選定された者などの順位で決めることになっていたが、通常は長男が家督相続人として戸主の地位を承継した。
[編集] 家の設立、消滅
新たに家が設立される形態として分家、廃絶家再興、一家創立が、家が消滅する形態として廃家、絶家がある。
- 分家
- ある家に属する家族が、その意思に基づき、その家から分離して新たに家を設立することをいう。本家の統率の観点から、分家するためには戸主の同意が必要とされた。
- 廃絶家再興
- 廃家、絶家により消滅した家を、復活させることをいう。家を復活させるとはいっても、既に戸主の地位を失った者の家督相続を伴わないため、専ら家名を承継することに意味があった。
- 一家創立
- 新たに戸主になる者の意思とは無関係に、法律の規定により当然に家が設立される場合をいう。例えば、父母が不明である棄児、戸主の同意がないために父母の家に入ることができない非嫡出子、外国人が帰化したとき等の場合に、本人の意思とは無関係に家が設立され戸主となった。
- 廃家
- 戸主が、婚姻や養子縁組などの理由により他の家に入るために、元の家を消滅させることをいう。ただし、一家創立によって戸主になった者は自由に廃家できたが、家督相続により戸主になった者が廃家する場合は裁判所の許可を必要とした。
- 絶家
- 戸主を失ったために家督相続が開始されたにもかかわらず、家督相続人となる者がいないために、家が消滅することをいう。
[編集] 廃止された理由等
戸主の権限は家の統率者としての権限であるため、同じ親族であり、親等が同じであったとしても、同じ家に属するか否かにより戸主による統率を受けるか否かが異なってくる。それに加え、家族の身分関係の変動(婚姻、養子縁組など)について戸主の同意を必要とするものがあったため、家族が家を去るか否かにつき戸主の意向に左右されることになる。これらの事情が、親族の権利関係が戸主の意思に左右される原因となる。
このように、家制度には家を統括する戸主の権限により家族の権利が犠牲にされる側面があったため、憲法24条等に反するとして、日本国憲法の施行に伴う民法の応急的措置に関する法律(昭和22年法律第74号)により、日本国憲法の施行日(1947年5月3日)に廃止された。ただし、牧野英一ら保守的な法学者の巻き返しもあり、「家族の扶養義務」などの形でその一部は存置されることとなった。
[編集] 注意点
特に日本国憲法が施行された時期の文献を中心に、本項目の「家制度」のことを「家族制度」と呼称している場合がある(特に、家制度が廃止されたことを「家族制度の廃止」と称していたことが多い)。当時としては家制度=家族制度という観念があったためであるが、このような事情があるため、日本の家族制度に関する文献を読む際は、「家族制度」という文言を家制度の意味で使用しているのか家族制度一般の意味で使用しているのかに注意する必要がある。家族制度の議論に際し、両者を混同している例がたまに見受けられる。