大学崩壊
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大学崩壊(だいがくほうかい)は、1990年代の後半、小・中学校の現場で使われるようになっていた授業崩壊を大学に転用して語られるものである。
[編集] 概要
その意味するところは大学生の学力低下にとどまらず、大学が研究教育機関として機能しなくなり、経営危機を迎えることを指す。学生数が減少することに伴って生じる経営悪化、その結果としての教員数の削減、学生確保のための広報業務を教員に過剰に負担させることにより多忙になる教員の研究業績低下、経費削減の対象としての研究費の支給削減、その結果起こる優秀な教員の流出、教育レベル低下による在学生の退学者増加、定員割れに伴う公的補助金の支給停止、イメージ悪化によるさらなる学生減少、といった負のスパイラルに陥った大学が経営破綻に陥ることを指す。
1991年から大学の設置基準が大幅に緩和され、また大学設置基準が大綱化されるに至った。それにより新設大学が増え学生が分散化する一方で、都市部の有名大学が学部を新設し学生の囲い込みをいっそう強化した。その結果、都市部の総合大学に代表される強い大学と、地方の単科大学や短大に代表される弱い大学の二極化が進んでいる。少子化の流れの中、青少年の大学進学者数が今後下がることが予想される状況での設置基準の緩和は、大学の存続を市場原理に委ねることで、大学が自然淘汰されることを国策として容認したことを意味する。「地方」や「単科」といった単に条件の不利な大学ばかりが淘汰されることのないよう、文科省は研究機関として優秀な大学を支援するCOEや教育に努力する大学を選定する教育GP、研究教育機関として最低水準の条件を満たした大学を認定する大学認証評価などの施策をすでに進めている。それでも、レジャーランド化に歯止めがかからない。
[編集] 参考文献
- 大津悦郎 『大学がどんどんつぶれる』 エール出版社、1993年。ISBN 978-4753911851
- 梅津和郎 『潰れる大学・伸びる大学・経営診断』 エール出版社、1999年。ISBN 978-4753918638