公衆便所
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公衆便所(こうしゅうべんじょ)とは、公衆トイレとも呼ばれ、使用者を特定せずに、広く一般に開放されている共用便所(トイレ)である。
主に地方公共団体が、街頭や公園などに設置・管理する場合が多いが、国の外郭団体が設置する国立公園内の公衆便所や、商店会など民間が設置管理するものもある。 特に通常の公園に設置されたものは、担当の清掃員が頻繁に立ち回ることが困難であるためか、あまり衛生的ではなく、建物もきれいとは言い難いことも多いが、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや道の駅の休憩施設、鉄道駅、観光地の便所など、よく管理された便所は衛生的であるし、建物の外観などに工夫を凝らしたものもある。
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[編集] 設備
多くの公衆便所に備わっているのは便器を備えた個室、手洗い・化粧直しのための洗面台で、男子便所の場合は、これに加え、利用効率向上のために並列された小便器が設置してある。
個室に備えられた便器は、和式・洋式の両方があり得る。かつては和式のみを備えた便所が一般的であったものの、一般家庭での洋式の普及により、近年では洋式便所も備えることも多いが、すべて洋式便器という場合は少ないようである。一般に、その楽な姿勢から洋式便所が好まれるものの、公衆便所においては、洋式便所は不特定多数の人間の肌が直接触れることから不衛生と嫌う人も多い。この為、近年では使い捨て便座シートや消毒液などが設置されている場合がある。
かつては非水洗が主流であったものの、現在は多くが水洗式である。しかし、山地・海岸などでは、今でも汲み取り式便所が用いられている。水洗に於いても簡易水洗などがあり、山や観光地などに於いて排水を直接処理することが困難な地域でよく用いられている。
また駅や観光地では、個室内に幼児を座らせておく椅子や、ベッドを備え付けたりおむつを替えるためのベビースペースを設けている所も多い。
手洗いの水の出しっぱなしを防ぐため、自動水栓を備えることも増えてきている。
[編集] 構造
公衆便所は、多くの場合、男女の別のために二つで区切られているか、車椅子での利用を含めて三つに区切られている。
それぞれの区画は、個室や、男子用小便器が備えられている。流しについては、それぞれの区画にある場合と、共用スペースにある場合とがある。
また、清掃を迅速に行うため、特定の時間になると床一面に自動的に水が流れる仕組みのものも登場している。
[編集] 建物
観光地では、観光物にちなんだトイレが設置されていることがある。
紫雲出山スカイライン麓に設置された公衆トイレ |
横浜中華街に設置された公衆トイレ |
[編集] 有料公衆便所
基本的に公衆の利益のために無料で開放されているのが公衆便所ではあるが、衛生面を考えると十全な管理が必要であり、そのためには経費がかかる。税金だけではこの管理をすることが困難であるため、有料化が試行されるようになった。主にチップトイレと言われるもので、使用者が任意の料金を支払うというシステムになっている。当然のことながら、採算が合うためには、多くの使用者が見込まれる場所であることが望ましく、したがって、大型のターミナル駅に設置されていることが多い(欧米の公衆トイレはこの方式が一般的である)。
(世界)世界史最古の有料公衆便所は、西暦74年にローマ帝国で設置されたものである。これはウェスパシアヌスが内乱後に財政立て直しのために行ったもので、敵対者の嘲笑を買ったが、それに対する反論、Pecunia non olet(「金は臭わない」)は有名な文句である。