住民監査請求
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住民監査請求(じゅうみんかんさせいきゅう)とは、住民が、自らの居住する地方公共団体の違法若しくは不当な財務会計上の行為があると認められる場合、その地方公共団体の監査委員に対し監査を求め、その行為に対し必要な措置を講ずべきことを請求することができる地方自治法第242条で定めている制度である。住民訴訟を行いたい場合は、先に、この住民監査請求を必ず行わなければならない。。
請求権者たる住民とは、法律上の行為能力が認められる限り、法人たると個人たると、成年であると未成年であると、日本国民であると外国人であるとを問わないものとされるまた、直接請求のように一定数の連署をもって行う必要はなく、一人で行うこともできる(第242条1項)。 この点、事務監査請求(地方自治法第75条)の場合は、選挙権を有している者であることが必要であり、また2%以上者の連署を求めていることに比べると、住民監査請求の方が容易にできる、といえる。
- 地方自治法について以下では、条数のみ記載する。
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[編集] 請求できる事項
199条第4項の規定により、監査委員は、毎会計年度少くとも1回以上期日を定めて第1項の規定による監査をしなければならないとしているが、242条第1項では地方公共団体の住民は、
- 当該普通地方公共団体の長若しくは委員会若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員について、
- 違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担がある(当該行為がなされることが相当の確実さをもつて予測される場合を含む。)と認めるとき、又は
- 違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、
これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、当該行為を防止し、若しくは是正し、若しくは当該怠る事実を改め、又は当該行為若しくは怠る事実によつて当該普通地方公共団体のこうむつた損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求することができると規定されている。
なお、住民監査請求は特別地方公共団体(特別区・地方公共団体の組合・財産区・地方開発事業団・合併特例区)についても242条の規定が準用されており、それぞれ監査委員(地方開発事業団については監事)に対し、住民監査請求を行うことが可能である。ただし、地方公共団体ではない外郭法人(財団法人や各種公社など)については直接住民監査請求を行うことができない。
[編集] 請求できる期間
住民による監査請求は、正当な理由がない限り当該行為のあつた日又は終わつた日から1年を経過したときは、請求することができない(242条第2項)。
[編集] 監査の結果
住民の請求により監査委員が監査を行い、請求に理由がないと認めるときは、請求は却下となり理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともにこの結果を公表しなければならない。また、請求に理由があると認めるときは、当該普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関又は職員に対し期間を示して必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を請求した人に通知し、かつ、これを公表しなければならない(242条第4項)。
なお、当該行為が違法であると思料するに足りる相当な理由があり、当該行為により当該普通地方公共団体に生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、当該行為を停止することによつて人の生命又は身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがないと認めるときは、監査委員は、当該普通地方公共団体の長その他の執行機関又は職員に対し、理由を付して監査結果の公表の手続が終了するまでの間当該行為を停止すべきことを勧告することができる。この場合においては、監査委員は、当該勧告の内容を請求した人に通知し、かつ、これを公表しなければならない(242条第3条)。
[編集] 証拠の提出・陳述
監査委員は、監査を行うに当たつては、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えなければならず、その陳述の聴取を行う場合又は関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員の陳述の聴取を行う場合において、必要があると認めるときは、関係のある当該普通地方公共団体の長その他の執行機関若しくは職員又は請求人を立ち会わせることができる(242条第6項、第7項)。
[編集] 監査の方法
住民請求による監査委員の監査及び勧告は、242条第1項の規定による請求があつた日から六十日以内にこれを行なわなければならない(242条第5項)とされ、監査及び勧告についての決定は、監査委員の合議によるものとされる(242条第8項)。
[編集] 判例
- 損害賠償(通称 犀川町長損害賠償)(最高裁判例 昭和58年07月15日)
- 埼玉県議旅行損害賠償請求事件(最高裁判例 平成14年07月16日)
- 損害賠償請求事件(最高裁判例 平成14年09月12日)