ワールド・ベースボール・クラシック
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ワールド・ベースボール・クラシック(World Baseball Classic 略してWBCとも呼ばれる)は、北中米、アジア、欧州、アフリカ、豪州から合計16の国と地域が参加する、野球の国際大会のことである。2006年3月に第1回大会が開催された。
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[編集] あらまし
メジャーリーグでは米国国外出身の選手が増え続けており、また野球界の発展のためにもさらなる国際化は必要不可欠との認識があり、メキシコや日本といった北米地域以外で初めてのMLB開幕戦を行うなど「グローバル戦略」を掲げて来た改革派のメジャーリーグコミッショナー、バド・セリグの提唱により、関係各所でプロ選手(特に国際野球連盟(IBAF)に参加していないメジャーリーグ選手)参加による真の世界一を決める国際大会の開催へ向けて協議がなされて来た。その結果、2006年に第1回大会(アメリカ合衆国をメインに、プエルトリコ、日本の3カ国・地域共催)の開催が決定したのがワールド・ベースボール・クラシックである。
MLB機構はこの大会を五輪に代わる野球界主導の最高峰の国際大会として育てたい意向で、予定では第2回を3年後の2009年に、その後は4年おきに続けて行くことになっている。
MLBでは夏のオールスターゲームが別名Mid Summer Classic、同様に秋のワールドシリーズがFall Classicと呼ばれている。"World Baseball Classic"という名称には、これらの重要な公式行事と同格であるというメジャーリーグ機構の大会への思いが込められている。
[編集] 大会概要
[編集] ルール
- 16の参加国を4チームずつ4組に分け、それぞれの地域で1次リーグを戦う。さらに各組の上位2チーム、合計8チームが4チームずつの2つのリーグに分かれてアメリカで2次リーグを戦い、それぞれのリーグの上位2チームが決勝トーナメントに進出。その4チームで準決勝、決勝を行い優勝を決める。3位決定戦は行われず準決勝敗退の2チームが3位。なお、2次リーグから決勝戦まではアメリカ西海岸での開催が予定されている。
- 代表チームは各国ベンチ入り27人(投手12人以上)で構成され、メジャーリーグ選手の参加も妨げられず、メジャーリーグ全30球団からは1球団当たり最大9人(全270人)まで参加可能。
- 正式な開催要項が2005年オールスターゲームの前日に発表された。
- WBCの運営委員会が2006年1月23日、ニューヨークで開かれ、投球数制限など特別ルールが固まった。投球数は1次リーグが65球、2次リーグが80球、準決勝と決勝は95球に制限される。投球中に制限数を迎えた投手は、その後の投球数に関係なく、その対戦打者が打席を終えるまで投球が認められる。
- 登板間隔は、50球以上投げた場合は中4日とする。30球以上50球未満の場合と30球未満でも連投した場合には中1日が義務付けられる。
- 2次リーグまではコールドゲーム規定(5・6回15点差、7・8回10点差)とする。また延長戦は14回までとし、引き分け時の再試合は行わず、その場合は勝率を0.5勝と見なして計算する。
- 1次、2次の各リーグ戦でチームの勝率が並んだ場合の順位は
- 直接対決に勝ったチーム
- 当該チーム間の試合における1イニングあたりの失点が少ないチーム
- 当該チーム間の試合における1イニングあたりの自責点が少ないチーム
- 当該チーム間の試合における打率の高いチーム
- の優先順位。以上の条件でも決着しない場合、抽選が行われる。
- 登録選手枠は1チーム30人で、最初に行われる試合の5日前までに固定する必要がある。怪我人が出てもそのラウンドが終わるまでは補充できない。
- 大リーグ所属選手の参加については、大リーグ1球団につき14人(マイナー組織含む)の参加を上限とする。ただし、昨年8月31日時点で大リーグ40人枠または故障者リストに載っていた選手の場合は1球団10人までしか派遣できない。
[編集] 選手の出場資格
どの国に属するかはオリンピック憲章のように明確には決められておらず、アレックス・ロドリゲスなど複数の国において代表資格を持つ選手が多い。そのための軋轢も生まれている。
- 選手は下記のいずれかに該当する場合、各代表チームへの出場資格を持つ。
- 当該国の国籍を持っている。
- 当該国の永住資格を持っている。
- 当該国で出生している。
- 親のどちらかが当該国の国籍を持っている。
- 親のどちらかが当該国で出生している。
[編集] 薬物に関する規定
国際野球連盟(IBAF)によれば、WBCにおいてドーピング検査を実施するのは世界アンチ・ドーピング機構(WADA)で、メジャーリーグの規定よりも禁止薬物の範囲が広い国際ルールが適用されるはずであった。しかし、実際にはWADAが正式な意見書を提出するほどにWBCでの禁止薬物規定は少なかった。検査はWBC開催前と開催中に実施され、開催中は任意の試合で各チーム2選手を選び出し、試合後に検査を行う。メジャーリーグの組織に属する選手には合計108回の検査が行われる予定で、リーグ機構と同選手会はこれに同意している(2006年の大会においてはIBAFの発表によると全出場選手の22.5%が検査を受ける事になるという)。アテネ五輪予選では1度目の違反で即刻出場取り消し、さらに2年間の出場停止が科されたが、WBCでも同様の罰則が科される。この場合、2回目の違反で国際試合から永久追放となる。ただし、メジャーリーガーがWBCの検査で陽性の判定を受けても、メジャーリーグにおける薬物規定の罰則は適用されない。なお、第1回大会でこの規定が適用されたのは韓国の朴明桓投手(斗山ベアーズ)のみであった。
[編集] 利益分配率
詳細は発表されていない。大会収益が出た場合、その47%が賞金に、53%が各組織に分配される。大会収益が出ない場合、MLBが赤字分を負担する。賞金47%の内訳は、優勝チームが10%、準優勝チームが7%、準決勝敗退2チームが5%、2次リーグ敗退4チームが3%、1次リーグ敗退8チームが1%の予定。各組織53%の内訳は、MLB機構が17.5%、大リーグ選手会が17.5%、NPBが7%の予定(他組織の分配率は不明)。
[編集] 大会ロゴ
中央に地球儀と野球のボールを組み合わせたボールを配置し、その周りを4枚のスクリューの羽根状のものが包み込む意匠で、「グローバルベースボール」と名づけられた。4枚の羽根状のものは、青色(右上)、黄色(左上)、赤色(左下)、緑色(右下)の4色が塗られている。黄色の羽根の外側に「'06WORLD」、青色の羽根の外側に「BASEBALL」、緑色の羽根の外側に「CLASSIC」という文字が記されている。また、強豪国の多いスペイン語圏のカリブ海などの国に配慮し、スペイン語のロゴも用意されている(上段から順に「'06CLASICO」「MUNDIAL」「DE BEISBOL」)。
[編集] 優勝トロフィー
WBCの優勝トロフィーは、ティファニー社の職人が200時間以上の時間をかけて制作した。銀細工の老舗であるティファニーらしく、材質は純銀製である。
- 高さ:25インチ(約63.5cm)
- 重さ:30ポンド(約13.6kg)
- 材質:純銀(スターリング・シルバー)
デザインのモチーフは、WBCのロゴである「グローバルベースボール」であり、台座・4枚の板・ボールから構成される。4段にカットされている台座は、4ラウンドのトーナメント(1次リーグ、2次リーグ、準決勝、決勝)を表し、台座から上方に向けて斜めに広がる4枚の板と、さらに上部中央に向かう羽状の板は、16ヶ国で構成される4つのリーグ(1次リーグ)を表している(その意匠は日本の四つ巴紋に似ている)。また、4枚の板によって支えられた中央の野球ボールは、地球(グローバル)を象徴している。
2006年2月22日、プエルトリコのサンフアンで行われた初公開の披露式には、WBCの親善大使を務めるトミー・ラソーダ(元ドジャース監督)らが参加した。
[編集] メダル
優勝チームに金メダル、準優勝チームに銀メダルが、選手・監督・コーチ全員に授与される。他に銅メダルなどはない。
[編集] 歴代大会結果
開催年 | 開催国 | 決勝戦 | ベスト4 | ||||
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優勝 | スコア | 準優勝 | 3位 | スコア | 4位 | ||
2006年 詳細 |
アメリカ合衆国 |
日本 |
10 - 6 | キューバ |
3位決定戦はなし。準決勝進出の韓国とドミニカ共和国はベスト4という位置付け。 | ||
2009年 |
[編集] 関連項目
- 野球
- アジアシリーズ
- 日本シリーズ
- IBAFワールドカップ
- IBAFインターコンチネンタルカップ
- アジア野球選手権大会
- 2006 ワールド・ベースボール・クラシック
- 2006 ワールド・ベースボール・クラシック日本代表
- 野球日本代表
- 世界身体障害者野球大会(もうひとつのWBC)
[編集] 外部リンク
- World Baseball Classic(公式ウェブサイト)(英語・一部日本語)
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出場国 |
日本 - キューバ - 韓国 - ドミニカ共和国 - アメリカ合衆国 - メキシコ - プエルトリコ - ベネズエラ - 台湾 - 中国 - カナダ - 南アフリカ - オランダ - パナマ - イタリア - オーストラリア |
開催球場 |
東京ドーム - チェイス・フィールド - スコッツデール・スタジアム - ヒラム・ビソーン・スタジアム - クラッカー・ジャック・スタジアム - エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム - ペトコ・パーク |
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2006 | 2009 |