レンズと悪魔
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『レンズと悪魔』(れんずとあくま)は、六塚光/著、カズアキ/イラストのライトノベルシリーズである。角川スニーカー文庫刊。
目次 |
[編集] ストーリー
- 遠い星で、人間たちは「悪魔」を使役するようになっていた。無色透明の円盤(レンズ)で召喚される「悪魔」は、大気に含まれる塵から生まれるものである。人間は「悪魔」を虚体として身につけるのだ。
- 六年前に謎の死を遂げた父チェビアトと暮らしていた、美貌の首都『ブルティエール』に帰還した青年、エルバは、そこで父にまつわるトラブルに巻き込まれてしまう。父を知る少女、テッキに助けられ、彼女の博物館に誘われるが、彼女はエルバの持つ、チェビアトの遺物の謎の円盤のことを知っているらしい―。その円盤が、エルバを壮絶な戦いへと導く鍵となっていく。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] 登場人物
[編集] 主な登場人物
- エルバ・ナイトロンド
- 本作の主人公。父チェビアトの死の謎を探る、西部人の19歳の青年。金髪碧眼。左腕にホルダーをつけている。青色のフードつきの服を着ている。
- 短気かつ少々乱暴的で、気に入らないことには逆上しトラブルを巻き起こす時もある。だが責任感は強く、一度決めた事は遣り通す芯の強い一面も。
- 東部と西部の両方での生活を経験しているため、東部においては東部の、西部においては西部のしきたりに従うが、基本的には西部のスタイルを気に入っている様子。
- 「俺には、この世において存在を許せないものが三つある」と前置きをして相手を非難するのが癖。ちなみに、嫌いなもののうち1つめと2つめはその場面に関係のないもので、3つめに挙げるものが非難の対象であることが多い。
- 容貌はチェビアトと間違われるほどの父親似。目つきが悪く、右目と両腕には六年前の父親殺害時に負わされた傷がある。
- 八眼争覇に参加したのは、六年前にエルバの目の前で父親を殺した者への復讐をするため。「氷結の魔神」の円盤を持つ。
- アルテキア・バベルハイズ
- 通称テッキ。魔王の瞳を守る守護家系のうちバベルハイズ家の血をひく唯一の人物で、悪魔を展示する『バベルハイズ自然史博物館』の館長を務めている18歳の少女。
- 赤髪の長髪、後ろ髪は縦ロール風になっており、目の色は金色。黒の豪奢なゴシック調に近いドレスを身に纏っており、黒の帽子を被っている。とある理由で右手には義手代わりの万力をつけている。
- 責任感・義務感が強い。サクラとは姉妹同然の仲で、互いを深く理解している。ファルナとは犬猿の仲。
- 博物館は資金難から現在閉館中であり、普段は探偵業を営んでいる。サディストな一面を持ち、巷で「フラッシュ・ヴァイス(閃光の万力)」と言えば、「素手で悪魔を殺す」「歩いた後には墓石が生える」と恐れられている。
- 八眼争覇に参加したのは一族の悲願である魔王の再封印と『バベルハイズ自然史博物館』を復興させるため。「無形の魔神」の円盤を持つ。
- サクラ・イシザワ
- 側頭部に角を持ち、眼鏡をかけていることが特徴の、オーラン先住民の18歳の少女。
- 茶色の髪に茶色の目を持ち、横の髪が長く、後ろは短髪。浴衣に近い服を着ている。
- 誰に対しても優しく、おっとりとしているマイペースな性格で天然ボケな一面もある。怒る事自体滅多に無いが、戦闘時は好んで大型の悪魔を使役し、力押しの戦法を得意とする。その実力は確かなもので、テッキと共に八段の免許を所有している。エルバの事を信用している。また、テッキとは姉妹同然の仲。カエデとも仲が良く、姉の様に慕っている。
- 過去に「オーラン虐殺」の事件により、全てを失った。この時のサクラは父親が神殿の一室に押し入れた事により助かる。兄の生死は不明だが、生きていると信じている。
- ファルナ・エレイスン
- エルバの従妹。西部州の果てであるブラックストーン州で育つ。ブルティエール大学悪魔学部に合格し、今年からブルティエールに引っ越してきた。背が低く小学生に見えるが、れっきとした19歳。
- 野生児という言葉がピッタリの風貌で、勝気かつ男勝りであり少々口が悪い。テッキとは犬猿の仲。
[編集] 八眼争覇運営関係者
- ブラナ・ラ・モート
- 「魔王の残滓」。八眼争覇の主催者。少女の姿と声を持つが、話し方はまるで老人。白い奇妙な神官服のような衣装を着ており、顔を白いフードで半ば隠している。肌は気味が悪いほど白く、両目は閉ざされている。話し方は丁重、だが全てを見透かした様な言動が目立つ。
- グレン・ダール・キングスリー
- 八眼争覇の監視を務める者。キングスリー家史上最強と謳われ、過去の八眼争覇で優勝し永遠の若さを手に入れた。
[編集] 八眼争覇参加者
- エルバ・ナイトロンド
- 主な登場人物を参照。
- アルテキア・バベルハイズ
- 主な登場人物を参照。
- カエデ・ニカイドウ
- オーラン先住民の少女。サクラの幼馴染みで、妹の様に気遣っている。知らない者に対しては冷たく、鋭い眼光で睨み付ける。作中ではエルバを何度も睨み、エルバは「殺人眼光女」と言った。
- 刀の使い手でもある。また、マロ・マロの力を借り、身体から雷を出し、相手にぶつける攻撃が可能。
- 八眼争覇に参加した理由は一族を虐殺した者に復讐をする為。「電光の魔神」の円盤を持つ。
- サイクス・バルヒーヨ
- 次期総督候補の連邦議会議員。十年前の「西部内乱」で劣勢の東部軍を逆転勝利に導き、後に政界へ転身。
- 軍人出身の堂々とした態度と精悍な容貌から国民の人気も高い。
- 「獄炎の魔神」の円盤を持つ。
- クラヴリー・ガーディアン
- 元ドース連邦軍少佐。「西部内乱」において「オーラン虐殺」の首謀者とされ、デスドレッド監獄島へ流罪となっている。
- 十年前の真実を明かすため、「虚空の魔神」と契約。島からの脱獄を決行する。
- コレル・バガテル
- 魔神とともに「デーモンヘイター」として強奪を行っていた。短気で横暴かつ口が悪い。挑発に乗りやすい。
- 八眼争覇に参加した理由は自分と母を捨てた父・アンテノラへの復讐を果たすため。「剛力の魔神」の円盤を持つ。
- クルト・キングスリー
- 魔王の瞳を守る守護家系の一つであるキングスリー家の血筋の男。
- ブルティエール大学悪魔学部に在籍している。頭がまるで爆発したかの様な髪型。
- ナルシストで、自分の学習能力などを絶対的に認めている。何事にも一位になる事に執着している。
- 八眼争覇に参加したのは一族最強の名を手に入れ、一族を呪いから解放するため。「幻影の魔神」の円盤を持つ。
[編集] 過去の八眼争覇参加者
- チェビアト・ナイトロンド
- エルバの父親。六年前の八眼争覇に参加し、死亡。「氷結の魔神」と契約していた。正義感が強い。
- クラエス・ルンホルム
- 六年前の八眼争覇に参加していた。「剛力の魔神」と契約していたが、「獄炎の魔神」に敗れ、両目の視力と左膝から下を失った。
- しばらくして記憶障害になりながらも帰還を果たすが、現在は敗北者として酒に溺れる日々を過ごしている。
- グレン・ダール・キングスリー
- 運営関係者を参照。
- アンテノラ
- ドース連邦最大の犯罪組織「マーレボルジュ」の首領。
- 一般にはアンテノラとはマーレボルジュの首領が代々継いできた名前と思われているが、真実は八眼争覇を勝ち抜いて不老の力を得た一人の男である。
- たびたび魔神に関係のある事件を博物館へ依頼してくる。
[編集] 魔神
- ルナ・ルガ
- 「氷結の魔神」。塵器はサーベル。円盤の色は赤。赤い霧で物質を拘束することができる。
- 白色と水色のグラデーションの長髪に赤目。右目に眼帯をつけている。顔立ちや声など、どれをとっても中性的。体には赤色の刺青の様な模様が刻まれている。白いシャツの上に黒のコートの様なジャケット、腰には腰布を巻いており、いつも裸足。
- お気楽で楽天的な性格の持ち主。冗談をサラリと言い、エルバを怒らせる。
- 歴代のバベルハイズ家の人間に召喚されていたが、前回の八眼争覇では、エルバの父チェビアトと契約をしていた。
- 身体的には男寄り。
- ボル・ボル
- 「無形の魔神」。塵器は矢。円盤の色は緑。自身の色や形を自在に変え、2~3体ぐらいなら分裂もできる。
- 普段の姿は八本の触手を持ち、胴体には大きな目と口が一つずつある。タコに近い形をしている。
- 豪快な笑い方が特徴的。また、性格も豪快かつ大胆であり、ムードメーカー的存在でもある。多少口は悪いが、観察力・洞察力に優れており、意外にも物知りである。
- マロ・マロ
- 「電光の魔神」。塵器は鉄鞭。円盤の色は橙。
- 平安貴族のような容貌で、顔は異常なまでに白く、烏帽子や束帯のような装束をまとっている。
- 顔には目鼻を持たず、魔神の特徴である単眼は舌に付いている。語尾に「……~おじゃる」がつく。
- ネア・ネア
- 「獄炎の魔神」。塵器は大砲。円盤の色は青。塵そのものを燃やす炎を出せる。
- 長髪に縦ロールの髪型をしている。女海賊のような風貌をしており、胸を異常に強調している。つば広の帽子に高い襟の上着は胸元が大きく開いている。下半身はズボンとブーツ。腰にはサーベル・刀・短剣をつけている。右目には眼帯。いつかの八眼争覇で敗北して以来ルナを気に入っているらしく、「ルゥゥナルナァァ」とねっとりした呼び方をする。
- 身体的には女寄り。
- ヤミ・ヤタ
- 「闇照の魔神」。円盤の色は黒。
- ミナ・ミグ
- 「虚空の魔神」。塵器はガントレット。円盤の色は黄。大気中の塵を自由に操り、塵の真空状態をつくることが出来る。
- ストレートの長髪。メイドの様な格好をしており、背中は大きく露出している。
- 大人しく、喋る事は少ない。口調は事務的。感情的になる事は少なく、常に無表情でクールな印象がある。クラヴリーの事を信頼しており、同時に敬愛している。
- 両手には羽衣を巻きつけており、それを武器として使用する。両目は閉ざされており、前髪に隠れた額に単眼を持つ。
- 身体的には女寄り。
- アギ・アダ
- 「剛力の魔神」。塵器は斧。円盤の色は藍。物凄い筋力を持つ。
- 顔に、一つ目の描かれた布を巻く。礼服を着、顎にはひげを生やしている。
- 見た目に違わず紳士的な性格で、常に敬語で話す。未契約のエルバと対峙した時には契約を促して魔神同士の戦いを望むなど、八眼争覇の意義を重んじる。
- 身体的には男寄り。
- ベル・ベム
- 「幻影の魔神」。塵器は鞭。円盤の色は紫。一度紋様を読んだことのある悪魔をレンズを介さずに召喚することができる。
- ジャノメチョウがトレードマークで、それが眼帯代わり。フリルのついた可愛らしい洋服を着ている。言葉は片言。
- 身体的には女寄り。
[編集] 地名
- ドース連邦
- 作中世界の国家。十三の州から構成されており、総督を頂点とした議会制政治が敷かれている。
- 大きく東部と西部に分けることができ、首都のある東部の文化は洗練されているが、西部は未開拓の地も多く実質を重んじる傾向が強い。
- 両者の対立は十年前に「西部内乱(西部独立戦争)」として火を噴くことになったが、東部軍が勝利。
- ブルティエール
- 物語の舞台となる、ドース連邦の首都。ブルティエールは東部文化の発信基地である。
- 上空から見ると、八つの同心円状の街路を見ることができ、その中央に総督府がある。そこから八本の直線の街路が放射線状に延びており、ブルティエールは、その円と直線の街路によって六十四の街区に分けられている。最も内側の第一円の街区は、時計回りに十一区、十二区、……十八区と名づけられており、これが第八円まで続いている。
[編集] 用語
- 円盤(レンズ)
- 悪魔を召喚するためのもの。無色透明。一枚に見えるが、実は二枚重なっており、召喚するときはそれが分かれ、召喚主の両目にはりつく。そうすることで悪魔の虚体を身にまとうことが出来る。
- 召喚主は召喚した悪魔の能力を利用することができ、腕力や脚力の増大はもちろん、飛行できる悪魔なら空を飛べるし、魚型の悪魔なら潜水もできる。
- この円盤は人類に大きな繁栄をもたらし、現在では悪魔召喚が日常的に利用されている。
- 逆流(バックワード)
- 召喚された悪魔が外部からダメージを受けた場合、召喚主にそのダメージが再現される現象。実際に怪我などはしない。
- 特に翼や角など召喚主が持たない部位にダメージを受けると、まさに「想像を絶する」痛みを受けることになる。
- これを幻肢逆流(ファントムペイン)と言い、強力かつ特異な体型をした悪魔の扱いを難しくしている原因である。
- 紋様(クリプト)
- 悪魔ごとに違う、悪魔の形式番号のようなもの。一般にはその存在は知られていない。
- 核紋様(コアクリプト)
- 魔神の持つ、一番奥深くにある紋様。
- 魔神
- 悪魔の上位存在。魔王によって使役されていて、八眼争覇において契約者と共に戦う存在。
- 通常の悪魔と違って自らの意識を持ち、召喚されても召喚主と一体化することはなく別行動を取れる。
- 魔王の八つの瞳から一体ずつ産まれたとされ、体型や能力は様々であるがその全てが隻眼なのが特徴。
- 魔王戦争
- かつて、星を支配していた魔王と呼ばれる悪魔を、人類が打ち倒して封印したという戦い。そのときに、ドース連邦がつくられた。
- 数百年前の出来事だが、現在ではおとぎ話として扱われている。
- 八眼争覇(ディアボリックパーティー)
- 封印されていた魔王がその意思だけを覚醒させ、地上に復活するために開催した、魔王の依代を選ぶための戦い。魔神の八枚の円盤を、八名の依代候補者に授けて相争わせ、勝ち残ったものを依代とすることになっている。
- 参加者には、魔王の力で「悪魔に魂を売ってでも」叶えたい望みを手伝う(完全に願いを叶える訳ではない。仇討ちが望みなら、その相手と引き合わせるだけである)ことが約束される。
- 過去にも数回開催されているが、未だ魔王は復活していない。勝者が魔王の依代に相応しくなかったからだとされている。
- 紋様解析(クリプトアナライズ)・紋様破壊(アンチクリプトストライク)
- 悪魔や魔神の紋様を解析し、その仕組みを把握するのが紋様解析。
- 紋様解析後、塵器を用いてその悪魔を強制解放すること。魔神しか行えない。
- 「塵より生まれしもの、塵へと還れ」と放つ時に必ず魔神が言う言葉。
- 紋様組替(クリプトチェンジ)
- 紋様解析に対抗して、自身の紋様をかえること。魔神が行う。
- 塵器(ストライカー)
- 魔神の契約者の意志の強さや魂を武器の形にしたもの。魔神が使う。塵器を出すと、召喚主は、脱力感に襲われる。
- 塵器を使って紋様解析を行い、それが進むと、塵器の色がその魔神の円盤の色に強く輝いていく。紋様破壊後、塵器は消えてしまう。
- 能力逆流(スピンオフ)
- 魔神の契約者が、契約した魔神の能力を身につけ、操ることが出来ること。
[編集] 既刊一覧
- 『レンズと悪魔 Ⅰ 魔神覚醒』
- 2006年10月01日発売 ISBN 4044707073
- 『レンズと悪魔 Ⅱ 魔神跳梁』
- 2007年02月01日発売 ISBN 9784044707088
- 『レンズと悪魔 Ⅲ 魔神攘戮』
- 2007年06月01日発売 ISBN 9784044707095
- 『レンズと悪魔 Ⅳ 魔神幻世』
- 2007年08月01日発売 ISBN 9784044707101
- 『レンズと悪魔 Ⅴ 魔神陥落』
- 2007年11月01日発売 ISBN 9784044707118
- 『レンズと悪魔 Ⅵ 魔神応報』
- 2008年02月01日発売 ISBN 9784044707125
- 『レンズと悪魔 Ⅶ 魔神決壊』
- 2008年05月01日発売 ISBN 9784044707132