リーグ (北欧神話)
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リーグ(リグとも。Rígr, Ríg)は、北欧神話に登場する神ヘイムダル (Heimdall) の別名とされる。
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[編集] 『リーグの歌』
エッダ詩の『リーグの歌』(10世紀中頃、または12-13世紀ごろに成立[1])では、リーグ(アイルランド語の「王」の意味)と名乗った彼が人間の間を巡り、3つの階級(奴隷、農民、貴族)を作った経緯が語られている。
[編集] 内容
老夫婦アーイ(「曾祖父」の意)とエッダ(「曾祖母」の意)の元で3晩宿泊し、彼らにたくさんの助言をした。その後エッダが生んだ息子スレール(「奴隷」の意)の元に、他から女性スィール(「下女」の意)が来て結婚し、夫婦は多くの子供を得た。これが奴隷(スレール)の発祥であった。
アヴィ(「祖父」の意)とアンマ(「祖母」の意)夫妻の元でも3晩宿泊し、彼らにたくさんの助言をした。その後アンマが生んだ息子カルル(原義は「自由農民」)の元に、他から女性スネール(「嫁」の意)が来て結婚し、夫婦は多くの子供を得た。これが自由農民の発祥であった。
ファジル(「父」の意)とモージル(「母」の意)夫妻の元でも3晩宿泊し、彼らにたくさんの助言をした。その後モージルは息子ヤルル(「王侯」の意)を生んだ。
ヤルルの元にリーグが訪れ、自分の名前を与えて後継者にした。またルーン文字も教えた。ヤルルはさらに周囲の国を攻めて支配下にしたが、多くの者に自分の財産を惜しみなく分け与えた。やがてエルナ(「器用な女」の意)という娘と結婚し、ブル(「息子」の意)をはじめとする多くの子供を得た。彼らが貴族の発祥であった。
夫妻の末の息子はコン(「末裔」「息子」の意。コヌング(王)の語源と考えられている)という名で、彼は多くのルーン文字を知っており、自身もリーグと称したとされている。
[編集] ケニング「ヘイムダルの子」について
『巫女の予言』の冒頭で人間たちが「ヘイムダルの子ら」と呼ばれるのは、ヘイムダルが人間の守り神と考えられているためであろう。この思想に基づいて、身分制度もヘイムダルによって決められたとされたのかもしれない。[2]
この「ヘイムダルの子ら」というケニングは、『巫女の予言』のみに見られる。『リーグの歌』が後世に残らなければ、なぜ人間がそのように呼ばれるのか不明のままだったろうと考えられている。[3]
[編集] 脚注
- ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』300頁。
- ^ 山室静 『北欧の神話 神々と巨人のたたかい』筑摩書房、初版1982年、146-147頁。
- ^ シーグルズル・ノルダル 『巫女の予言 エッダ詩校訂本』菅原邦城訳、東海大学出版会、1993年、124頁。
[編集] 参考文献
- V.G.ネッケル--ほか編 『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、初版1973年、201-206、299-300頁。