マザー (ジョン・レノン)
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マザー(Mother)は、1970年に発表されたジョン・レノンの曲。ビートルズ解散後初のソロ・アルバムである『ジョンの魂』のオープニング曲で、シングルとしても発売された。
この曲はジョンの幼いころの体験がプライマル・スクリームという精神療法によって炙り出された作品である。
ジョンは1940年10月9日にリバプールで船員として働いていた父アルフレッド・レノンと母ジュリアとの子として生を受けたが、すぐに父は行方不明になってしまう。母は他の男と暮らしはじめ、ジョンはジュリアの姉のミミ夫婦に預けられた。ジョン5歳の時、突然アルフレッドが姿を現しジョンを連れ出すが、ジュリアと親権をめぐっていさかいとなる。結局ジョンは母ジュリアを選ぶのだが、ジュリアは再びジョンをミミ夫婦のもとへあずけ、一緒に暮らすことはしなかった。アルフレッドもまた行方がわからなくなってしまう。この体験によって負わされたジョンの深い心の傷が、本曲の「母さん、いかないで!父さん、戻ってきて!」という叫びに現れている。また、「子供達よ、僕の過ちを繰り返すな。僕は歩けもしないのに走ろうとした。」というメッセージも添えられている。
この曲はアメリカと日本でソロ初のシングル曲としても発表されているが(B面はオノ・ヨーコの「ホワイ」)、シングルではアルバムとは別のテイクが使用されている。「狂気じみている」との理由からアメリカでは放送禁止に指定され、その影響からビルボードのチャートでは最高43位にとどまっている。
[編集] 演奏時間の違い
この曲は演奏時間がまちまちな曲としても知られている。当該アルバムに収録された際の時間は5分35秒。シングル盤では冒頭の鐘がカットされ、さらにエンド・リフレインの回数が少ないため約3分58秒。生前唯一のベスト盤シェイヴド・フィッシュ〜ジョン・レノンの軌跡ではアルバム収録盤のエンド・リフレイン回数を少し減らしたバージョンが収録されておりその時間は5分5秒であった。
冒頭の深く長い鐘の音は、ダブルファンタジーにおけるBeautifui Boyイントロの、高く短いトライアングルとなって復活した。