ホットショット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ホットショットとは、
- 田宮模型から発売されたラジコンの四輪駆動車。
- アメリカのコメディ映画『ホット・ショット』。1991年公開。チャーリー・シーン主演で、『トップガン』など多数の作品をパロディ化している。続編は『ホット・ショット2』。
- テレビアニメ『トランスフォーマー スーパーリンク』に登場する超ロボット生命体。サイバトロン戦士の一人で、スポーツカーに変形する。
- 1985年に発売されたブリザードのアルバム(「HOT SHOT!」)
ここでは、1. のラジコンのホットショットについて説明をする。
ホットショットとは田宮模型(現・タミヤ)が初めて発売したバギータイプの4WD電動ラジオコントロールカー(ラジコン)。
1985年4月16日発売、キット価格21,800円。 尚、ホットショット(2007)として2007年夏以降復刻発売中である。(価格24,800円)
目次 |
[編集] 概要
シャーシはEPL(エンジニアリングプラスチック)製、箱型形状のものを上下に2分割し上側をフレーム、下側をコントロール装置を収める箱、つまり「メカボックス」とした「バスタブモノコック複合」方式とした。
駆動方式は実車と同様のプロペラシャフト(推進軸)による4WDを採用し、ギアボックスを密閉することでメンテナンス・防塵性を確保していた。
サスペンションはフロント、リアともにダブルウィッシュボーン独立懸架が採用されたが、特にダンパーの取り付けには目を見張るものがあった。
まずフロントは上下のうち下側のアーム、ロアアームを挟むように横置きに搭載される「モノショック」方式、リアは何とV字型に配されアッパーアームに繋がる板状のリンケージの支点部にプッシュロッドが繋がり、それがリアギアボックス最上部に縦置きされるダンパーをロッカーアームで作動させる、つまりサスペンションが沈むとV型の支点が引き上げられ、その合力によりプッシュロッドを押す「プル&プッシュロッド・モノショック」方式となっていた。
簡単に言えば、前後2本のダンパーのみで車重を支えていたのである。それゆえ、重みによる車体の傾き(ロール)を抑えるため、前後にはアンチロールバー(スタビライザー)が装着された。
ホイールはこの車両より一体整形のディスク(円盤)造形、つまり「ワンピース」となり頑丈さもさることながら軽さも実現。
タイヤは長円形のブロックの中に一部スパイクの入った「オーバルブロック」を採用。グリップはスパイクほどではなかったものの、4WDであるこの車には必要にして十分なものであった。
車体構成も独特なもので、ボディはポリカーボネート製であったが、シャーシの前部からコクピット(運転席)までを覆う「ハーフカウル」で、後はコクピット前部からリアギアボックス後端まで、リアウィング(後部に付く翼状のもの)マウントを兼ねたEPL製のトラスフレームを架装、しかもコクピットの横にはネットが張られ、屋根もアルミニウム製の板を整形して装着し、なんとも実車レース用バギーカーのような雰囲気を醸し出していた。
ただし当時の子供たちにとって21,800円という価格は簡単に手が出る金額ではなく、実際に買って走らせるのはグラスホッパー、ホーネットといった低価格ラジコンカーが中心であった。
その後、オープンタイプのバスタブフレームを採用し各部を改良し、子供たちでも手の届く金額へ低価格化された「ブーメラン」が少年達に人気を博すこととなる。
[編集] メカニズム
- シャーシ:EPL製バスタブ複合モノコック構造
- サスペンション:
- F/スタビライザー付き、ボールマウント・Aアームダブルウィッシュボーン独立懸架、オイルダンパー横置きモノショック方式
- R/スタビライザー付き、Hアームダブルウィッシュボーン独立懸架、オイルダンパー縦置き、プル&プッシュロッド・モノショック方式
- タイヤ・ホイール:
- F/オーバルブロック、トレッド幅25mm
- R/オーバルブロック、トレッド幅35mm
- F/Rともに1ピース造形
- ボディ:ポリカーボネート製ハーフカウル+EPL製トラス構造フレーム
- 原動機:電気直流モーター、マブチ・RS-540S
- 駆動形式:横置きミッドシップ・モーター、シャフト駆動式四輪駆動
- 本体重量(コントロール装置・バッテリー除外時):約1250g
[編集] 走行性能
悪く言えば、「見た目」だけの車であった。
4輪駆動ゆえ悪路走破性はかなりのものであったが、ノーマル状態で本気で走るにはやや無理があった様子。全体を5とすると、走行性能が3、見た目が2、といったところか。
モーターは540のためパワーはそれなりにあったが、駆動部分が多いためにノーマル状態ではロスが多く、上で述べたように外装にも手がかかっているため重量がかさみ、おまけにダンパーが2本しかなかったため、硬いスプリングを持っていたがサスペンションの戻りが悪い上にスタビライザーがあるとはいえロールも激しく、加えてフロント足回りのアライメント変化(ステアリングの取り回し上、サスペンションが沈むとタイヤが開き、戻るとタイヤの前が狭まる)が拍車をかけ、とにかく曲がらない(急旋回を仕掛けると外側のタイヤの切れ角が極端に減少してしまう)。つまり、ノーマルでは遅いどころか、アンダーステアの強烈な車だった。これは多くのユーザーを悩ませていた。
[編集] 耐久性能
頑丈そうな見た目の割りに、実際には結構脆いものであった。
フロントバンパーは大型ではあったが「取って付けた」様なもので、派手に激突するとすぐに破損したうえ、おまけに取り付け部がシャーシ下部のメカボックスに繋がっていたため、それを締結するネジ穴も衝撃により傷みがちであった。またフロント足回りもタイヤを保持するナックルに直立させた大型のピロボールをプレートで挟み込む構造だったため、組み立てた直後は作動が重く、そのくせ使い込むと徐々にガタが酷くなるという有様だった。 当然クラッシュにも弱く、サスアーム周りが一発で破損したりする事もあった。
駆動系も磨耗しがちで、とにかく保守にも手のかかる車であった。
[編集] 整備性能
密閉性が高かった反面、整備性は極端に悪く、コントロール装置のセッティングですら、下のボックスを開けるのにネジ6本を緩める必要があった。
廉価版である「ブーメラン」ではオープンタイプのバスタブフレームとすることで改善された。 また、復刻版では「ホットショット2」のハッチ付きアッパーフレームを採用し、クリスタル交換が行いやすくなっている。
[編集] ゴールド(金)メッキホイール
ホットショットはキットの箱絵や、CMの走行シーンなどでは金色のメッキが施された、メッキタイプのホイールを装着していた。 しかし実際にはキットに同梱されておらず、入っていたのはノーマルの白色であった。
このことに関してユーザーからの要望が多く、後に交換パーツとして販売されることとなった。
[編集] 四輪駆動ブーム
ホットショットの登場により、ブームは二輪駆動から四輪駆動に移っていった。4WDは、2WDに比べ車重や駆動が重い、またアンダーステアが強い、というデメリットこそあったものの、基本的な部分がしっかりしていれば(ベアリングの装着等)ホットショットでさえかなりの速度で走行可能であった。加えてコーナーを多少乱暴に攻めても挙動が乱れにくい、というメリットもあった。
しかし、前述されている様々な欠点があったためレースにおいては、ほぼ同時期に発売された京商のオプティマや横堀模型(現・ヨコモ)のドッグファイターなどを相手に苦戦することとなり、これ以降「タミヤ車はレースに勝てない」というイメージが強くなってしまう。
しかし、当時のバギーブームの中で四輪駆動車の人気が出てくるきっかけを作ったのは間違いなく「ホットショット」でありその事実は発売から20年以上が経過した現在でも、多くのマニア達の記憶に残ることとなる。
[編集] 派生モデル
ホットショットは前述のとおり、性能面で不十分な点が多かったため、整備性や走行性能を高めたモデルが数多く発売された。
- スーパーショット
- ブーメラン
- スーパーセイバー
- ビッグウィッグ
- ホットショットⅡ