プーカ
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プーカ (Púca, Pooka, Phouka, Púka等。 Glashtyn, Gruagachとも) はアイルランド及びウェールズの神話上の生物で、無数のフェアリーの中の一つである。多くのフェアリー同様、存在を信じる者にとって尊敬と同時に恐怖すべき対象だった。
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[編集] プーカの姿
伝説に従うと、プーカは巧みに姿を変えることができ、さまざまな恐るべき形態をとると考えられていた。最も多くの場合、流れるようなたてがみと輝く黄の眼を持つ、つやつやとした黒馬の姿をとったが、他にも鷲の姿になることもあれば、大きな黒山羊の姿を借りることもあった。この名の語源は初期のアイルランド語poc(牡山羊)と同じである。また、ここから山羊の足を持つサテュロスのパック(Puck)が名付けられた。パックはウィリアム・シェイクスピアの夏の夜の夢で有名になった。
[編集] プーカの魔力
プーカはフェアリーの中でも最も恐ろしいものと考えられている。姿の恐ろしさなどというのは序の口で、恐れられた最大の理由はこのフェアリーの持つ力である。プーカは夜、旅人達を待ち伏せると言われている。もしその背中に放り上げられると、最良の場合でもそれは命をかけた乗馬になる。戻って来た時、旅人達は別の姿に変わっており、二度と元の姿に戻ることはできない。オヒシュキ (水馬)という似た生物もいて、うっかりその鞍にまたがって池や川など水辺に行ってしまうと、不運な騎手は水に放り込まれみじん切りにされることになる。プーカには人間の言葉を話す能力があり、プーカをないがしろにした、あるいは怒らせようとしたと思う相手を家から誘い出し、獲物として背中に乗せると言われている。うまく出現することができない場合は、柵を破る、家畜を切り裂くなどの破壊行為に及ぶ。
[編集] プーカと暮らし
伝統的にプーカは農事歴と関係づけられている。プーカはケルトにおける異教的な(←キリスト教からみて。ペイガニズム参照)収穫を感謝する三番目の祭、すなわち作物を収穫し終えたときの祭と結びついている。農場に残ったものはすべて puka (フェアリーによってしおれさせられたもの)と考えられ、だからこそ食べられないのである。土地によっては、飢えたプーカを宥めるために若干の作物を残しておくこともある。ともあれ、11月1日はプーカの日で、その日だけはプーカもおとなしくしていると思われている。
地域によっては、プーカは恐怖より尊敬の対象として扱われている。しかるべく敬意を払えば、出会った人に幸運をもたらすという。プーカは山や丘のフェアリーだが、それらの地域では11月1日になると姿を現し、予言や警告を与えてくれるという。
[編集] プーカの落日
他の多くの強力な神話上の生物と同じく、21世紀になると、プーカも骨抜きの目にあってしまった。今日のメディアの手にかかると、恐るべきプーカも無害で恥ずかしがりで薄ら馬鹿な庭の精になってしまう。ゾウムシ食い.
アメリカ合衆国の人々はこの種の腑抜けなプーカにしか親しんでいないらしい。映画Harveyの中ではプーカは目に見えない6フィート3.5インチのウサギの姿をしている。プーカは大昔の日本のテレビゲーム『ディグダグ(Dig Dug)』のキャラクターでもある。また、妖精ネタのロールプレイングゲームChangeling: The Dreamingのキャラクターにおけるクラスにもなった。