プラリドキシムヨウ化メチル
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プラリドキシムヨウ化メチル(-か-; pralidoxime iodide)は、有機リン剤中毒の特異的な解毒剤である。商品名は、パム(PAM)またオキシム剤と呼ばれることもある。
毒ガス・サリンの解毒剤として知られているが、本来想定していた用途は有機リン系の農薬中毒に対してであった。しかしサリンも有機リン剤の一種であるため、効果を発揮する。 1995年の地下鉄サリン事件では、新幹線で各地のPAMを集め、600人以上の被害者の命を救った事で有名。
[編集] 作用機序
有機リン剤は、神経の化学伝達物質アセチルコリンの分解酵素であるコリンエステラーゼ(ChE)の酵素活性中心に結合することで、本来のアセチルコリン分解作用を失活させる。そのことにより増長したアセチルコリンの作用が意識障害、徐脈、血圧低下、縮瞳などの中毒症状を引き起こす。
本剤は、酵素活性中心に結合した有機リン剤を切断解離させる作用をもち、その結果ChEの活性を回復させるので有機リン剤に対する解毒作用をあらわす。
ただし、有機リン剤がアセチルコリンに結合して一定時間がたつと、エイジングとよばれる不可逆変化が起こり、薬が効かなくなる。 サリンの1/2エイジング時間は約5時間なので、浴びてから5時間以内に投与しなければ手遅れとなる。
[編集] 類似する中毒症状に対する適用上の注意
有機リン剤と同様にコリンエステラーゼを阻害して殺虫力を示す、カルバメート剤による中毒症状においては、有機リン中毒と同じく、血清コリンエステラーゼ活性の低下が見られるが、本剤によってはコリンエステラーゼとカルバメート剤の結合は解離させることができないため、カルバメート剤中毒の場合はアトロピンを投与すべきである。