ピノコ
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ピノコは、手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』に登場する架空の人物である。
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[編集] 演者
アニメ
ラジオ声優
- 木島桂子、今井里恵、田島穂奈美、中山紗央里・中山詩央里
- 身体的特徴などが、漫画・アニメでなければ再現出来ない設定の為、実写版では再現に苦労しており、実写版独自のピノコの表現に視聴者から苦情が寄せられた事もある。
[編集] 設定
[編集] 誕生の経緯
単行本第2巻「畸形嚢腫」[1]で、ブラック・ジャックの手術を受けた患者の体内から奇妙な形の脳や内臓が取り出され、その後ブラック・ジャックの手によって一人の幼女として組み立てられた。この「畸形嚢腫」では結末としてピノコが組み立てられた翌日に、ピノコが転院する患者である姉と初対面し、寝たままの姉を踏みつけて激昂する場面があり、ピノコが自由に動ける人間になったように描かれている。しかし、かなり後に描かれた「水とあくたれ」ではピノコが組み立てられた後、全く動けない体のままだったのでブラック・ジャックが、ピノコと離れた場所にご飯を置いて、自分で動かないと全く食事が出来ないようにするなどの、数ヶ月間のスパルタ教育でピノコにリハビリをさせていたことを語る場面[2]があるため、設定に不合理が発生している。しかし、このピノコの話は姉が後日の定期健診に来た際の話で、手術後はすぐに退院している。その期間を短縮して描かれている[3]。
姉とはその後何度か再会する。だが、世間体を気にする相手に避けられ、ピノコ本人もよほどの事情が無い限り姉と会うことを拒絶している。ただ、ピノコの姉が自殺未遂を図って記憶喪失になり、ブラック・ジャックのもとで治療を受けたことがあった[4]。その際、たがいに相手が実の姉妹であることに気付かなかったために、姉の入院中だけはかえって本当の姉妹らしく振舞うことが出来た[5]。
名前の由来については、ブラック・ジャックが劇中で「ピノキオが由来」と語っている。詳細は不明だが、「ブラック・ジャックが嚢腫を人型に組み立てる様を、ジェッペット爺さんがピノキオ人形を組み立てる様に見立てた」「嚢腫から人間となった少女を、木人形から人間となったピノキオにたとえた」などの説がある。
[編集] 体質
顔や胴体部分が合成繊維でできた皮膚を使っているので、水に入ると溺れてしまい、まったく泳ぐことはできないが、塩分の濃い水であれば浮くことができるので泳ぐこともできる。ただし3分以内に上がらないと肌が荒れてしまう。
[編集] 現在のキャラクター
顔は医学雑誌に掲載された公害病患者のロミという少女の顔を元にして作られている[6]。
ブラック・ジャックとともに生活するただひとりの家族であると同時に、ブラック・ジャックが全幅の信頼を寄せる忠実な助手でもある。戸籍上の年齢も実質年齢も0歳だが、いままで患者の体内で生きてきたことを理由に自分は18~20歳の「としごろのレレイ(レディ)」だと言い張っている[7]が、実際の知性や行動は見た目どおりの幼稚園児程度。実際に幼稚園に入ったこともあるが、園で暴れて入園を拒否された。ブラック・ジャックの「おくたん(奥さん)」と自称しているが、ブラック・ジャック自身は娘のように扱っている。嫉妬深い一面も持っており、ブラック・ジャックが若い女性と関わることを嫌う。初期は、社会的なことを知らないおかげで、ブラック・ジャックをバットで殴って起こしたり、焦げたパンをナイフで脅して無理やり食べさせたり、ブラック・ジャックが睡眠薬で眠らされたときはからしを一瓶ごと口に入れて目を覚まさせたりなどしていた。その他にもブラック・ジャックが不在の際は患者が様々な障害を起こしたため、大量の薬をシロップで割ったものを患者に飲ませようとしていた[8]。
原作の中で一度、ブラック・ジャックは彼女の将来を想って養子に出したが、ブラック・ジャックを慕ってピノコが戻ってきた時、丁度彼は自分自身を手術しており、手術道具を忘れるというミスを犯していたのをピノコが助けた。結局養子の話はなくなり、以後ピノコは主に自宅で手術を行う時はブラック・ジャックの助手として付き添うようになる。ただし、非人道的とも受け取れる手術に関してはピノコが関わらないようにブラック・ジャックも配慮しているようである。
医療の現実に苦悩する主人公のそばで明るく振舞い、主人公に生きる事の奇跡を案じさせる名脇役として、読者の人気を勝ち得た。
助手といっても医学教育を受けていないため、基本的にできるのは医療器具の手渡し程度に限られている[9]。しかし、ピノコの何気ない行動がブラック・ジャックの医療行為に役立ったりする。中にはピノコ自身が積極的に発案してブラック・ジャックが手術を成功するのに大きな支えになったこともある。
普段はブラック・ジャックも口には出さないが、彼女のことを最も信頼しており、作中でもピノコのお陰で手術が成功した際は「最高の助手」と語っている。「人生という名のSL」では、八頭身になったピノコが現れたが、「八頭身の美女にも興味は無い」と言ったあと落胆するピノコを見て、「お前は私の奥さん、それも最高の妻じゃないか」と発言している。
得意料理はブラック・ジャックの好物でもあるカレーライス[10]ブラック・ジャックは「いつまで経っても美味くならない」と泣きながら嘆いていた。作中では魚を捌いたりフライを揚げたりといろいろな料理を作っている場面もあるのだが、味噌汁にソースを入れる癖が直らなかったりするのでそんなふうに言われてしまう。買ってきた卵のパックを帰宅の途中で落として、卵をすべて割ってしまったが、もったいないからと20個分の卵で卵焼きを作ってブラック・ジャックに食べさせたこともある。
現在の三頭身の体から、八頭身の美女になるのが夢である。
[編集] 言葉
発声が上手くなく、とくにサ行の発音が苦手で、タ行の発音と同じになってしまう、独特の幼児語を話す。ちなみに幼女として組み立てられる前の状態ではテレパシーらしきもので会話していたが、この時は普通の言葉遣いだった。
[編集] 例
- サ行⇒タ行(「奥たん」など。しかしブラックジャックを呼ぶときの「先生」は「せんせい」と発音する。アニメでは「ちぇんちぇい」)
- ラ行⇒ヤ行(~すゆ)
- しーうーのあらまんちゅ
- はじめまてち(「ち」と「て」が逆)
- ~よのさ、~わのよ
- ちぇんちぇ(原作では「先生」)
- あらまんちゅ
- レレイ(レディ)
[編集] アッチョンブリケ
驚いたとき、感動したときなどに使用される言葉として有名。ポーズは両手で頬に強く押し「アッチョンブリケ」と叫べば完成である(ポーズの仕方は「わくわく宝島」のブラックジャックブースの建物にかかれていた)。
『ブラック・ジャック』の中では「みんなでアッチョンブリケ」という企画が発足し、全国でユニークなアッチョンブリケを募集した。
疑問として多いのが、アッチョンブリケの語源。ブラック・ジャックの「報復」と言う話で、ピノコが「アッチョンブリケはピノコが作った」と言った事から、アッチョンブリケは手塚治虫の(ピノコの)造語だという説が有力のようだ。
なおテレビドラマ「ロングバケーション」で稲森いずみ扮するももちゃん(小石川桃子)の口癖でもある。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ テレビアニメでは「Karte44:ピノコ誕生」で取り上げられている
- ^ ブラック・ジャック自身も子供の頃に受けた手術の後にかなり厳しいリハビリをしていた
- ^ なお、文庫本1巻では、間のコマに「一年のち…」というナレーションを追加し、期間が空いている事を示させている。ただ、「ピノコ愛してる」でブラック・ジャックが「生まれたのは十日前」と言う場面は修正されていない
- ^ 第165話「おとずれた思い出」
- ^ 姉は退院直後に記憶を取り戻す
- ^ アニメでは子供服の広告という設定になった
- ^ 連載最終話では21歳、戸籍上は1歳
- ^ 最終的にはジュースと間違えたブラック・ジャックが飲んでしまい、腹を壊してコレラと間違う大騒ぎになった(「コレラさわぎ」)
- ^ とは言え、患者の瞳孔が開いているのを見て「死んでしまった」と判断する場面もあるので最低限の医学教育をブラック・ジャックが行っているものと思われる
- ^ ブラック・ジャックいわく「いつでもカレー」。テレビスペシャル『~命をめぐる4つの奇跡~』では、目玉焼きと言っていた。