ピアノマン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ピアノマン(Piano Man)は、2005年4月にイギリスの海岸で保護された謎の男性。
[編集] 人物
2005年4月8日、イギリスケント州シアネスの浜辺でびしょ濡れの黒いスーツとネクタイ姿の20~30代男性が発見された。病院に収容されたが、記憶喪失に陥ったのかいくつかの言語で話しかけても一言も話さなかった。また衣服からラベルを取られており、身元を証明する物が何一つ無く、個人情報が一切不明であった。
病院の関係者が男性に鉛筆と紙を渡したところ、精緻なグランドピアノの絵を描いた。男性にピアノを用意するとピアノを上手に演奏した。ピアノ演奏が上手かったことから、「ピアノマン」と名づけられた。最初は地元メディアで報道されていたが、5月にイギリスの放送局BBCで報道されると、その神秘的な境遇のため世界中から注目されるニュースとなり、世界中からピアノマンの身元に関する情報が寄せられた。なお、この際、男性の写真とピアノを描いた紙が公開された。
身元としてフランスのストリートミュージシャン説、チェコのロックピアニスト説、ノルウェーの留学生説などがあったが、いずれも否定された。一方で、ヤラセ疑惑もあり、日本で6月4日より公開予定であったイギリス映画「ラヴェンダーの咲く庭で」が記憶喪失のバイオリニストが浜辺で発見されるストーリーとピアノマンの境遇と酷似していたため、映画関係者による宣伝説も存在した(本国のイギリスでは既に公開終了していた)。また、ピアノ演奏の映像が公開されなかったため、ピアノの腕前にも疑問がもたれるようになった。
同年8月22日、イギリスの大衆紙デイリー・ミラーは、ピアノマンがドイツ人の男性であると判明し、ドイツに帰国したと報じた。また、男性は記憶喪失の芝居をしていたのであり、ピアノが弾けるというのもウソであると主張した[1]。 同日BBCは、ドイツ政府が男性の身元を確認したこと、ドイツに帰国済みであることを報じた[2]。 男性が入院していた病院は、男性は病状が改善したので退院したと発表した[3]。 8月24日、デイリー・ミラーは男性の両親のインタビューを掲載した。両親は男性が本当に記憶喪失だったのであり、ピアノの腕も上手であると異議を唱えた[4]。