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ハックルベリー・フィンの冒険 - Wikipedia

ハックルベリー・フィンの冒険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

筏の上のハックルベリー・フィンとジム(1884年版の挿絵より)
筏の上のハックルベリー・フィンとジム(1884年版の挿絵より)

ハックルベリー・フィンの冒険(ハックルベリー・フィンのぼうけん、Adventures of Huckleberry Finn)は、マーク・トウェインことサミュエル・クレメンズにより1885年に発表された、最初のグレート・アメリカン・ノベルとして一般には知られている。また本書は、トム・ソーヤー(マーク・トウェインの他の三篇の作品の主人公)の親友であるハックルベリー(ハック)・フィンによって語られる、方言あるいは話し言葉で書かれた最初の小説の一つである。この作品は1885年2月18日に初版が出版された。『ハックルベリー・フィンの冒険』は、優れた教養小説の一例でもある。なお、タイプライターで書かれた、世界で初めての小説でもある[1]

目次

[編集] 概要

『アフリカの緑の丘』において、アメリカの作家アーネスト・ヘミングウェイは本書を歴史的な文脈に位置づけた。「あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する。……すべてのアメリカの作家が、この作品に由来する。この作品以前に、アメリカ文学とアメリカの作家は存在しなかった。この作品以降に、これに匹敵する作品は存在しない」。

無邪気で幼い主人公と、ミシシッピ川沿いに住む人々や景色の精彩に富む描写と、そして主に当時の人種差別への、真摯かつ時には痛烈な確固たる姿勢によって、本書は知られている。ハックと友人の逃亡奴隷ジムがミシシッピ川を筏で下る漂流旅行は、全アメリカ文学における脱出と自由の最も永続的なイメージの一つであるのかもしれない。

出版以来、本書は若い読者の間で人気を博し、比較的毒のない『トム・ソーヤーの冒険』(この作品は、いかなる特定の社会的メッセージも含んでいなかった)の続編として捉えられているにも拘らず、真面目な文芸批評家の研究対象でもあり続けている。更に本書は、215回に及ぶ「ニグロ」(黒ん坊)という言葉の使用によっても批判されている(後述する「論争」の節を参照せよ)。

[編集] 物語の内容


注意以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。


文学
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この物語はアメリカ南北戦争以前の、おそらく1830年代か1840年代頃を舞台としている。

『トム・ソーヤー』で知られているように、ハックはアルコール中毒の父親と暮らす、母親のいない怠惰な幼い放浪者である。ハックは、妻や子供との生き別れを意味する川下への売却を恐れて逃亡した黒人奴隷のジムと出会い、二人は自由を求めて、オハイオ川の北を横断する事を試みる。本書はその二人の冒険を伝えている。

本書には、主要なテーマがいくつか設定されているが、ここでは、四つについて説明する。 四つとは、家族・様々な種類の人々との出会い・人種問題・宗教である。

初めのテーマは、家族。ハックとトムが前作で手に入れた金を盗み取るために、ハックの保護権を獲得しようとするハックの父親による試みと争った末、ハックは自分が殺されたように装って逃亡する。本作のよく知られたプロット上の工夫の一つは、ジムによるハックの父の死の隠匿である。

次のテーマは、様々な種類の人々との出会い。ある時は牧歌的で、ある時は恐ろしげなミシシッピー川流域の人々の生活。ハックとジムは、そこを旅する途中で、悪漢小説の形式のように、殺人者・泥棒・詐欺師・善人・偽善者といった様々な種類の人間と遭遇する。

人種問題のテーマでは、ハックによる緩やかなジムの人間性の承認がある。ジムは現実の人間と同じ程度に不完全であるが、本書における他のどの人間よりも強く勇敢であり、寛大かつ賢明である。この物語に登場するハックを除く白人の登場人物の多くは、愚劣かさもなくば残酷か利己的に描かれている。それとは対照的に、黒人の主要登場人物であるジムは、迷信深く無教養ではあるが、賢く利他的に描かれている。

宗教上のテーマは、人種主義上のテーマと同じくらい強く描かれている。ハック自身は神に対して敬虔であろうとするが、神に祈ろうとする度にそれが時間の浪費である事に気付かされ、神を信じるのに苦労する。事実、本作を貫くハックによる絶え間ない彼自身の行動の動機と人生への質問の中にあって、ハックは大衆文学の登場人物の中で、最も偏見がなく心の開かれた一人であるような印象を受ける。

本書の冒頭と終盤でトム・ソーヤーが登場する部分は、全体的なインパクトを損なっていると一般に言われている。その他の読者は、トムが物語を開始させ完結させるのに貢献し、トムの途方もない計画が、神話的な川下りの旅を取り巻く「リアリティ」の枠組みを与える、逆説的な効用を持っていると考えている。

[編集] 邦訳

  • 『ハックルベリ・フィンの冒険』訳:斎藤正二、角川文庫
  • 『ハックルベリ・フィンの冒険』訳:西田実、岩波文庫
  • 1959『ハッウルベリイ・フィンの冒険』村岡花子、新潮文庫

[編集] 論争

『ハックルベリー・フィンの冒険』が出版された後、マサチューセッツ州コンコード図書館は、「下品な主題による手法」と「物語を綴る、粗野で無教養な言葉」を理由として、本書を禁書に指定した。サンフランシスコ・クロニクル紙は、1885年3月29日号で素早く本書を擁護した。

「本作を通じて描かれるのは、南北戦争以前の奴隷の評価に対する鋭い風刺である。無一文でアル中の貧困白人の息子ハックルベリー・フィンは、黒人奴隷が自由を得ようとするのを手助けするのに彼が負っている役割のため、数多くの良心の呵責に悩まされる。幾人かの批評家はこの感情が大袈裟であると主張しているが、本作以上に真実を描いた作品はない」。[1]

アメリカ合衆国では、本書の閲覧を制限する試みが幾度もなされた。様々な時代にわたり成された試みは、以下の通りである。

  • マサチューセッツ州コンコード図書館で、発行の直後に禁書処分にされる。
  • ブルックリン公共図書館とその他の図書館で、少年向けのジャンルから取り除かれる。
  • 人種差別を理由に、推薦書籍のリストから取り除かれる(例えばワシントン・ポスト紙によれば、1995年の3月にはワシントンD.C.のナショナル・カテドラル・スクールの英語クラスでの10年生の推薦書籍から、本書が取り除かれた。コネチカット州ニューヘイブンBanned Books Online は、公立学校の授業からも同様に取り除かれたと報告している)。
  • 「ニグロ」という言葉の頻繁な使用から、本書全体に人種差別主義が含まれていると主張する団体の要請により、本書の圧倒的な反人種差別的プロットを支持する主張にも関わらず、学校放送から取り除かれる。

米国図書館協会は『ハックルベリー・フィンの冒険』を、1990年代を通じた合衆国で、最も頻繁に発禁処分に挑戦的であった5番目の書籍としてランク付けた。

[編集] 脚注

  1. ^ カート・ヴォネガット『国のない男』P.67

[編集] 外部リンク


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