ノモグラム
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ノモグラム(Nomogram または Nomograph)は、グラフィカルな計算のための道具であり、ある関数の計算をグラフィカルに行うために設計された二次元の図表である。計算図表とも呼ぶ。計算尺のようにノモグラムはグラフィカルなアナログ計算器である。計算尺と同様、その正確さは物理的にどれだけ正確にプロットし、再現し、読み取り、位置あわせできるかに依存している。多くのノモグラムはあまり正確性を求められない用途で使われている。あるいは、正確な算出方式で出てきた答えをチェックするのにノモグラムを使うこともある。
計算尺は汎用の道具であることを意図している。ノモグラムは特定の計算を行うよう設計されていて、目盛りなどの設定を調整して効率的に計算できるようにしている。
ノモグラムには一般に3つの目盛りがある。2つの目盛りが既知の値を表し、その2点を直線で結んで第三の目盛りと交差したところが計算結果となる。すなわち、計算結果を表す目盛りは図の真ん中にあり、外側の2つの目盛りに値をそれぞれプロットし、それを直線で結んで真ん中の目盛りと交差した位置を読み取るのである。目盛りは等間隔とは限らず、対数的になっていることもあるし、もっと複雑な間隔になっていることもある。また、簡単な計算では直線上に目盛りが並んでいるが、複雑な計算では曲線上に目盛りが並んでいることもある。
別の形態のノモグラムとして、ボディマス指数を計算するノモグラムがある。この場合正確な指数値よりも肥満か肥満でないかが問題となるため、身長と体重を縦横の軸に目盛りとして設定し、肥満度を表す帯が図表全体に描かれている。従って、身長と体重をプロットして直角に交差した点の肥満度を読み取ることになる。
また、温度の単位変換をするノモグラムも特殊である。この場合、一本の直線に摂氏の目盛りと華氏の目盛りが描かれており、どちらかで温度を読み取れば、同時にもう一方での値もわかるようになっている。
ノモグラムの例:
- うず巻線形のノモグラム--コルニュ・スパイラル
- スミスチャートは電子工学とシステム分析で使われた(右の図を参照)
- 等間隔でない目盛りの方眼紙は非線形関数がグラフ上で直線となることを意図したものである。確率目盛り、線形-対数目盛り、対数-対数目盛りなどがある。
[編集] さらなる実例
[編集] 並列抵抗/レンズのノモグラム
下に示したノモグラムは次の計算を実行する。
このノモグラムは非線形の計算を直線と等間隔の目盛りだけで行うという興味深いものとなっている。
A と B は水平と垂直の目盛りから入力され、結果は斜めの直線上の目盛りで読み取ることができる。この式にはいくつかの用途があり、並列抵抗の抵抗値の計算でもあるし、レンズの焦点距離の計算でもある。
下の図で、緑色の線は56Ω(オーム)と33Ωの抵抗器を並列接続したときの合成抵抗が約21Ωであることを示している(オームの法則)。 また、焦点距離が21cmのレンズで56cmの距離にある物体が約33cmの距離で像を形成することも示している。
[編集] カイ二乗検定を計算するノモグラム
下に示すノモグラムは、統計学上一般的な操作であるピアソンのカイ二乗検定を近似計算するのに使われる。このノモグラムでは曲線上に非等間隔で並んだ目盛りを使用する。
青色の線は次の計算を示している。
- (9 − 5)2/ 5 = 3.2
赤い線は次の計算を示している。
- (81 − 70)2 / 70 = 1.7
この検定を行う際にイェイツの補正が行われ、観測値から0.5を引くことがある。イェイツの補正も同時に行うノモグラムは、単に下の図で観測値の目盛りを0.5だけずらせばよい。