シャトル (織物)
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シャトル(シャットル、shuttle)あるいは杼(ひ)は、織物を織るときの道具である。緯糸(よこいと)を巻いて収めた平らな舟型の器で、経糸(たていと)の間に緯糸を通すのに使われる。
織機で布を織る際、ぴんと張った経糸を開口して隙間(杼口、ひぐち、shed)をつくり、その間に緯糸を収めたシャトルを投げ入れたり反対側から手ですくい取ったりして、横糸を一方の端から反対側の端まで通す。指で緯糸を経糸の中に編みこんでゆくより、織機で経糸を開いてシャトルで緯糸を投げ入れる方がはるかに早く布を織ることができる。
シャトルには様々な種類がある。最も簡単なスティックシャトル(stick shuttles)は平らな細い木切れでできており、その端に緯糸を引っ掛けるかぎがある。より複雑なシャトルは、中央に細長い穴の開いた形状であり、この穴の中に緯糸を巻いたボビン(小管)が入れられる。西洋のシャトルは、堅くて割れにくいハナミズキの木片を磨いて作られる。日本の杼は糸の通し方や織る布の種類に合わせて、縫い取り杼、すくい杼、投げ杼、弾き杼、綴織の地用の杼、細幅用の杼に大別される[1]。一般的には九州の堅いアカガシの木が使われるが、磁器製、金属製、竹製のものもある。
両手で布の端から端へ渡されてきたシャトルであったが、1733年にイギリスのジョン・ケイ によって飛び杼(とびひ)が発明されたことにより、シャトルは片手で遠くまで飛ばせるようになり、より速くより幅の広い布が織ることができるようになった。また織機の速度が速くなったことは、その前段階である紡績のスピードアップも要求し、機械式紡績機が登場するきっかけとなり、産業革命の先駆けとなった。飛び杼は力織機の構造をシンプルにしたほか、20世紀の半ばまで自動織機のシャトル部分(投杼機構)は飛び杼の原理を応用したものであった。シャトルは重さがあるため速度の限界があり、今日では緯糸を空気や液体の噴射で飛ばすシャトルレス織機(無杼織機)が登場し、シャトルを使わない布の製造がおこなわれている。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ http://www.bunka.go.jp/1hogo/shoukai/senteihozon_kougei/hiseisaku.html 文化庁・文化財の紹介(選定保存技術)・杼製作