サニャック効果
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サニャック効果( - こうか、Sagnac effect)は光に関するする物理現象の一つで、特殊相対性理論で説明される現象によって、光路中を進む光の速度がその光路の運動に関係なく一定である為に、光路の運動によって光路の長さが変わったかのように見える現象である。
[編集] 概要
例えば、回転する円形の光路を進む場合を考える。 入射した光が出口に達するまでに出口の位置が変わるが、光の速度は変わらないため光路の長さが変化したことになる。そのため光が出口から出てくる時間が光路の回転速度に依存する。
角速度と位相シフトの関係を観察するための最初のリング干渉計の実験は、フランス人Georges Sagnacによって、1913年に行われ、その結果、彼にちなんで「サニャック効果」と名づけられた。
この現象を利用したものが「リングレーザージャイロ」や「光ファイバジャイロ」などの「光ジャイロ」である。
[編集] 説明
サニャック効果を説明するには、まず特殊相対性理論で説明される光の速度についての特殊な性質を説明する必要がある。
特殊相対性理論での現象
- 電車内で人が走る
- 車外から見れば車内の人は電車の速度+人が走る速度で移動することになる
- 電車内で光が生じる
- 車外から見ても光の速度は光速のままで電車の速度は加算されない
普通、波というのは溶媒がどのような速度で運動していても、溶媒中の波の挙動は変わらず、溶媒の運動によって波の速度は加算・減算される。しかし、光波は前述の通りその速度が加算・減算されることはない。この光波の特殊性によって起きるのがサニャック効果であり、それを利用したのが「光ジャイロ」である。
装置を固定する場合と、途中で装置を回転させる場合の2つで実験を行なう。
- 光ファイバーの中の1点から光が走り出す
- 両方の光は同時に元の位置に戻る
- 光ファイバーの中の1点から光が走り出す
- 今度は装置全体が回されると、片側の光が先に元の位置に戻る
この左右の逆向きに輪を走った光の到達時間は、装置が回転することで差が生まれるため、この差を測れば、装置の回転の程度が判る。実際には光速度が30万km/秒という余りにも早いために、少し回転したくらいで生じる到着時間のずれは簡単には測定できない。このため、「光ジャイロ」では左右の光の位相差を検出することで回転量を測定している。