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ガリンド (モチェ文化) - Wikipedia

ガリンド (モチェ文化)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ガリンドの居住区及び遺構配置図
ガリンドの居住区及び遺構配置図

ガリンド(Galindo)はペルー北海岸、モチェ川が山地から海岸平野へ注ぐ北岸に位置するモチェ文化終末期の都市遺跡である。

目次

[編集] 概要

ガリンドは海岸の砂漠と肥沃な川岸のあいだにある太古に干上がった川の扇状地と丘陵斜面にまたがって築かれていた。時期としてはモチェV期にあたる600年から750年[1]にあたる。

ガリンドは同時期や後の最大級の古代アンデス諸都市に比べて規模は劣るが5km²近い面積に広がっている。機能や居住者の階層によって厳密に区分され、社会、統治、宗教に関するもろもろの活動が行われた都市の複雑な特徴を示す。土器放射性炭素年代測定によるとほぼ同時期であるが性格、立地などで大きく四つに区分される。

平野ないし扇状地に大きく広がる居住区は便宜上A地区と呼ばれている。以下A地区の東方のセロ・ガリンドの斜面西側を覆うように広がる居住区はB地区、セロ・ガリンドの北方扇状地の要部分に位置する居住区をC地区、C地区に隣接してAB地区よりに位置する居住区をD地区と呼んでいる。いずれの居住区も石とアドベで壁を築き通常の居住区と宗教的な施設である「神殿」様施設[2]や神殿マウンド、共同貯蔵施設とは一部機能的に重複する部分もある。G.ボーデン (Bawden) が調査を行った38ヶ所の居住ユニットのうち28ヶ所が専ら家事や居住のために用いられたユニットであった。それ以外には、居住以外の目的のリャマを飼うための柵とか手工業を行った工房とか日用品の分配をおこなうための施設もみられた。居住ユニットは基本的に三つの空間[3]で構成される。ボーデンは、大きな長方形に近い部屋の壁際に基壇が設けられているものを「広間」[4]と呼び、食事等の準備をおこなった場所を「厨房」[5]と呼び、一か所か二か所の比較的小さな物資、食料等の貯蔵保管をおこなった場所を「倉庫」[6]と呼んだ。通常、入り口は、「厨房」から入るようになっており、「広間」と「倉庫」には直接入れないようになっている。

ガリンドの「広間」での祭祀に用いられた土偶。ガリンドの土器工房出土の鋳型よりの復元想像図
ガリンドの「広間」での祭祀に用いられた土偶。ガリンドの土器工房出土の鋳型よりの復元想像図

居住ユニットを構成している要素は、遺物の分布が似た傾向になっていることから判別できる。「厨房」跡はカマドが二基設けられているものもあるが、基本的には一基である。「厨房」には、小規模なごみ穴があり、クイなどを飼って生ごみを食べさせたり、食肉用にしていたと考えられる。高級で上質な土器は、他のユニットと関連しており、しばしば家事にも用いられたことがわかっている。製の針や土製の紡錘車は、縫ったり、織ったりという手工業が行われていたことを示す。貴金属の破片も発見されることがある。小さな素焼きの土偶は、モチェの神話上の生き物や存在などを表現し、「広間」で発見される[7]。おそらく家族単位で宗教的な行為を行っていたことが想像される。「広間」部分で行われていたことは、物資食料等の貯蔵とか食事の準備、調理、炊事とは異なる、そういった日常的なものとは直接関連しない行為が行われていたと考えられる。現在でいえば、「広間」は、「居間」と「寝室」を兼ねたような部屋であったと考えられる。「倉庫」と考えられる場所からは、巨大な貯蔵用土器が発見され、それ以外のモチェ文化の実態を示すような要素はみられない。たくさんの小さな居住ユニットが多人数を収容するのに充分でなかったと考えられるものの、生活用の空間が「厨房」と「広間」しかないということは、やはりせいぜい核家族単位でしか暮せなかったと考えられる。

[編集] 地区による居住ユニットの違い

ガリンドの居住ユニットを構成するそれぞれの部屋は、数字的に正確な形ではないものの、だいたい長方形になっている。居住ユニットはB地区で最も小さくA地区を経て、D地区で最大となる。立地によって異なる居住ユニットの大きさは「広間」の大きさの違いと直接の関係がある。「広間」と居住ユニットの大きさは計画的に意図されたものであって、どこに誰が住むのかという解釈することによって結果的にそれがどのような社会であったかの意味合いを推測できる。また、ガリンドでは、居住ユニットの規模だけでなく、それぞれの居住区から出土する遺物によって、そこに住んでいる人々の社会的地位や貧富の差をうかがうことができる。例えばC地区の良質土器の比率は全体の5%弱で粗製土器は96%から98%に達する。B地区は一部を除いて2%から5%弱の範囲で見られ両地区とも銀製品は見られない。A地区は良質土器が8%前後から20%を超える居住ユニットがあり粗製土器は82%から92%前後である。D地区では12%から20%前後の良質土器が見られ、粗製土器は80%から88%前後であって全てのユニットで銀製品がみられる。

[編集] B地区の特徴

最も狭く造られたB地区の居住ユニットの建築物は最も貧しく社会的地位の低い人々が住んでいたすし詰めの居住区であることを示し、銀製品や良質土器が最も少なく、セロ・ガリンドの斜面に築かれ水場から最も遠い位置にある。この居住区は公的な施設であるマウンド状基壇と配置の面で峻別されている。マウンド状基壇は平坦地にアドベで表面を覆った石の壁を用いて直接建てられている。B地区に住んでいる人々は主要な経済的な活動からは排除され、「区分壁」[8]で遮られた居住区に押し込められていた。B地区からの出口がふさがれていないのは、「区分壁」の南側のみであって、この部分に限っては、セロ・ガリンドからモチェ川へ自由に移動できるようになっていたことがわかる。

[編集] A地区の特徴

A地区の場合は、居住区の建物とマウンド状基壇や行政施設とは厳密に仕切られてはいるものの、モチェ河谷の灌漑されている地域一帯に広がっていることが異なっている。A地区はB地区に比べれば相対的に豊かであったと考えられ、水場にも近い場所でもある。A地区は多少の良質土器や銀製品を持っており、ある程度の社会的地位を持っている人々が住んでいたと考えられる。A地区には土器の工房や日用品の分配施設、たくさんのリャマの囲い柵、小さな規模ではあるが物資の貯蔵施設がみられる。A地区の住民は、支配階層ではないがB地区の住民に比べれば大きな特権を持っていた人々であった。

[編集] C地区の特徴

C地区は居住区の背後の斜面に広大な公共貯蔵施設を持っていた。D地区は防壁2号でC地区と公共貯蔵施設を区切っている。C地区の居住ユニットはB地区とA地区の中間的な大きさである。銀製品はなく良質土器も少ない。C地区の人々が直接関わっていたのは丘の斜面に広がる広大な公共貯蔵施設であり、それ以外からは遮断されている。そのような貯蔵施設を管理するごくかぎられた人々が住んでいたと思われる。C地区の人々は行政的管理を行う高位の支配階層の従者か召使いのような人々であり別な場所に住まわされていたと考えられる。

[編集] D地区の特徴

D地区の居住ユニットは最も大きく、例えば構築物26号を例にとると、二番目の「広間」には一段高くなったところに台座状施設が設けられている。その台座状施設には「広間」の中央部分にある床面からスロープがつけられて昇っていくようになっている。このような特徴は家庭での宗教的行為のほかにこの居住ユニットの住人が高位の人物であったことを示している。モチェの土器などにみられる図像には、より低い階層の人々の謁見を受けているスロープの上の低い台座にすわる高位の人物が描かれていることがある。D地区の人々が全般的に行政活動を行う支配階層の人々であることはそのすぐ西側に囲壁にかこまれた「神殿」が接していることからもわかる。「神殿」にも斜面路や台座があり、ガリンドの中心的な政治宗教を司る施設であることがわかる。居住ユニットを調査すれば生活の様子や社会的な階層構造について重要な情報を得ることができる。「広間」「厨房」「倉庫」の構造はどの居住ユニットにも共通するが、特に「広間」の大きさは社会的格差をそのまま反映している。「広間」は家族レベルの社会的統合を象徴しており、D地区の居住ユニットにみられる基壇状遺構やスロープは核となる政治的宗教的施設である「神殿」にもみられるものであり、台座状遺構もモチェの土器、織物、レリーフなどにみられるものである。居住区全体に対し目を向けるとガリンドの社会的組織が厳格な階層区分と経済的日常的な生活を行う場所との機能的な区別によって維持されていたことが見えてくる。

[編集] ガリンドの居住パターンの背景にある社会的変化

ガリンドの一見して単純でありながら、実は厳然たる区分の都市計画から考えられる居住パターンは、このようなパターンを維持する特別な理由があったと考えられる。つまり、根深い社会的な圧力に対応した形状であって、最下層の人々を物理的に他の場所へ動けなくするだけでなく巧妙かつ強制的な手段で区切ることによって辺境部分に封じ込める構造になっている。おそらく都市の発展といった文化的な区別だけでなく、支配階層の権威による厳しい社会的統制による圧力があったことを反映している。その統制の象徴は「区分壁」であって明らかに最も大きな集団である最下層の人々に対してのものである。そのことはガリンドの社会的構造に内包された緊張要素を具現化するもので、当時潜在的かつ深刻な社会的分裂がガリンドの内部で生じていたことを示している。大きな集団をなす最下層の人々は富とか経済的な活動への参加とかから排除され、国家において搾取される状況に置かれてきた。

ガリンドでは、身分を隔てる区画の壁などによって巧妙に統制するシステムがつくられ維持され営まれてきた。ガリンドでは反乱しようとする階級と反動的に統制しようとするメカニズムという二つの力の緊張とバランスというデリケートな状況にあったことは間違いないと考えられている。このような社会システムは、内部の緊張に対し、長期にわたって前向きかつ適切に対応できることによってのみ生き延びることが可能になる。ガリンドのおかれた状況は、社会的階層間の力関係と根深い構造的な社会の亀裂によって結果的に生じる再編を通して社会の恒常性[9]が究極的に復旧するまでの格闘ないし葛藤している状況であるとボーデンは考える。広範に存在している考古資料であっても、ガリンドにおいて緊張状態にある国家がどのように社会的安定を保ったかその起源や分析を行うには充分ではないが、緊張状態にある国家をつくりだすような文化的な文脈についてはかなり解明されてきている。

モチェ遺跡の全景。奥に見えるのがワカ・デル・ソル(太陽のワカ)。アドベで造られたピラミッド状神殿で、モチェⅣ期終末(紀元600年頃)に放棄された。
モチェ遺跡の全景。奥に見えるのがワカ・デル・ソル(太陽のワカ)。アドベで造られたピラミッド状神殿で、モチェⅣ期終末(紀元600年頃)に放棄された。

モチェV期にみられる社会的統合の一般的な性格を解明するうえで、ガリンドのような居住状態を産みだした政治的社会的発展を導いた要素は外部からの要因があったことも考えられる。ガリンドはモチェIV期の終末期に建造され、それまで繁栄していたワカ・デル・ソルやワカ・デラ・ルナを伴うモチェの大センターに取って代わった。モチェのワカ・デル・ソルとワカ・デラ・ルナが放棄されると同時に同じモチェ河谷のやや上流に築かれたガリンドの果たした役割は、ソルやルナほどは大きくないと思われる。また、さらに北方のランバイエケ河谷で南方のモチェ文化の影響を排除する形で一大センターであるパンパ・グランデが出現している。このような変化はモチェIV期の終末には社会的政治的崩壊が起こったことをしめしている。この時期、北海岸地方南部におけるモチェの覇権が失なわれていき、北部のほうへ人口の主体が移った[10]。またモチェの社会的政治的秩序の長期にわたる内的混乱や変動は近隣地方の支配の崩壊をもたらした。そのような崩壊の性格がどのようなものであっても、ガリンドにおいて根深い社会的変動に対する対処を生み出しているのは間違いないと思われる。モチェV期の再建は、このような領域的な喪失を伴ってモチェ河谷に再建され社会的な統合の形態にも変化があったと思われる。それが伝統的な祭祀センターに置き換わった都市的な居住形態であった。ガリンドにみられるものはそういった社会的な組織のメカニズムの実験であって文化的な不安定さがあったことを象徴しているといえる。モチェV期の根深い性格を持つ変化、つまり分裂しようとする相当な圧力や緊張に対する対応としてこのような町の構造が生み出されたと考えられる。

モチェIV期までの、散在する巨大なプラットフォーム・マウンドの周辺に二次的な建築物が造られるという祭祀センターの形状は、社会組織を再編する技術の根本的な変化が反映された都市的な形状へと変化した。ガリンドの住民は少なくとも三つの社会的階層に区分されたことが、住居の形状や配置、貧富の差、経済的分野への参与とか地位、身分といった面から見ることができる。社会的に下層に位置付けられた人々から賦課を引き出し、そのような状況へ置いておくために極度な社会的統制が必要だったことを示している。つまりモチェIV期の終末において既存の体制に批判的で崩壊へ導こうとする勢力に対して厳しい対応をしたとみなされうる。ガリンドにおける居住パターンにみられる社会的再編のシステムを安定化させようとする試み、言い換えれば、社会的政治的再編を行おうとする試みは長期間にわたってはうまくいかなかったことがガリンドが放棄されたときの短期間の居住と文化的文脈からうかがわれる。

紀元750年前後にガリンドはほんのわずかな人々を残して放棄されたのが明らかになっている。放棄されても住み続けた人々は社会の統合をしようとした人々であった。彼らは、巨大な行政センターやこれまで神聖不可侵とされた神殿マウンドにまばらに住み着いていた。こういった状況下では、もはやガリンドには公共的建造物は建てる力は失われていた。支配階層に実質と財産を与えていた権力構造が崩壊したことによって強固な統制と社会的階層化も同時に崩れていった。こういった崩壊期が始まると北海岸は政治的に流動化し、1100年頃のチムー王国による再編まで続いた。文化的統合について支配階層が試みようとしたことは秩序を破壊しようとする圧力に対しての絶望的とも言える対処でしかなかったが、社会的な内部の不適合を起こした緊張状態を組み込もうとした試みでもあった。この社会的実験の主な要素である居住区の区別、中核化、厳格な階層化と統制のメカニズムはチムー王国が出現するときに激的な形で用いられ、拡張政策を採る帝国内部の統制と維持といった社会的枠組みの基盤として機能することになった。

[編集] 脚注

  1. ^ ボーデン(Bawden,G.)はミドル・ホライズンの最初期とも説明している。
  2. ^ 原語はcercaduraといい、意味はスペイン語cercado「柵で囲った土地」を変化させた語である。以下「神殿」と訳す。
  3. ^ ボーデンは具体的な個々の部屋を指すような表現を避けている。
  4. ^ スペイン語でsala(Bawden1982,p.169)。「居間」と訳すのも可能であるが、現在の「居間」のイメージや後述する内容と矛盾するので、中立的な表現の「広間」とした。
  5. ^ スペイン語ではcocinaと呼んでいる(ibid.)。
  6. ^ スペイン語ではdepositos(ibid.)
  7. ^ この土偶は鋳型を使って作られた(Bawden1996,p99Fig.3.9)。モチェ文化では、高級品に属する鐙型注口土器についても鋳型が発見されている。鋳型で土偶をつくる製法は、エクアドルのラ・トリータ文化などでもみられる。
  8. ^ 単純にWallと表現される(Bawden1982,p.168Fig.3,p.175,p.179)。アドベで表面を覆った背の高い石造りの壁である。
  9. ^ homeostasisと表現されている(Bawden1982,p.179)。
  10. ^ 。ボーデンはこれを「外部からの圧力への対応」とみているが、その外部の内容については明らかにしていない。この時期、ワリ文化の拡大があったことが念頭にあるのかもしれない。

[編集] 参考文献

  • Bawden,Garth
1982 Community Organization Reflected by Household:a Study of Precoloumbian Social Dynamics,Journal of Field Archaeology,Vol.9no.2,Boston
1996 The Moche,Blackwell Pub.Ltd,Oxford


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