カ・ドーロ
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カ・ドーロ (Ca' d'Oro, 正式にはパラッツォ・サンタ・ソフィア Palazzo Santa Sofia)は、ヴェネツィアのカナル・グランデにある美しい邸宅の一つ。歴史の古い建物の一つでもあり、かつて外壁に金メッキと多彩色の装飾がされていたことから、カ・ドーロ(黄金の館)の名前で知られている。
邸宅は1428年から1430年にかけ、ヴェネツィア貴族コンタリーニ家の物として建てられた。コンタリーニ家は、1043年から1676年までの間に8人の元首(ドージェ)を輩出した名家である。選挙で元首に選ばれると、どの新元首も自身の館から離れてドゥカーレ宮殿へ移り住むのが常であった。
カ・ドーロの建築家は、ジョヴァンニ・ボンと彼の子バルトロメオである。2人の彫刻家と建築家たちは、ヴェネツィアにおけるゴシック様式建築の縮図ともいえる仕事を残した。彼らはドゥカーレ宮殿での仕事でも有名で、特に『ソロモンの審判』像のあるポルタ・デッラ・カルタ(Porta della Carta)が知られている。
カ・ドーロの重要なファサードはカナル・グランデに面しており、ボンの手によるヴェネツィア特有のフローラル・ゴシック様式建築である。同じ様式で近隣には、バルバーロ館とジュスティニアン館がある。この優美な線状様式はヴェネツィア建築家たちに好まれ、16世紀終わりまで花開いたバロック様式によって完全に廃れたりしなかった。
ヴェネツィアにおけるゴシック様式は、ビザンティン建築の影響を受けている。カ・ドーロの1階には奥まった柱廊があり、ロッジアが運河から真っ直ぐにエントランス・ホールへつないでいる。この柱廊の上部は『ピアーノ・ノビーレ』という重要なサロンの開けたバルコニーとなっている。このバルコニーの円柱とアーチはコリント様式で、非常に繊細な四つ葉飾りの窓の列を支えている。このバルコニー上部に、また別の開けたバルコニーもしくは似かよったデザインのロッジアがある。館の建築様式は簡素である。中世の教会とムーア風の神殿の中間にあるようだ。ウェディング・ケーキに似た外装は、何の暗示も与えず、事実、邸宅は他の大多数の邸宅と同様に小さな中庭を囲んで建っている。
1797年にヴェネツィア共和国が終焉を迎えてから、カ・ドーロの所有者は幾度も変わった。19世紀の所有者の一人は、バレエダンサーのマリー・タリオーニで、彼女は中庭からゴシック様式の階段を取り除いたり、中庭を見下ろす華麗なバルコニーを破壊してしまった(この行為は今日に暴挙だとみなされている)。
1922年、1894年から所有者であったジョルジョ・フランケッティ男爵によって、カ・ドーロは国家に遺譲された。かつての栄光を取り戻すべく手厚い修復が行われ(階段の再建も含む)、現在邸宅はギャラリーとして一般公開されている。