イーピゲネイア
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父はミュケナイ王アガメムノーン(従弟のタンタロスの娘という説もある)、母はスパルタ王女クリュタイムネーストラー。妹にエーレクトラー、弟にオレステースを持つ。
父アガメムノーンによって女神アルテミスの生贄に捧げられた彼女の悲惨な最期は、エウリピデスの悲劇「アウリスのイーピゲネイア」の題材とされている。
[編集] 悲惨な最期
弟メネラーオスの頼みによってトロイア戦争に参加したアガメムノーンは出征を前にして狩を楽しんでいた。次々に獲物をしとめ気分が高揚した王は思わず口を滑らせる。
「私の腕前には狩の女神たるアルテミスもかなわないであろう。」と
戦を前にして有力な女神を怒らせるのは愚の骨頂といってもいい暴挙である。案の定怒りに燃えた女神は風をやませ兵団が出発できないようにしてしまった。
神託を問うたところ「娘を生贄にささげよ」とのこと。アガメムノーンは苦悩の挙句、娘を犠牲にする決断をして妻クリュタイムネーストラーが留守を守る城へ手紙を届ける。クリュタイムネーストラーとイーピゲネイアは手紙を読むと大いに喜び、美しい晴れ着一式を持って迎えの船に乗り込んだ。
実はクリュタイムネーストラーが溺愛する娘の命を奪うことを承知しまいと、アガメムノーンは一騎当千の勇将で美貌の若武者アキレウスとイーピゲネイアの婚礼を挙げると言う名目で二人を迎えさせたのであった。
喜びに胸を膨らませて父の元に向かったイーピゲネイアを待っていたのは、兵団のためにわが身を犠牲にしろという恐ろしい父の言葉だった。悲嘆に暮れ並み居る勇者たちに娘の助命を願い出るクリュタイムネーストラーに対し、イーピゲネイアは王女の務めとしてわが身を捨て国のために生贄となることを承諾する。気高い王女は婚礼の衣装を身に着けたまま、祭壇で命を落とした。
憎悪を燃やすクリュタイムネーストラーだけでなく、イーピゲネイアを呼び出す口実に使われたアキレウスはあまりに悲惨な王女の最期に憤り、アガメムノーンに対する怒りを深めたという。
また別の筋では、イーピゲネイアの気高い振る舞いに同情したアルテミスが怒りを和らげ、最後の瞬間彼女を救い出して、タウリスの自分の神官にすえたというものもある。こちらでは母殺しの罪で彷徨う弟オレステースとの再会を果たし、オレステースと共に帰国したという後日談が付いている。