イロレーティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イロレーティング(Elo rating)とは、チェスなどの2人制ゲームにおける実力の測定値(レーティング)の算出法である。「イロ」とはこの算出法を考案した、ハンガリー生まれのアメリカの物理学者であるアルパド・イロ(Arpad Emrick Elo)に由来する。
現在は、チェスのFIDE(国際チェス連盟)レーティングに採用されるなど、公式的な強さを示す指標として広く用いられている。日本では、将棋倶楽部24などで、イロレーティングを簡素化した算出法を採用している。
[編集] 算出方法
イロレーティングでは、次の3点を基本とする。
- ゲームの結果は一方の勝ち、一方の負けのみとし、引き分けは考慮しない(0.5勝0.5敗と扱うものとする)。
- 200点のレート差がある対局者間では、レートの高い側が75パーセントの確率で勝利する。
- 平均的な対局者のレートを1500とする。
3人の対局者A,B,CについてAがBに勝利する確率をEAB、BがAに勝利する確率をEBAなどと定める。対局者間の勝率について次のような仮定を置く。
例えばAがBに平均3勝2敗、BがCに平均5勝6敗の成績だとすれば、AはCに平均15勝12敗(=5勝4敗)でなければならない。
2人の対局者A、Bの現在のレートをRAおよびRBとしたとき、それぞれが勝利する確率EA、EBは以下の式で算出される。
実際に何局か対局した結果、Aの勝ち数がSAであった場合、Aのレートを以下のように補正し、新たなレートとする(EAは各対局の勝利する確率を足し合わせる)。
ここで、Kは定数値であり、プロレベルでは16、通常は32をとることが多い。
例として、レーティング1613の対局者Aが5局戦い、レート1609の対局者に敗れ、1477の対局者と引き分け、1388の対局者に勝ち、1586の対局者に勝ち、1720の対局者に敗れたものとする。このときのAの勝ち数SAは2.5(2勝2敗1引き分け)となる。上記の式より、EAの合計は 0.506 + 0.686 + 0.785 + 0.539 + 0.351 = 2.867 と算出されるので、対戦後の新たなレートは 1613 + 32×(2.5 − 2.867) = 1601 となる。
[編集] 擬似的な算出方法
日本での囲碁や将棋のオンライン対戦サイトでは、参加者の棋力を示すためにレーティングを用いているところもある。これらの多くはイロレーティングではなく、対戦後のレーティングを簡単に算出できる方法を用いている。
2人の対局者A、Bの現在のレートをRAおよびRBとし、AがBに勝った場合、レーティングの変動値ΔR(RAはΔRだけ増加し、RBはΔRだけ減少する)は各サービスごとに以下のようになる。
- TAISENの囲碁対局
-
- ※Hはハンデ(置き石やコミの調整による)ごとに定められた点数。
- 小数点以下は四捨五入。上記で算出したΔRが1未満のときは1になる。
ただし、極端にレートが離れたもの同士が対局する場合などには、特例が設けられている。