アミ 小さな宇宙人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『アミ 小さな宇宙人』(あみ ちいさなうちゅうじん、原題: Ami, el nino de las estrellas)は、エンリケ・バリオス (Enrique Barrios) の小説。1986年にチリで出版され、ベストセラーとなった。
11ヶ国語に翻訳されており、日本語訳は石原彰二。また、2000年に徳間書店から刊行された新装改訂版の挿絵をさくらももこが担当している。
続編として『もどってきたアミ 小さな宇宙人』『アミ3度目の約束 愛はすべてをこえて』、外伝として絵本『アミが来た』がある。
目次 |
[編集] あらすじ
少年ペドゥリートは祖母とのバカンス中、宇宙人アミ(アミーゴ=友人の意味)に出会う。アミはペドゥリートをUFOに同乗させ、地球の上を飛ぶ間、本来の人間の生き方を彼に教える。そして、月やオフィル星へと連れて行く。
[編集] 用語
- ネクロファゴ
- 死体を食べる人、という意味。本作の世界観では肉食は罪の無い生き物を殺す残酷な行為であり、文明社会にあるまじき忌避されるべきものである。進歩した世界には他の動物を捕食する生物もいないとされる。
- 神
- 神は唯一とされる。神は創造のエネルギーであり純粋な愛の存在であり、同時に人間を含む万物が神であるとする汎神論的なものである。しかしながら神の一部分に過ぎない人間を切り離して神として崇拝することはアミの口から否定されている。
- 宇宙の基本法
- 愛に基本を置く法。エゴや悪感情が克服され、愛が行き渡ることにより軍備も罰則も競争も所有の観念も必要なくなる。これが本作における文明社会の条件である。アミたちは宇宙の基本法を中心としたルールに則り「救済計画」を行っている。「救済計画」の対象となるのは宇宙の基本法を知らない未開の惑星である。「救済計画」には愛を説く宗教の発祥を援助する事も含まれ、聖書に記された奇蹟にも宇宙人が行ったものがあるとする。ただし法で許されているのは、導きのためのほのめかしまでであり、集団でおおやけに正体を明かしたりしてはならない。
- 親交世界
- 宇宙の基本法を達成した文明社会の集合体。地球などいまだ未開状態に置かれた諸惑星を監視し、「救済計画」によって「第四水準(レベル)世界」に引き上げ親交世界の仲間入りさせることを目的とする。「救済計画」において銀河の中心に設置されたスーパーコンピューターが大きな働きを担う。保護を目的として集められた未開惑星の人々のデータを蓄積し、アミたちが乗るUFOの操作にも関わっている。
- 人間
- 地球人類やアミの種族を含む「人間」のだいたいの形は全宇宙で共通している。宇宙人はそのテクノロジーにより地球人類の進化を調整したとされる。
- 進歩度
- センソ・メトロ(感覚計)によって図られる指数。アミによれば「けだものに近いか“天使”に近いかの度合い」である。地球人の平均は550度。ある惑星が破滅の危機に陥った場合、700度以上の進歩度を持つ人は救出されることになっている。アミ等、救済計画を行う側の人間がみだりに自分や相手の進歩度の実数を明かすことは禁じられている。
[編集] 登場する惑星
- 地球
- 主人公ペドゥリートの住む惑星。未開な場所と考えられ、「第三水準(レベル)世界」とされている。地球各地で興った文明はアトランティス大陸の文明の残骸とされている。
- オフィル星
- 地球よりも四百倍以上のサイズを持つ。ここには地球に起源を持つ人々が暮らしている。オフィル星をはじめ宇宙の基本法を知る文明社会には都市というものが存在しない。都市は多くの欠点を抱えた劣った生活形態とされている。
- キア星
- 進歩度において地球と同程度の惑星。地球が太陽のまわりを一周公転する間にキアの太陽のまわりを二十周する。テリとスワマの二つの人種が居住している。テリはさらに二つのグループに分かれ、常に争い合っている。各地にPP(ポリシア・ポリティカ、政治警察)が置かれ人々を監視し、不穏とみなした人物に制裁を加えている。
- カリブール星
- 植物の研究と栽培に使われている惑星。アミは「宇宙植物園」と評している。遺伝子を扱う技師が数名住んでいるだけで他に住人はいない。
- 銀河人形
- アミが住む惑星。アニメに出てくるような小人の町を連想させる風景が広がっている。
[編集] 登場人物
- ペドゥリート(ペドロ)
- 主人公。地球人の少年。10歳。作中において『アミ 小さな宇宙人』をはじめとする三部作は彼の著作であると位置づけられている。2作目まではいとこがタイプライターで筆記したが、3作目は自分の手で書いている。
- アミ
- 地球よりずっと進歩した星からやってきた宇宙人。外見年齢は8歳ほどだが、実際にはもっと歳をとっている。肉食を嫌う。地球を進歩させるための活動の一環としてペドゥリートの前に現われ、UFOで各惑星に連れて行きながら文明社会として実現されるべき「宇宙の基本法」を説いていく。ペドゥリートのエゴを牽制しようときつい口調になることが少なくない。
- ビクトル
- ペドゥリートのいとこ。30才を少し過ぎたくらいの年齢。銀行で働いている。ペドゥリートの話をもとに『アミ 小さな宇宙人』『もどってきたアミ 小さな宇宙人』をタイプライターで筆記した。ビクトル自身はペドゥリートの話をおとぎ話だとみなしている。いずれ書こうと思っている自著『知的欲求不満者の苦悶』執筆の練習台として筆記を引き受けたが、『アミ』の成功により、宇宙を舞台にした作品の構想を練るようになった。
- ビンカ
- 地球と同程度の遅れた惑星キアの少女。ペドゥリートと同年代だが、母星の公転周期の違いにより数字上の年齢は215歳となる。
- クラト
- キア星に住む百姓の老人。軍のスパイだったことがある。彼の名前もペドロと同じく「石」を意味する。かなり食い意地が張っている。飄々とした人物で、武装した乱暴者を前にしても平気でいる。愛について書かれた羊皮紙を持っている。
[編集] 既刊一覧
- アミ三部作
- アミ 小さな宇宙人 ISBN 978-4198922955
- もどってきたアミ 小さな宇宙人 ISBN 978-4198922962
- アミ3度目の約束 愛はすべてをこえて ISBN 978-4198923112
- アミの世界 ISBN 978-4198615789
作者へのインタビューやさくらももことの往復書簡などが収録されている。
- アミが来た ISBN 978-4198615796
絵本の形式で語られる外伝作品。
[編集] その他
- 日本のチャネリング団体レムリア・ルネッサンスの刊行物にはアミが登場する書籍がある。