アキシオン

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アキシオン（axion）は、強い力を説明する量子力学に基づく理論である量子色力学に関連してその存在が期待されている素粒子であり、現在未発見の粒子である。アクシオンとも呼ばれる。

強い力は原子核の構成時に働く力であり、クォークを結びつける力である。量子色力学においては、電荷共役と空間反転のオペレータであるCP変換を施した場合、一般にはCP対称性を持たないことを予言する。これは量子色力学での真空がもつ位相が一般にはゼロでないことを意味する。さらにはそれと全く関係のないクォークの質量行列の位相を足しあげた後でゼロになることが必要であると考えられ、それらがきわめて高い精度でキャンセルしていることを意味していることが分かってきた。

物理的根拠の異なる二つの量が高い精度でキャンセルするのは極めて不自然なことであり、なんらかの説明が必要だと考えられた。アキシオンが存在すれば、その謎をいとも簡単に説明してくれる。このような特性を持つ素粒子があるとすれば、これまで行われてきた実験や観測、宇宙論と矛盾しないようなものであると考えられる。そのような検討の結果、質量は電子の約1億分の1以下という非常に微小なものだと考えれている。

さらにはアキシオンは強い磁場の中で光に変わると予測されており、この性質を利用して検出が世界各国で試されている。たとえば東京大学のグループは、太陽から飛来するアキシオンを強磁場を印可してX線に変換し検出する試みを行っている。暗黒物質の候補にもあげられているため、京都グループはリドベルグ原子を用いて検出する独自のアイディアにより探索を続けている。アメリカのグループは、超伝導磁石を用いた強磁場の元で暗黒物質のアキシオンが電磁波に変換して検出を試みるフロンティアにある。最近では素粒子実験物理学のメッカであるヨーロッパのCERNにおいても、太陽から飛来するアキシオンを大変高い感度で検出を試みる実験が進められている。