アイゼン
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アイゼンは、和製登山用語で、靴底に装着する金属の爪のことを言う。ドイツ語のSteigeisen(シュタイクアイゼン)に由来する。英語ではcrampons。
主に鋼鉄を素材として製造されている。通常の鋼鉄は低温下で脆性があるため、ニッケル合金などを採用したものもある。アルミニウム製のフレームに特殊鋼製のポイントを取り付けたものや、より高価ではあるが、軽量化と耐久性の両立を図ったチタン合金製のものも存在する。
氷や氷化した雪の上を歩くために用いられる。一言にアイゼンと言っても4-14本爪まで様々で、爪が多くなるにつれグリップ力は強くなりより厳しい登山で使われると思ってほぼ間違いない。8-14本爪の物は前2本の爪が水平前方に伸びており、氷壁などの登攀を目的とした設計になっている。特にアイスクライミング用のものには、前2本の爪が水平に突きだしたものもある。
ストラップで締め付け、固定する「ストラップアイゼン(バンドアイゼン)」と、スキー板のようにリテンション金具で固定する「ワンタッチアイゼン」とがある。ストラップアイゼンは取り付け時の手間がかかる、靴の甲を圧迫してしまうといった問題が指摘される。一方、ワンタッチアイゼンは装着する靴のつま先に、装着用の切れ込みが必要である(この切れ込みは雪山用を意図した登山靴に存在する)。
アイゼンを装着しての歩行時には、爪をズボンやスパッツに引っ掛けての転倒の危険があるため"ガニ股歩き"が推奨される。
アイゼンを付けて歩くとそれ自身の紐を知らず知らずに"鉄の爪"で傷つけることが多く(ピッケルの石突周辺やスパッツもそれで穴が開く)、また、脱着の場面が多い為、紐の材質やワンタッチ式など爪よりも紐で個性を打ち出す商品である。 また、「アンチスノープレート」などと呼ばれるプラスチックの板が取り付けられ、アイゼンの裏側に雪団子ができてグリップが失われるのを防ぐものがある(画像のアイゼンについている黄色い板)。ものによっては後から取り付けられるように汎用パーツとして売られている。