Microsoft Flight Simulator
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Microsoft Flight Simulator(通称MSFS)はマイクロソフト社が開発しているフライトシミュレータで、フライトシミュレータの定番と言っていいほど普及している。もともとはSubLOGICという会社が1979年にアップルコンピュータ社のApple II向けに開発したものであるが、これをマイクロソフト社が買収して現在に至っている。
機体データは、Project Open SkyとPrecision Manuals Development Groupの2大グループをはじめ世界中の有志によって制作されている。ホームページからも、機体データはダウンロード可能である。また、中にはアドオンソフトと呼ばれる有料の機体データやシーナリーも発売されている(実機の手順を模した作りの航空機(実際のパイロット訓練用教材にも使用される)や戦闘機、空港が代表的な例である)。
[編集] 歴代バージョン
[編集] Flight Simulator Version 1
初代フライトシミュレータ。画面表示こそCGA(320x240ドット、4色)にワイヤーフレームであったがコックピット視点に計器表示という基本画面構成は最新版まで引き継がれている。
[編集] Flight Simulator Version 2
[編集] Flight Simulator Version 3
[編集] Flight Simulator Version 4
仮想空間の表現に初めてポリゴンが用いられた。対応OSはPC/AT互換機のDOS。NECのPC9800シリーズ用にも移植されている。グラフィックはEGA(640x350ドット、16色、ただしPC9800では640x400ドット、16色)により計器類の表示が精密になった。
[編集] Flight Simulator Version 5
PC/AT互換機のDOSおよびDOS/V用ソフトウェアとして発売。フライトシミュレータブーム初期の作品で、これを遊ぶためにパソコンを買うと言わしめたソフトの一つでもある。
販売媒体はフロッピーディスク2枚組。画面表示がSVGA(640x480ドット、256色)、グラフィックエンジンはポリゴンにテクスチャーが張られるようになり実写的な表現がされるようになり、サウンドカードによるエンジン音およびエフェクト音がフルサポート。ジョイスティックによる操作が可能になり、FS98までほぼ同じ表示エンジンを使用するなど後のバージョンに続く基本形となる。
[編集] Flight Simulator 95
1996年に発売されたバージョンで、媒体がCD-ROMとなり、容量が飛躍的に向上した。Windows95によってパソコンが一般家庭にも急速に普及していたのも手伝い大ヒットした。フライトシミュレータの火付け役となった作品である。
[編集] Flight Simulator 98
FSFW95には入っていなかったMS純正シナリー(FS98以前は別売だった「Japan」や「Hawaii」、「Caribbean」等)を収録した。それにより空港数が大幅に増加したが、空港の風景は殺風景なままだった。アドベンチャーも豊富に用意され、航空機もリアジェット35Aがリアジェット45へ変更になった他、セスナ 182S スカイレーン、ベル 206B ジェットレンジャー IIIヘリコプターが追加された。なお、FS98になってマルチプレイ機能が初めて追加された。
リアリティは劣るものの動作の軽快さから未だに使っている人も多い。 2007年12月現在、FlightSim.com(フライトシミュレーターの総合サイト)には、製作されたFS98のアドオンが未だにアップされている。
この頃からマイクロソフト側が3rdパーティによるアドオンを認めるようになった。(ただし、アドオン追加による正常動作を保証するものではない。)
[編集] Flight Simulator 2000
1999年に発売されたバージョンで、Standard EditionとProfessional Editionがある。Professional版にはStandard版には無い機能(新たな機体、IFR訓練パネルなど)が標準装備となっている。
このバージョンでは空港の数が大幅に増え、前作の約3,000件から約20,000件へとなり、ほぼ全世界の空港を収録するようになった。ただし当時の最高性能のパソコンでも、FS2000を快適に動かせるものはないといわれるほど動作が重かった。
[編集] Flight Simulator 2002
2001年に発売されたバージョンで、このバージョンから正式にフォトシーナリがサポートされるようになった。これによりフォトシーナリもデフォルトのシーナリと同じ扱いで描画されるようになりフレームレートが極端に落ち込むといったことが無くなった。
このバージョンにもStandard版とProfessional版があるが、日本ではProfessional版のみが販売されている。
[編集] Flight Simulator 2004 A Century of Flight
2003年に発売されて、ライト兄弟の人類初飛行から100周年を記念したバージョン。通称FS9。日本ではFlight Simulator 2004 翼の創世記として販売されている。
人類初飛行100周年を記念したバージョンのため、1903 ライト フライヤーやライアン NYP スピリット オブ セントルイスなど歴史的名機を多数収録している。また雲の描画を従来の2D(擬似3D)雲から3D雲にしたことによりふわっとした感じがリアルに再現されるようになった。その他ATCやGPSの改良などが図られている。
とても画面が美しくなりリアルになったが、前バージョンのFlight Simulator 2002よりも動作が軽いと評価されている。
[編集] Flight Simulator X
詳細はMicrosoft Flight Simulator Xを参照
オブジェクトの自動生成機能がより一層細かくなり、船や車、木などが表示される。DirectX10対応タイトルとして開発が進められていることもあり描画が大幅に改善された。このバージョンよりWindows Vistaの動作保証が付いた。
英語版では「Deluxe Edition」と「Standard Edition」の2種類が発売されており、「Deluxe Edition」には「Standard Edition」に収録されていない機体やソフトウェア開発キットなどが含まれている。なお、日本では日本語版オリジナルの1種類のみが発売されている。
日本版では50以上用意される「ミッション」の音声の吹替に、総計31名の豪華声優陣を起用する。また、ATCについては日本版オリジナルで、いわゆる「日本人英語」が再現される。こちらは、実際の管制官・航空運航関係者が起用され、よりリアルな飛行環境の提供がなされた。また、機体データや地形データがより現実に近くなった。 なお細かい所では、2004まで上昇可能高度が100,000ft迄であったが、このバージョンでは1,000,000ftとなっている。(なおこれによりシェアアドオンメーカー「CaptanSim」ではスペースシャトル(オービタ)のアドオンをリリースしている)
英語版については2006年10月17日に、日本語版は2007年1月26日にそれぞれ発売された。
ちなみにFlight Simulator Xを快適に動作させるにはPentium D 3.2GHz以上のプロセッサ、DirectX10対応アッパーミドルレンジ並(Geforce8600GTS RadeonHD 2600XT)、2GB以上のメモリーなど、推奨動作環境以上の性能を持つパソコンが必要。 なお、羽田空港上空はCore2ExtremeQX6850+Geforce8800Ultraなどの環境でもフレームレートの低下によりまともに飛べない可能性がある。
また、マイクロソフト社から発売される、初めての拡張パック『Microsoft Flight Simulator Ⅹ : 栄光の翼』が2007年12月14日に発売される。
[編集] 関連項目
- Microsoft Combat Flight Simulator
- Microsoft Space Simulator
- Microsoft Train Simulator
- Project Open Sky-機体データの開発グループ
- Precision Manuals Development Group-機体データの開発グループ
- Virtual Airline
- Vista Australis-風景データの開発グループ
- Ultimate Traffic
- X-Plane
- FlightGear
- アメリカ同時多発テロ事件
- 犯人の住居を捜索した際、Microsoft Flight Simulatorが押収された(バージョンは不明だが、2001年9月時点の最新バージョンは2000)。ハイジャックした犯人は、Microsoft Flight Simulatorが実際の航空機操縦を忠実に再現していたことや、ボーイング757・767の操縦資格が共通していることからそれによって航空機の操縦法を学び、犯行に及んだと米各紙は指摘した。また、マイクロソフトはこの指摘を受け、一時Microsoft Flight Simulatorの販売を自粛した。