食欲
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食欲とは空腹として感じられる食物を食べる願望である。全ての高等生物に存在し、新陳代謝を維持する為に充分なエネルギーの取り入れるのに役立ち、消化管と脂肪組織と脳との間の厳密な相互作用で調節される。食欲の調節障害はある面で拒食症と悪液質、及び逆の面で肥満を生む。
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[編集] 調節
食欲の調節は最近10年間に多くの研究の対象となった。 新たな発見には1995年の負のフィードバックを提供するように見えるホルモン、レプチンの発見を含む。 後の研究により、食欲調節が胃腸管、多くのホルモン、及び中枢と自律神経系両方の神経系を伴う非常に複雑な過程であることが発見された。
[編集] エフェクター
視床下部 (脳の一部) は主な欲求を規定する器官である。 食欲を調節するニューロンは、主にセロトニン作動性であるように見え、また、神経ペプチドY (NPY) とアグーチ関連ペプチド (AGRP) が決定的な役割を果たす。 視床下部・皮質と視床下部・辺縁の投射は飢餓とvagal tone(副交感神経の活動) を含む視床下部によって制御された肉体的過程の認識を行い、甲状腺 (チロキシンは新陳代謝の速度を調節する) 、視床下部・脳下垂体・副腎軸、及び多くの他のメカニズムの刺激を行う。
[編集] センサー
視床下部は主にレプチンや、グレリンや、PYY3-36や、オレキシンやコレシストキニンなどの多くのホルモンを通し外部の刺激を感じ、影響を受ける。 それらのホルモンは消化管と脂肪組織 (レプチン) によって生産される。 腫瘍壊死因子アルファ (TNFα) 、インターロイキン1と6、及び副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH) などが全身的に仲介する影響は食欲を消極的にする。このメカニズムは、病気の人々が何故しばしば減食するかを説明する。
さらに、体内時計 (視床下部によって調節される) は飢餓を加減する。 他の脳の座、辺縁系や大脳皮質などの視床下部への投射は食欲を加減する。 これは、うつ病とストレスで、エネルギー取り入れが何故全く抜本的に変化してしまうことが出来るかを説明する。
[編集] 病気での役割
食欲の調節障害が拒食症、神経性過食症、及び無茶食い障害の根幹となっている。 さらに、満腹への反応の減少は肥満の進行を促進すると思われる。 肥満の様々な遺伝的形式は、(レプチン受容体やMSH-4受容体などの)視床下部信号における欠陥であると突き止められたか、さもなくば未だに特徴付けがされていない (プラダー・ウィリー症候群) 。
[編集] 薬理学
食欲を制御するメカニズムは減量薬の潜在的目標である。 初期の食欲減退薬は、フェンフルラミンとフェンテルミンであった。 より最近のシブトラミン(Reductil®&Meridia®) が加えられた。 (そのシブトラミンは中枢神経系におけるセロトニンとノルアドレナリン水準を増加させる)。 さらに、組換え型のPYY3-36が食欲を抑圧することによって、減量が行なわれるだろうと最近の論文は示す。 また、2006年にカンナビノイド1 (CB1) 受容体を阻害するタイプのリモナバン (Acomplia®) がEUにて認可された、販売元のサノフィ・アベンティスが行った長期間フィールドテストの結果によると、50%以上の参加者に有意な体重、悪玉コレステロール等の減少が見られた。また、1年以上服用した参加者の一定数以上に体重の復帰が見られないため、シブトラミン、及びマジンドール系の減退薬に変わる薬と期待されている。
欧米での肥満の流行割合を考えて、一人でダイエットするのが殆どの肥満の大人に効力がないため、この領域での進展が近い将来、雪だるま式に大きくなると予想される。
[編集] 詳しい文献
- Neary NM, Goldstone AP, Bloom SR. Appetite regulation: from the gut to the hypothalamus. Clin Endocrinol (Oxford) 2004;60:153-60. PMID 14725674.
- Wynne K, Stanley S, Bloom S. The gut and regulation of body weight. J Clin Endocrinol Metab 2004;89:2576–82. PMID 15181026.